解 6 | Glaciation Limit

Glaciation Limit

-When a blaze occurs in the driftless area-

「会長は、独立を認めないとおっしゃったが、株の話はお分かりですか」

 男は続けた。

「御社の株は非公開で、故城戸会長――社長兼会長――の持ち株比率が三分の二です。残りを、専務だったドーバル氏とそちらの常務が持っています。故城戸会長の持ち分を貴女が相続しました。ドーバル氏は失踪扱いですが、今もまだ御社の株主です。『相続人に対する株式の売り渡し請求』の定款があります。ドーバル氏は、株主総会を招集し、貴女に対して株式の買取り請求をすることができます。そのとき、貴女に議決権はありません」

 会長の女が隣の栗毛の少年を見ると、少年は眼を瞑って右肘をテーブルにつき、こめかみに右手の指先を当てていた。

 女はオールバックの男に視線を戻した。

「独立を認めなければ、会社を乗っ取る、ということですか」

「そうできなくもない、ということです。そちらの常務もなかなか忠誠心に篤い男のようですし、面倒かもしれないですな。ドーバル氏は、割に合わないことはやらない主義です。そこで、取引です――ドーバル氏が保有する御社の株と、御社が保有するサニーベールの株を、互いに売買しましょう。貴女は会社を乗っ取られる心配をしなくて済む。サニーベールは後腐れなく独立できる。お分かりでしょうが、この取引に応じなければ、貴女はサニーベールどころか、全てを失います」

「大変分かりやすいですわ。ブラウンさんは、人を脅すのが専門なんですか?」

 女が冷やかに云った。

「交渉と云ってもらいたいですな。無論、専門ではありませんが」

 オールバックの男は、作り笑いを顔に張り付けたまま応えた。

「正直、株の話なんぞ知ったことじゃない。だが、上からこの話をどうしてもまとめてこいと云われている。まだるっこいのはお互いさまですよ」

「気に入らない」

 栗毛の少年が吐き捨てた。会長の女が隣の少年を少し睨んだ。

「そういう云い方はおよしなさい。――そこまでおっしゃるなら、私たちもあなた方と一緒に仕事はできません。後腐れのない方法できれいに手を切りましょう」

「会長は話の分かる方だ」

 オールバックの男がパチパチと手をたたいた。

「一つ条件が」会長の女がすかさず続けた。「『一輝』は無傷で返していただきます。あなた方は、彼にもう用はないのでしょう?」

 オールバックの男は考える顔をした。テーブルを指先でトントンと何度か叩き、それからゆっくりと上着のポケットから携帯端末を取り出し、どこかへ発信した。

「『ブラウン』だ。『ブラック』の追跡は終了」と電話に出たらしい相手に告げた。

 会長の女は微笑んだ。