■岐阜大学(国立・岐阜市)
いい意味で、の表現と理解してほしいが、高度成長期の輝いていた時代の「団地」風の校舎が並ぶキャンパスだ。
一番力が入っているであろう本館兼図書館棟はこんな感じ。
あとは本当に公団団地、っぽい。
敷地の贅沢な使い方も含めて。
さて、キャンパスは、岐阜駅からバスで30分。郊外というより、町はずれと表現すべきだろう。
バスはキャンバス内のロータリーに乗り入れる。降りた先のメーンストリートは、焦げ茶色のタイル張り講堂に向かっている。
と、ここまでは、よくあるキャンパス設計のように聞こえるが、この大学、ちょっと変わっている。
やや縦長の方形型キャンパスの左下部に正門があり、メーンストリートは中心部やや下方に位置する図書館に向かって、斜めに伸びる。
メーンストリートは講堂前の広場で終わる。後は、回りに建物を乱雑にばらまき、適当に連絡路を作り、舗装した。そんな塩梅だ。
あえて言えばキャンバス右側から理系、人文系、教育系のエリア分けとなり、奥が体育施設など。左奥には、事実上独立した作りの医学部がある。
岐阜大は、岐阜農林高等学校や師範学校が母体となり、戦後に新制大学として発足した。県立大や県立医大を吸収し、2004年に現キャンバスに集約移転して、今日に至る。
最近では、名古屋大学と持ち株会社的な方式で統合を発表したことでも知られる。
学生数7300人に対してキャンパス面積は64万平米。なかなかの広さだ。
さて、正門からメーンストリートを進むと、図書館の手前で噴水広場になる。
ここから正門に向かって後ろを振り返ると、左手に事務棟兼生協が見える。一階が第一食堂、二階が生協売店だ。
食堂は平凡。生協の大学グッズコーナーは、お菓子やお酒、Tシャツやタイピンなど、そこそこ、充実している。
生協を出て、理系エリアに向かう。六、七階建ての、わりと背の高い研究棟が整然と並ぶ、団地のような作りだ。
古い建物を改修したものと、わりと新しい棟が混在している。
さらに進むと、背の低い実験棟が並ぶ。間の小道を抜けていくと、なんだか外国の路地裏を歩いているような気分になる。
路地裏、と言えば、ネコ集会が開かれそうな一角も、そこここにある。
珍しい、といえば、キャンパス内に二本の川が流れている。
海のない県の大学。起伏の大きい、山裾のキャンパスをイメージしていたが、むしろ水郷を思わせる作りだ。なるほど、濃尾平野である。
講堂付近へ戻り、人文系エリアへ。
岐阜の中心市街からかなり離れた立地条件の悪さ故か、学生の自転車があふれかえっている。芝生まで自転車置き場として使われている。
文系エリアも団地のような中高層校舎が多いが、土地の使い方は、存外にゆったりしている。
人の手を最低限、入れただけのような、里山のような一角がいくつもあり、ベンチも用意されている。
こけに覆われた木肌。街中の市民公園には、なかなか見あたらないものだ。
ゆっくりベンチで本でも読みたいところだが、夏場は虫に気をつけた方が良さそうだ。
奥へ進むと生協第二食堂。持ち帰りメニュー専用食堂もある。献立に特徴的なものはないが、量はしっかりしているようだ。
いや、こう言うことも出来る。珍妙な料理はないが、若者が食べそうな一般的なメニューはだいたいカバーしている。
そういえば、講堂前広場には外部のキッチンカーが二台来ていた。意外に、食にこだわりがある大学なのかもしれない。
さらに奥地に行くと、電波観測所や運動施設がある。そこから左に曲がって川を渡ると、医学部だ。
きれいで広く、整備され、全くもって別天地。一言で言えば、金を持っていそうだ。
桜のトンネルに、藤棚のトンネルも整備されている。
岐阜大学。広い敷地に細長い中層建築物。充実した広場や樹木。
戦後まもなくに、「あこがれの先進住宅」として各地に整備された大規模団地を連想させる作りだ。