■兵庫県立大学・神戸商科キャンパス(公立・神戸市西区)
歴史に残る傑作だとか、建築家の才能のきらめきを感じさせるだとか、そんな大層なものでは無いが、地形をうまく利用した、丁寧によく考えて作られたキャンパスだと思う。
長く使われてほしい。
神戸のベッドタウン、地下鉄学園都市駅から歩いて10分ぐらい。入り口から本部事務棟まで、それなりの坂を上っていく。
入り口から右に緩くカーブする登り道。右手に本部棟。
ギリシャ神殿風の正面。
横から見ると帝国大学風ゴチック、に見えたが、よく見るとやっぱりギリシャ風だった。
さらに右奥には三木記念講堂。こちらは普通にモダンな感じだ。写真で見るより現物は塊感があって、格好いい。
戻って、直進する。本部棟を後ろにして進む。
階段を上ると、山小屋風洋館的?な大学会館などに囲まれた広場だ。
オレンジがかった赤茶色の瓦屋根が洋館風、というか神戸風な雰囲気。
振り返って後ろを見ると、ギリシャ神殿みたいな本部棟の屋根も、実は瓦屋根だった。
広場の先。今度は左に曲がる上り階段。
その先の広場の回りには、これまた神殿風の体育館。
前はなにやらチューダーなのかロマネスクなのかよくわかんない、図書館とか教育棟Ⅰ。
まあどっちも、聖堂っぽい様式建築?だ。
左右で高さ(あるいは前後?)がずれている!
後ろを振り返ると、屋根のトリプル連打が、なんか良い。
ここまでいずれも、一般人にもわかりやすく現代風にモディファイした明るく軽快な神殿・聖堂・洋館「風」の建物だらけだ。
ダメな人にはダメだろうけど、僕はありだと思う。
もちろん、チープな「なんちゃって建築」と感じる人もいるだろう。
僕も初見の印象はそうだった。
とくに、明るい黄土色のタイル張り、しかも芋目地。安っぽいというか、実に微妙だ。
ただ、造形的には悪くないと思う。
これを多くの大学がやるように、焦げ茶やスクラッチのレンガ風タイル張りにするとか、コンクリ打ちっ放しに変えた姿を想像してみると、なかなか悪くない、そう感じるのである。
その上でもう一回、このキャンパスを見回してみると、意外にこの色使いも悪くない。そんな気もしてきた。不思議なことに。
慣れ、というものだろうか。
むしろ、誰もがすぐに考えつくような、なんちゃって大学風建築とは一線を画そうという、軽やかなおしゃれシティー?神戸のこだわりを感じてしまう。
深読みしすぎですね。
1990年に現キャンパスに移転してきたので、もう30年たったわけだ。経年変化なのか、タイルが良い感じにくすみカラーになっている。たぶん新品の時は、いささか浮ついた印象だったのでは無いか。
本部棟ペディメント?のコンクリ打ちっ放し部分が、雨風を受けて、かなり「風格」のある感じになっているのに対し、ほどよく年月を経たタイル部分が合わさって、見れば見るほど、悪くないなあ、と思ってしまう。
褒めすぎだろうか。
ところで、設計者が最も力を入れたのだろう、と感じたのは教育棟Ⅲの横面だ。
教育棟Ⅰとの間が狭く、うまく写真が撮れなかったのだが、ぜひ現物を見て欲しいと思う。
右に左にゆるく蛇行しながら登り切ったキャンパスの丘。その裏手からは、学園都市の町並みを見下ろすことが出来る。
良い眺めだ。
ドラえもんに出てくる、のび太がよく昼寝している「裏山」を思い出した。
旧・県立神戸商科大学が2004年に他の県立大と統合して生まれたキャンパスだ。とはいえ、キャンパスも人員構成も特に変わりは無い。看板を掛け替えただけといえそうだ。
兵庫県には失礼だけれども、前の名前の方がしっくりくる。
学生数は2000人を切る。面積は12万平米。
最後に、新築中の国際交流棟。