■エリザベト音楽大学(私立・広島市中区)

■そして、お隣の世界平和記念聖堂

 

ベルギーのエリザベト王妃のパトロネージを受けた経緯で、ちょっと珍しい読みの学校名になった。

 

場所は県庁とJR広島駅の間ぐらい。街中だ。

 

手入れの行き届いた建物。

 

 

同一街区には、グループ的な?保育園。

 

 

そして何より、そのとなりには、世界平和記念聖堂がある。大学の施設ではないけれど。

 

 

簡単に言うと、原爆投下を受けて作られたすごい教会、だ。

 

 

 

 

非東大系建築家の大御所、村野藤吾の代表作としても知られる。

 

 

 

さてこの建物、客観的に記述すると、なかなかえぐい経緯で作られた。

 

設計プランを公募したが、審査委員会の中の早稲田閥が巧妙に立ち回り、前川国男や丹下健三などといった東大出身の建築家の応募作を排除。

 

最終的には該当作無しになり、審査委員の1人で早稲田出身の村野藤吾が自ら設計することになったという、むちゃくちゃな話だ。

 

「良い応募作がなかったので、責任を取って審査委員自ら設計しました」という理屈だが、これで凡庸な建物が建ったら、トンでもない黒歴史になったところだ。

 

ところが、出来上がったのは圧倒的な大傑作。

 

かませ犬役となった前川国男にしてみれば、「勝てば官軍、負ければ賊軍」というお得意のフレーズを、再びかみしめさせられることとなったであろう。

 

広島の川砂を固めたコンクリブロックを、レンガ代わりに作った建物。

 

 

良い具合に経年変化して、色は明るいコンクリ、質感は砂岩っぽいざらつき。そこに銅板葺き屋根から雨水と共に垂れてきた緑青がうっすらと緑の筋を作り、えもいわれぬ。

 

 

そんな風に歩きながら入り口ポーチの屋根を下から見上げると、緑青的なカラーリング。

 

 

計算尽くか、村野藤吾め!

 

本堂の上のドームは、元々予定にはなく、大口寄付者への配慮から追加することに

なったが、むしろあって当然、無かったら寂しいよね、と思えてしまう、自然なあ

りっぷりだ。