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プロミシング・ヤング・ウーマン /米英

2020年製作 113分 NETFLIX

2024年9本目 ☆3.8

過去に、親友が性的暴行の餌食となるという不条理を経験した女性。数年後、被害者ではなく加害者を守り、犯罪の温床を作り続けるゆがんだ社会に仕返しすべく報復劇に乗り出す。

 

 

エメラルド・フェネル監督作品。

「ソルトバーン」の監督さんです。

NETFLIXで、配信が2月6日までとなっております~。

 

女性の性被害について、切り込んでいながら、

ポップ調で、しっかりとエンタメに仕上がっている。

 音楽や、色使いのうまさは、ソルトバーン同様で、

魅せる作品になっている。

 エンタメで引き付けておき、

視聴後、心に重くのしかかるものが、本作の肝となる。

 

女性も男性も、観るべき作品だろう。

被害者か、加害者か、傍観者か。

どの立場で、共感するだろうか。

 

以下、ネタバレあらすじ

ニーナとキャシーは子供の頃からの親友。

一緒に医学部の道に進んだが、

ある時、飲み会でニーナはレイプに遭い、その動画が出回った。

それが原因でニーナは自殺してしまいます。

 キャシーも医学部を退学、以降は、毎夜、クラブに出掛け、

女性を食い物にする男たちに復讐していた。

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ある日、医学部の同級生(ライアン)と再会し、

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ニーナをレイプしたアル・モンローが結婚するという話を聞く。

 キャシーは、レイプをした男と、

その時関わった人間への復讐を誓うのだった。

 

①同級生への復讐(女性)

 同級生マディソンは、セレブな主婦となっていたが、

ニーナの動画を観て、笑っていた人間だ。

 今でも、泥酔する飲んだニーナにも非があると言う。

右矢印マディソンにお酒を飲ませて泥酔させ、男とホテルの一室に過ごさせた。

寝ている間に何があったのか分からない恐怖から、

同じように、泥酔するほど飲んだ人間が悪いと言えるのか。

 

②大学の校長(女性)

ニーナとキャシーがレイプ事件を大学に訴えたが、

証拠不十分で事件を隠滅した。

このような事件で、前途有望な若い医学生の将来がつぶれてしまう・・・と。

右矢印校長の娘を見知らぬ男と一緒にいるようにした。

娘に何か起こった時も、同じように、無視できるのか?

 

③アル・モンローの弁護士

被害者の過去を調べあげ、被害者に落ち度があるという展開で、

裁判に勝ち続けていた。

アル・モンローだけでなく、他に多くの事件で被害者を苦しめてきた

右矢印キャシーが復讐に訪れた時には、自ら自分の行った来た弁護を悔やんでいた。

 

 復讐をしながら、再会した同級生・ライアンと

親密になっていくキャシー。

 しかし、マディソンから、保存していたレイプ動画を提供されて、

事態は一転する。

 動画の中に、ライアンの面白おかしく笑っている音声が入っていたのだった。

 

キャシーはライアンを脅し、アルの結婚式前、独身最後のパーティーの場所を聞いた。

キャシーは、ストリッパーに扮して訪れ、

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アルと2人きりになると、

ナイフを持って復讐しようとしたが、

返り討ちに遭い、ころさr

 キャシーの遺体を、アルは焼いてしまう。

 

しかし、キャシーは自分に何かが起こった時のプランを用意していた。

改心していた弁護士に、自分の向かった場所、レイプ動画を託していた。

 すべてが終わっていると思っているアルの結婚式。

警察官によって、キャシー殺人の容疑で逮捕される事となった。

 

ネタバレ感想

上差し5人目は・・・・

 復讐は、同級生・校長・弁護士・レイプ主犯格・・・と4人になる。

劇中、ナンバーが出てくるが、5人目は、

多分、キャシー本人じゃないかな??と思う。

 ニーナを助けられなかった自分を、ひどく責めていたし、

ニーナの一件が、彼女に大きな影を落としているという事が

感じ取れる。

 ニーナを助けられなかった事。

返り討ちまで計算していたかどうかは分からないけど、

5人目である自分自身の死で、この復讐は完結すると思っていたんじゃないかな。

(まるで「セブン」みたいだよね)

 

本作はレイプ被害者は元より、それによって、周囲の人間もまた、

苦しんでいるという事が描かれている。

 

「プロミシング・ヤング・ウーマン」とは、前途有望な若い女性

・・・という意味だ。

「前途有望な若い男性」を守ろうとする社会を、

皮肉っているようにも思える。

被害者は元より、その周囲の前途有望な若い女性が

犠牲になっているという点を、明確に描いている。

 

上差し被害者側と加害者側の対比

キャシーが今も、過去の事件に苦しんでいるのに対し、

加害者側が完全に過去のものになっている事に、

唖然とする。

「昔の事だろ」「酒のせいだ」

「若気の至り」だと。

 男性でなく、女性もまた、

「飲んだ方が悪い」とか「そんな所に行くのが悪い」と言う。

 同性の中にも、敵はいる・・という事もまた、

リアルな所だと思う。

 

1989年「告発の行方」から35年です。

でも、同じような事件が繰り返されるよね。

なかなか、人間の考え方って変わらない。

 

100%レイプした側が悪いとは思っている!

それを、許す気とかないし、

被害者もどんな状況でも落ち度はないと思っている!

 

それでも、私は、やっぱり、娘たちには、

「泥酔するまで飲んだらダメよ」と言うだろうし、

「夜中に出歩かない」と言い続けるし、

「露出した服は、あまり着ない方がいいんじゃない?」と

それとなく言うと思う。

 

でも、それはトラブルに巻き込まれないようにする為。

レイプだけではなく、その他のトラブルにおいて。

 いくら平等だといっても、女性は体力的な所で劣る。

 

もちろん、そうしない事が、被害者の落ち度にはならない。

他の事件で、被害者の落ち度とか云々を言われる事はない。

すべての暴力や、レイプの原因は、加害者にしか存在しないのだ。

 

頭ではわかってるけど、そんな風に娘に指導しちゃう時点で、

偏見になっちゃうのかな??とか考えてしまう。

 自分にはないと思う偏見について、

こう、考えさせられてしまう作品なんですよね。

 

音楽がいい

サントラがかなり良いですね。

この作品の世界観と非常にマッチしてる。

特に、キャシーが小屋に向かうシーンの

ブリトニー・スピアーズの『Toxic』には痺れました。

 もう、このシーンは最強でしたね。

 

 

イマイチだったところ

う~ん・・・

復讐劇なんだけど、最後がスッキリしないっていうのがね~。

結婚式で逮捕されるだけなんて、

物足りない~!!

・・・・なんか、こういうありきたりなんだよね。

ライアンも、どうなるか描かれてないし。

こんな最後なら、もうちょっと、余白残してのクールな終わり方でも

良かったかな・・・って思ちゃいました。