【韓ドラ】殺人者のパラドックス  | ROUTE8787 サンサクキロク

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殺人者のパラドックス 全8話

2024年製作 NETFLIX ☆3.8

2024年韓ドラ4本目(通算107本)

意図せず人を殺してしまったことをきっかけに、次々と殺人を繰り返すことになる一見平凡な青年。そんな彼を、勘の鋭い刑事が執拗(しつよう)に追い始める。

 

映像の切り取り方とか、すっごく好みでした。

観ていて飽きないような工夫、

場面の切り替えのスタイリッシュさ。

 

ちょっとポップな編集が、殺人とか暴力盛沢山な、

この作品を、観やすくしているような感じ。

 

 テーマとしては、

あまり深読みしたくない作品です。

「殺人はダメだ」と当たり前な事ではあるけれど、

作品を観ていると、スカッとする。

 娘を死に追いやった人の復讐が行われると、

良かったな~と思う。

 人間の正論の奥に潜む、

真の欲求をさらけ出されたような気分になります。

 

この作品は、「殺人」は悪い事だという、

その逆説。

人間が持つ「正義」の、その逆説。

それらを、炙り出しているのかも知れない。

 

・・・・・とはいえ、思うだけで、

実行に移さないのが、

人間だと思うので。

 

 こういうテーマは、自分の感情の中で、

じっくりと楽しめばいい。

ただのエンタメだと、割り切って。

 

そういえば、昔、アメリカドラマで

「デクスター警官は殺人鬼」というものが

あったわよね~。

アレも、同じような感じ。

必殺仕事人にもしかり、古今東西、人々は、

世の不条理への不満を、

発散させてくれる作品を求めているのだ。

 

以下ネタバレです

 しかし、単純に発散させてくれないのが、

この作品。

 

確かに、悪い奴らをぶった切っているのに、

 

一人は、完全に狂っているし、

一人は、気弱な青年で、もう一つ、

その使命感を感じられない。

 

「悪人」を殺すのにも、

それなりの流儀が必要なんだな~と

思ったりする。

 でも、そういう部分が欠けているからこそ、

妙なリアリティが作品を引っ張っていく。

 

やっぱり、ウシク様が凄かった

 リアルさの功労者は、勿論、ウシク様だろう。

平凡で、何事にも流されて生きてきたタンが、

ひょんな事から殺人を繰り返し、

最終的にダークヒーローになる過程は、

本当に見事だったと思う。

 殺人に目覚めながらも、

その恐怖に押しつぶされていく様子。

ノ・ビンへその辛さを吐露して涙する姿は、

ただの青年のようだった。

 本来なら、ちょっとオーバーに

演じてみたくなる役どころだと思う。

ちょっと、カリスマっぽく

演じてみたくなるだろうけど、

そこを、ぐっと抑えた演技が出来るっていうのが、

流石だなって思った。

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タンはナンガムが手に持った銃口を、

自分の頭に向けて、引き金をひいた。

 彼は、本当に疲弊していたし、

こんな人生から逃げ出したいと

思っていたのだ。

 タンは、普通で、弱い。

そんな彼が、稀有な力を得てしまった不幸。

 

それを目の当たりにしたからこそ、

ビンは自分の命を懸けて、

彼を守ろうとしたのだ。

 

そんな共感は、最後のシーンでも際立ってくる。

 韓国へと戻り、

ダークヒーローとして生きていく結末。

彼は悪人を殺しながら、苦しみ続けていく。

 

ナンガムが最後にタンへ声を掛けた・・・

「いつか、お前は捕まる」その日まで。

 

 多くの人を殺した主人公の行く末は、

完全にエンタメとして生き続けるか、

シリアス流れで死んでしまうかの、

どちらかだろうけど。

 

よりリアルさを求めた本作としては、

非常に、見事な着地だったと思う。

 

タンが無罪放免で、

今もどこかで殺人を続けている。

そこに甘さが生じない、凄さ。

 これからタンが生きて続けていく事も、

地獄なんだと、その選択に同情すらしてしまう。

この妙な感情の結末は、

ウシク様が生み出したものだ。

 

ソン・チョンが強すぎる

そして、一人勝ち

マジ、強過ぎるやろ~(笑)

怖い怖い・・・・。

後半は、この方の存在感が凄すぎて、タンくん、

引っ込んでしまった感じやもんね。

イ・ヒジュン様・・・

40歳代なのに、もう60歳代にしか見えないし、

強い強いって言っても、なんていうのかな~

「それ、ありえへんやろ」っと

ツッコミしたくなる感じじゃないのよね。

百戦錬磨の強さっていうのかな~??

