■南山大学(私立・名古屋市昭和区)
後期コルビュジエが好きな人なら、気に入ると思う。
アントニン・レーモンドが全体計画から手掛けたキャンパスで、1960~70年代にかけて整備された。
その後の増築部もコンセプトは継承されており、つぎはぎ感はそれほど感じない。
なお最近、古い建物のリニューアル工事を行ったばっかりで、全くの新築キャンパスっぽくなっている。
南山大は、名古屋版・上智大と言われる名門校だ。
ただキャンパスの充実度は、上智をはるかに上回る。
場所は名古屋大学から南にちょっと。地下鉄の名古屋大学駅から行くと、山手通門から入ることになる。
坂を上っていくと、ものっそい造形の礼拝堂が見えてくる。神言神学院だ。
中は写真でしか見たことはないが、光の具合が何かの建物を微妙にほうふつとさせるような。
そんでまあ、先へ進むと、最近できたロースクールや理系学部ゾーンだ。
さらに進むと、昔からの教育棟エリアへ。
右手に向かうと体育館。
途中にはレーモンドのデザインによるフレスコ壁画もある。
校舎の壁にも、グラフィック。ドット絵調?
左手方面には図書館。
さてこのキャンパス、老いも若きもどの建物も、打ちっぱなしコンクリートのモダニズム的箱型校舎にコンクリルーバーをつけて表情を出している。
しかも、コンクリ色と赤茶色で塗り分けられている。
てっきり、レンガ造校舎をイメージさせようとしたのかと思ったが、キャンパス内の豊かな自然と一体化させるため、地面の赤土色を再現した色調合にしたそうだ。
キャンパスの一番の見ものは、図書館の向かい、坂を下っていくところのパッヘスクエア・グリーンエリアだ。
すり鉢状に下がっていく気持ちの良い芝生広場。その先には研究室棟や授業用教室のM棟と、それを飾るレーモンドデザインの壁画が待っている。
ほかには同窓会館も。
アントニン・レーモンドは、戦前に米国の巨匠フランク・ロイド・ライトの助手として来日し、そのまま居ついた建築家だ(戦中は帰国したが、戦後に再来日している)。
助手と言っても、構造計算担当として雇われた感じで、特にライトのデザインに心酔して弟子になったとも言い切れないとの説もある。
最終的には、むしろフランスの巨匠、ル・コルビュジェ系のデザインに流れていく。
タイプとしては、唯一無二のオリジナリティを追求する感じではなく、いろんなところから引っ張ってきた元ネタをセンス良くアレンジする、オシャレDJスタイルの建築家だ。
実はある作品について、コルビュジェから「ちょっとあなた、私の設計をパクってません?」と非難されたこともある。
しかしながらその作品、コルビュジェも「とはいっても、アレンジバージョンとしては、これ以上ない出来ですね」と、認めざるを得なかったという。
もっともこの逸話、人気ユーチューバーにありがちな、事前に話をつけたうえでの八百長対決風味だったとの説もある。
学生数は1万人、面積は約14万平米。