HUNT / 韓国
2022年製作 125分 劇場
2023年74本目(韓国映画53)☆☆☆☆
1980 年代、安全企画部(旧 KCIA)の海外班長パク(イ・ジョンジェ)と国内班長キム(チョン・ウソン)は組織内に入り込んだスパイを探し出す任務を任され、それぞれが捜査をはじめる。二重スパイを見つけなければ自分たちが疑われるかもしれない緊迫した状況で、大統領暗殺計画を知ることになり、巨大な陰謀に巻き込まれていく。
念願の「HUNT」を観に行く事が出来ました。
大きな画面で観れて良かった~!!
「HEAT」を彷彿とさせる銃撃戦は、やはり、大きな画面で堪能したいものです。
イ・ジョンジェ様の監督・脚本・主演。
しかも監督・脚本は初です。
125分、スピード感を持って、見事に中だるみする事なく観終えた事が、
その才能を証明しているのではないでしょうか。
本当に、初監督作品とは思えなくて。
ジョンジェ様が関わってきた作品は勿論、
彼が歩んできた人生そのものが、投影されているように感じました。
ジョンジェ様だからこそ、この作品が出来たのだと。
そういう結晶のような、絆のような感覚が、
画面を通して、ビシビシと伝わってきましたね。
内容は、韓国の歴史背景を知っていた方がより、理解しやすいと思うけど、
そういった事がなくても、楽しめるようになっているのが、
この作品の魅力だと思います。
少し、クリストファーノーラン監督作品のような、
緻密でありながら実は、単純。
複雑でありながら、最後には、ピタっとパズルが合う感覚がある。
そんな作品だと個人的には思うんですよね。
深くは理解出来ないけど、あり得ない銃撃戦や、
惨い拷問シーン、重厚な会話の展開が、
とにかく、意味が分かっていないなりに、物語の中へ引っ張り続けてくれます。
そして、最後に、「そうだったのか」という明確な答えが用意されています。
その答えは、複雑であるようで、とてもシンプル。
けれど、心にずっしりと、重石が残るような感覚を与えてくれます。
主演2人の、緊張感MAXの演技は本当に素晴らしかったし、
この演技こそが、終盤の伏線に繋がっていると思わせてくれます。
豪華なカメオも、この作品に付加価値を与えてくれています。
カメオだけど、しっかりとその存在感を印象付けているのは、
本当に凄いな・・・と。やっぱり、長く活躍している人は、
確かな演技力故なんだと、思い知らされた次第です。
別にジフニ様推しだからというワケではなくって、
単純に、スピンオフ作品出して欲しいって思うもの~。
カメオなのに、魅力的なキャラが多過ぎ~!
つまりは、それに負けない主演2人・助演の方々が、
やっぱり凄いって事だよね(笑)
いや~2回以上は観る事を強く勧めたいですね。
1回目は、意味分からんけど、最後の答えは何となく手に入れて・・・
2回目は、その答えを握り、歴史的背景を復習して、
鑑賞に臨む。
その時に、どれほどの感情の揺さぶりがあるのか。
1度しか鑑賞出来ていない私は、今からその2回目の揺さぶりが、
楽しみで仕方ないのだ。
以下、ネタバレです
この作品で、私が1番衝撃を受けたのは、
民主化運動において、弾圧した側にいた人間を描いている・・・という
所なんですよね。
チョン・ウソン様演じるキム班長は、民衆を弾圧してきた事から、
この大統領ではあかんのや~!!と思い、
その「正義」を抱えて生きてきたんですよね。
私も幾つか民主化運動の作品を観てきましたが、
弾圧している側は「悪」であるという前提でしか、観て来なかったんです。
でも、この作品を観て、キム班長の苦悩を感じるとともに、
弾圧を命令され、実行してきた人々の中にも、
その苦しみがあるのだと、気付く事が出来たんです。
弾圧をおこなう側が、「人間」として、よりリアル感を増したというか。
その「側」にも、家族がいて感情があって。
そんな当たり前なことを、感じる事が出来たんですよね。
そういう視点を描いたジョンジェ様、凄い!!って思う。
パク班長とカン班長は、想いが同じなのに・・・・
立っている場所は、こんなにも違っているのが、
切なくて苦しい。
単純な世の中だったら、
彼ら2人にとって、どちらも、間違いなく「正義」なのに。
そう強く願ってしまう2人の関係性や描き方が、
ジョンジェ様凄いって思うし、
ジョンジェ様ウソン様凄いって思う。
最後のシーンで、ジョンジェ様演じるパク班長が、
大統領の暗殺を直前になって制止する。
それは、北が大統領暗殺を皮切りに、南への攻撃をする計画を知ったからだ。
パク班長の決断は、出来得る限り平和的な解決を望んでいた証であり、
南・北関係なく、暴力を否定したものだったと思う。
その優しさに触れた時、部下を死においやった時の苦しみは、
どれほどだったのかと、胸が痛くなる。
正義のために、平和のために、祖国のために。
もがいて、あがいて、苦悩して。
そして、同じ「正義」を持つカン班長が、
その事実を知らないままに、逝ってしまった切なさ。
やりきれないよね。
銃撃戦とか、拷問シーンとか、
無骨な感じだけど。
ジョンジェ様の優しさを非常に感じる作品だった。
「悪」とされた弾圧した人間の抱える苦悩に焦点をあててみたり、
南への侵攻を制止するために、使命でもある暗殺をとどまったこと、
同じように時代に巻き込まれた娘のような存在を、
救おうとしたり(私は、最後、ユジョンが生きていると思ってます)
カン班長にも、家族がいる・・・という所を描いてみたり。
とても、優しくて人間味があったよね。
その人間の持つ優しさが全てだと、そう言っているように思う。
南への侵攻を制止した事。
それが全てなんじゃないかなって。
パク班長は暴力を良しとしなかった。
その選択が、正解なのだと言っているような気がする。
まぁ、日本での銃撃戦とか、やりすぎ感もあるけども、
見応えはありました。
エンターテインメントのために、歴史を利用したあざとさがなく、
終始漂う信念のために、エンタメを最大限に利用している感じ。
そういう意味では、
ジョンジェ監督に緻密に計算され尽くし、
ジョンジェ監督に完全にコントロールされた秀作だったと思う。