実に11ヶ月ぶりの更新となります。申し訳ありません。ぶっちゃけ最後のセリフを言わせたかっただけです。


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第191話『新幹線内での戦い』


笠侯の元で用事を済ませた撫蘭と洋紝は、冠東に引き返すべく新逢阪駅に戻ってきた。


そして新幹線に乗り込んだ撫蘭と洋紝は、夕陽を背に冠西を後にする。

「……………」

後退する窓の外の景色を眺めながら、何やら考え事をしている撫蘭。そんな彼女に、洋紝が尋ねる。


洋紝「どうした?撫蘭」


撫蘭「ううん、なんでもない………ただ、早くこの出来事を終わらせて、秀美ちゃんと合流し、延いては亨達ともまた一緒になりたいって思っただけよ」


洋紝「うむ、その通りだな。その為にも早く冠東へ戻ろう」


撫蘭「ええ、そうね………」


小声で交わす父娘。そして、彼女達の乗った車両が岐阜羽嶋(現実での岐阜羽島辺り)を通過し、程なく名護屋(現実での名古屋)に到着しようとする頃だった。


撫蘭「うっ……!」


突如呻き、慌てて口を押さえる撫蘭。


洋紝「撫蘭、どうした!?」


撫蘭「ちょっと、気分が悪い………お手洗いに行ってくるわ、お父さん」


そう言うと彼女はフラフラと立ち上がり、おぼつかない足取りでトイレへと駆け込む。

撫蘭「ううっ………げほっ、げほっ!」


激しく悶える撫蘭。


洋紝「撫蘭!しっかりするんだ!!」


必死で呼び掛ける洋紝。だがそれとは対照的に、徐々に悪化する撫蘭の容態。




そして、間髪入れず…………


撫蘭「あ゛ああああっ!」


凄まじい唸り声を轟かせる。その瞬間、撫蘭の身体から例の怪物が分離。それに伴い、彼女は元の姿に戻った。

洋紝「ああっ!撫蘭!!」


なおも呼び掛ける洋紝。その声に反応した撫蘭は、力無く立ち上がり………


撫蘭「ううっ……お父さん」


と、呟く。


洋紝「大丈夫か撫蘭!よかった………お前、ようやく元の姿に戻れたぞ!!」


撫蘭「えっ?………あっ!」


設置されている姿鏡で自らを映す彼女。確かに父の言う通り、元の黒髪でシニヨンでチャイナドレスの姿に戻っていた。


撫蘭「やった!やっと元通りに…………っ!?」


一瞬喜ぶ撫蘭………しかしすぐに冷静になり、怪物の方を振り向く。このまま“奴”を野放しにしておく訳にはいかない。一刻も早く倒さなければ、直に大変なことになるだろう。


撫蘭「よくも私の身体を乗っ取ってくれたわね………覚悟しなさい」


憤る彼女は匕首を構え、相手目掛けて素早く振り下ろす。


触手「ッ!?ギィヤアアアアアアッ!」


撫蘭の攻撃を受け、恐ろしい悲鳴を発する怪物。その拍子にトイレの扉が壊れ。車両の通路に倒れ込む。


「な、なんだあれは!?」
「うわあああーっ!」


突如現れた異形の怪物。その姿を見た他の乗客達はパニックを起こし、一斉に別の車両へと避難する。当の撫蘭は、それを好都合と捉え……


撫蘭(よし、これなら他の人達を巻き込まずに済む。倒すなら今しかない)


そう心の中で呟くと、怯む触手目掛け高速で迫る。そして、再び匕首を振り下ろす。


撫蘭「はっ!はあっ!!」


蠢く触手を素早く切り落とす撫蘭。そんな彼女を後押しするように、洋紝が


洋紝「撫蘭、翔革丸が効いている今がチャンスだ。決して攻撃の手を緩めるんじゃないぞ!」


と、進言する。


撫蘭「うん、分かったわお父さん!」


そう返答しつつ、尚も匕首を振るう撫蘭。




………だが相手も負けてはいない。再び“依代”の元へ戻ろうとしているのか、残る触手で撫蘭の身体を縛り上げようとする。


撫蘭「ぐっ!…………こ、こいつ!!」


なんとか自由が奪われる前に触手を切り落とし、体勢を整えた撫蘭。そして………


(ここで負ける訳にはいかない………私にはまだ、やるべき事があるんだから!それまで絶対に、“のぞみ”は捨てないわよ!!)


と、心の中で叫ぶのだった。


次回に続く


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