アクションに、ソンチョンの

生きざまが刻まれてるっていうのかな~

 糖尿病の末梢神経障害で

指先が腐っているのに、

こんなに強い!!

(関係ないけど、あの指先腐っていく感じ、

リアルでうまいわ~。

私も糖尿病患者さんで末梢神経障害の

終末期を見た事あるけど、

本当に、あんな感じで、

最終的に木炭のようになるんですよね)

 

結局、この作品は、

ソン・チョンの独り勝ちのような気がする・・・

死んだのは死んだけど・・・

 最後の最後まで生き延びて、

ナンガムに言いたい事言って、

死んだワケでしょう??

 

 しかも、自分を殺した事で、ナムガム自身は、

警察を辞めたうえに、逃がしたタンが、

また同じように殺人をしてる・・・

って、ナムガム、色々と悔やむやん。

 

しかも、その上、

自分の父親がクソやったっていう現実・・・

その父親キッカケで、ソンチョン、

更におかしくなちゃったんでしょ?

極端な話、この怪物生み出したの、

自分の父親ってね~。

何なら、母親も不倫確定って。

 

タンも生き地獄かも知れんが、

ナムガムも相当、生き地獄じゃないの?

 

そんな最後、

私、とっても不服です。

 

タンは生き地獄でもいいけど、

ナムガムには、そうなって欲しくない。

 

それならさ・・・

実は、真実は違ってた・・・

みたいな展開が良かったわ~。

ソンチョンの思い込みで、父親は逆に、

良い人やった・・・みたいな展開で。

 自分のやってきた事は一体なんだったんだ~

みたいな。一瞬でも、

自分の生き様を後悔して死んで欲しい。

しかも、

 あんな簡単に死ぬとか、許せないわよ~。

 

一人負けは、ナムガム・・・

 

ソンソック様のヒゲを、

受け入れられるかどうかが、

私のポイントだったけど。

始めは、「ヒゲ~」って思ったけど、

意外にいけた。

・・・というか、私の「ヒゲ史上」

NO1かも知れない。

 

・・・というか、今観てる「智異山」にも

出てきたけど、

同じ警官の役だけど、まとってる雰囲気が、

全然違う~

・・・・ってビックリしました。

 

タンの能力よりは、ナムガムの

「犯人が分かっちゃう」みたいな能力は、

特段、発揮されずに終わったしまったように思う。

 つまり、あんまり、活躍してないんちゃう??

 

部下に偉そうに言う割には、

結果出してないやん!!

 

もっと、ナムガムとタン

この2人をもっと、対峙させて欲しかった!!

もっと、タンを追い詰めて欲しかったわ~

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 色気もあるし、雰囲気もあるからこそ、

もっと、こう、活躍して欲しかった。

ソン・チョン死んだけど、最後まで、

やりこまれた感じなので、

スカッとしなかった。

最終的な伏線回収も、まさかの、

ノ・ビンに取られちゃったしね~

 

ただ、こちらの演技も完璧だった。

特に、父親が殺されて、車に乗り込むシーンは、

胸を鷲掴みにされましたね。

 

 

 

 作品全体としては、いい流れできてたけど、

正直、ソンチョンの登場で、

物語が分散したような気はします。

 そして、悪人には天罰を・・・という部分が、

手ぬるい感じだったので、タンの最後も相まって、

爽快感とは程遠い仕上がりになってるかな~。

 

8話だけど、これこそ16話にして、

それぞれの対話・対峙が濃厚に描かれていたら、

分散する事なかったかな・・と思う。

 

 ムガムがタンを逮捕すれば、それが1番、

幸せだったかも知れないと思える最後が、

何とも、厳しくて悲しい。

 止められること。

罰を受ける事。

謝罪する事。

 それらのタイミングを失う事が、

生き地獄なのかもしれないな~

・・・・と考えて、ゾワゾワした。