次元移動

裏になり 表になり
右に曲がり 大きく左に迂回し
何かの揺れに底まで落ちて
意識もせずに また這い登る
高さを知らず
広さを知らず
ただひたすらの1次元の道程
それでも時々 やや重たげに
もたげた頭を左右に振るのは
わずかに不安を感じるからか

ある日 DNAの奥底で
刹那の光が暗示する
何処からともないその声に
抗うことなく身を硬くする
「さあ 立ち止まれ、点となれ」
遥か見知らぬ 祖先の声か
核酸に共鳴する神の囁き

         うららかな陽光の中 春の風を優しくうけて
                    一羽の蝶が羽ばたいた
                    眼下に見える一珠のキャベツ
                    葉脈に沿った幾筋の食い跡
                    それが彼の全てだった
                    いま無限に広がる空へ 空へ
                    高さを感じ
                    広さを感じ


ああ
昨夜までいた あの青虫は
一体 何処へ行ったのだろう?

昨夜までいた あの青虫は
死んじまったに違いない
冥土に行ったに違いない