■千葉大学・西千葉キャンパス(国立・千葉市稲毛区弥生町)
 

JR千葉駅から東京側に一駅手前、総武線西千葉駅前にある。

 

 

1962~64年に整備された新キャンパスだ。

 

ぱっと見で「すごい」と感動するような映えポイントは無いが、半世紀を超える歴史を積んだ結果、「なじんできた」感のあるキャンパスだ。

 

 

敷地は東側が理工系、西側が文系エリアに分かれている。

 

理工系はお約束通りというか、比較的新しめの高層校舎が立ち並ぶ。

 

 

 

 

初期から残っていると思しき建物も工夫のリフォームで、なんだか、おしゃれな感じ(かもしれない)。

 

 

 

一方で文系ゾーンに行くと、割と古めの建物が主力。「レトロで素敵」と感じるかもしれないし、そうでも無いかもしれない。

 

 

図書館前の広場と池はきちんと整備され、都市公園としてもレベルは高い。

 

 

 

他にも結構いろいろなところに広場や花壇がしつらえられていて、ゆとりを感じさせる。

 

 

 

なんていうか、うーん、人文系!って感じ。

 

 

いずれにせよ、国立大学らしく広々とした敷地にゆとりのある建物配置だ。

 

 

ゆっくり散策を楽しめる。

 

 

学生数は1万3000人ぐらい、面積は38万平米。

 

 

ところでこの大学、今の若い人は知らないと思うが(僕も知らなかった)、関東の国立大の中では他と一線を画す名門校だ。

 

 

具体的に言うと、昔の国立大は入試日程が一期校と二期校の二つにグループ分けされていた。

 

建前上、上下関係はないことになっていたが、旧帝大や筑波大、一橋に東工大といった有力校はすべて一期校なので、推して知るべしというものだ。

 

 

で、関東では横浜国大も埼玉大も群馬大も宇都宮大も茨城大もすべて二期校なのに、千葉大だけが一期校だった。

 

どこが評価されたのかについては知る由もないが、確かに戦後に誕生した一般的な地方国立大学とはちょっと異なる、個性派大学だったのは事実だ。

 

 

新制千葉大学の設立にあたり、旧6医専と呼ばれた医学界の名門校・千葉医学専門学校と、千葉師範学校(教員養成)、同青年師範学校(定時制の教員養成)が参画した。

 

いずれも、現在の大学相当の高等教育機関だ。

 

千葉医専についていうと、ある意味、「東大医学部」といえる学校だ。

 

 

正確に言うと、のちに東大教養学部となった「第一高等学校」の医師養成コースが分離独立した学校だからだ。

 

明治期、まだ学校制度が固まる前は、ナンバースクールと呼ばれた第一高等学校のような旧制高校に医学部や工学部を置いて専門家を養成しよう、という構想も進められていたのだ。

 

 

最終的には、ナンバースクールは帝大進学希望者が語学や一般教養を学ぶ学校となり、ナンバースクールに設置された医学部や工学部は、専門学校として独立した。

 

さらに新制千葉大の場合、旧制の東京工業専門学校と千葉農業専門学校(ともに現在の大学相当)も参加した。

 

 

この二つがユニークな学校で、東京工専は、東京高等工業学校(現・東工大)の工業デザイナー養成コースをルーツに持つ。

 

アイフォンやバルミューダといったおしゃれ家電、さらには高級車を見ればわかるとおり、工業製品は性能だけでなく、デザインも重要な要素を占める。

 

 

というわけで、東京高工にも工業デザイナー養成コースが作られたのだが、その辺を理解していない偉い人が「デザインなら、芸大にやらせとけばいいだろ?」と考え、いったんは東京芸大に移管・吸収された。

 

ところが、工業デザインは普通のデザインとは、ぜんぜん違う。機能性や機械設計上の制約とデザインを両立させなくてはならない。見た目だけの問題ではないのだ。

 

で、「違うよ。工業デザインをなめんな!」という関係者の陳情のおかげで、何とか復活して東京工専になった。

 

というわけで、今も千葉大工学部にはデザインコースがある。

 

 

千葉農専も、普通の農業専門学校ではない。

 

日本唯一の官立園芸学校であった千葉高等園芸学校が源流で、現在は千葉大園芸学部になっている。

 

園芸界の東大的存在なのである。

 

 

千葉は、新東京国際空港も東京ネズミランドもあるし、東京以上に、東京なのだ。

 

 

  交通メモ

 

千葉大学(国立・西千葉キャンパス)

 

場所: 千葉市稲毛区弥生町

 

東京駅から総武線快速で稲毛駅乗り換え、各停で西千葉駅へ。おおむね45分。駅の目の前がキャンパスだ。現在、隣接する東京大学生産技術研究所跡地と、千葉大キャンパス東部の一体再開発が検討されている。緑地や広場、商業施設なども含んだ公共開放ゾーンとして整備される方向らしい。