■東京農業大学・世田谷キャンパス(東京都世田谷区)

 

いまや隈研吾設計の付属施設「食と農の博物館」こそが、シンボル的な建物になっているとか、いないとか。

 

であれば、大学の象徴は大根から謎の怪鳥に交代した、ということなのだろうか。

 

 

それはともかく、名前の通り農業系の専門大学だ。私学としては珍しい。

 

いや、国公立としても農工大ぐらいしか、そんな物は存在しないが。

 

もしこの大学を知っている人がいるとしたら、関係者か酒好きか、あるいはマンガ「もやしもん」(石川雅之)の愛読者か、いずれかだろう。

 

ここの醸造科学科は、日本酒業界を裏で支配しているといわれるほどの存在感を持つ。

 

酒蔵の後継ぎの進学先の最右翼だ。

 

さて、東急の用賀駅からバスで十数分。三軒茶屋や、小田急の祖師ヶ谷大蔵からでも、だいたい同じぐらいだ。

 

つまり、どこの駅からも微妙に離れた、陸の孤島みたいな所だ。

 

散歩のしがいがあるとも言えるだろう。

 

ではまず、人気?の博物館から。

 

キャンパスからちょっと歩いた馬事公苑の方にあって、一般公開されている。

 

建物的には、いかにもな隈研吾。ガラス箱に縦ルーバーがみっしりとついている。

 

 

その前に、謎の怪鳥の像が鎮座している。本当に大きい。

 

でまあ、メーンキャンパスに入るとしよう。

 

正門から足を踏み入れると、大変に立派な、うっそうとした木々が迎え入れてくれる。

 

 

 

公園のようにベンチも整備され、神社や創立者の胸像も見える。

 

幕末の戊辰戦争や北海道開拓に活躍した榎本武揚が開祖だと、訪れて初めて知った。

 

ある意味、北海道大学の姉妹校とも言えるのだろうか。

 

しかし北大と比べると、キャンパスの作りは存外に狭い。

 

木々が茂るのは入り口の一角だけだ。あとは手狭なキャンパスに中層の研究棟や校舎が詰め込まれている。

 

 

実面積で15万平米はあるので、決して狭いわけではないのだが、体育館やグラウンド、野球場に駐輪場、そちらに面積を取られてしまった感じだ。

 

学生数は全学で1万2000人。世田谷キャンパスに通うのは半分としても、人口密度もなかなかだ。

 

基本的には、やや年季の入った戦後派校舎が建ち並ぶ。

 

迷路のように詰め込まれた建物。それでいてベンチやちょっとした広場は豊富。

 

 

ぶらぶら歩くには、悪くない。

 

 

生協の大学グッズは充実している。

 

大学ネーム入りの作業服、食品や酒類など、農業大学らしさが詰まったものに、卒業生の生産物(食品)も並んでいる。

 

実験動物の慰霊碑もあった。とりあえず南無南無と手を合わせる。

 

グラウンド脇には温室や果樹園もある。ちょっと静かで、のんびりとした空気が漂う。

 

 

そんなキャンパスの中、農大アカデミアセンターをはじめとする新造校舎も増えている。

 

遠目にはれんが調タイル張り、よくある大学建築に見えるが、近づくと、なかなか個性的な質感を持っていることが分かる。

 

 

 

 

この壁にぶつかったら、擦り傷や切り傷で大変なことになってしまうのでは。

 

そんなことを心配してしまったが 、いずれすべての建物が、こういった新鋭校舎に取って代わられるのだろう。