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新しき世界 / 韓国

2013年 134分 Hulu

2023年43本目 ☆☆☆☆☆

 

韓国最大の犯罪組織「ゴールドムーン」に潜入し、8年になる警察官ジャソン。

自分と同じ中国系韓国人である組織のNO.2チョン・チョンの側近として仕え、

理事という地位にまで上り詰めていた。

そんなある日、組織の会長が急死し、

後継者はチョン・チョンと、イ・ジュングの名前があがっていた。

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潜入捜査は、会長が死ぬまでだと思っており、

この任務を辞めたがっているジャソンを、上司であるカン課長は、

後継者問題に乗じて、紛争を引き起こす作戦を決行すると話し、

その作戦には地位を築いたジャソンが不可欠であり、

辞意は受け入れないと話す。

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【新世界作戦】

カン課長は、まずチョン・チョンに接近し、ジュングを逮捕する代わりに、

警察に協力するように言う。

 ヤクザはなくなりはしないから、適度に警察を言う事を聞けばいい・・と

提案する。

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 カン課長が、ジュングを逮捕出来る証拠がある事に驚いたチョンチョンは、

ハッカーを雇い入れ、カン課長についての情報を調べさせた。

 

その情報により、組織内に2名の潜入刑事がいる事を知ったチョン。

1名はジャソンさえ警察だと知らなかったチョンの側近の一人で、

スコップで撲殺された。

もう一人は、ジャソンの連絡係でもあった女性刑事。
拷問をされるのを防ぐため、ジャソン自身が、
銃でとどめをさした。
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 ジャソンの情報は、カン課長が破棄しており、

チェンには漏れなかった。

 

カン課長は、ジュングを逮捕し、

今回の逮捕劇は、チョンの差し金だと話す。

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まんまとカン課長の話を信じたジュングは、

手下を使って、チェンを襲撃した。

 

その頃、ジャソンは、カン課長から、

チェンとジュングを衝突させた後、後継者争いから離脱し、

警察と蜜月にあるチャン・スギを会長に据える計画だと話す。

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そして、チャン・スギをおとりにして、

お前が組織を乗っ取るのだと言う。

 

ジャソンは最後と言いながら任務を押し付ける事に、

強く反発する。

カン課長は、警察本庁にハッカーが入り、

情報源がジャソンの情報を含め、

根こそぎチョンに渡っていた事を話す。

 

それゆえ、警察時代のジャソンの情報は全て消し去り、

お前の身元を知るのは、お前と俺と、局長だけだと。

チョンもジュングの手下に殺されるだろう。

 警察としてもジャソンにしても、絶好のチャンスだと話した。

 

しかし、ジャソンは自分の知らない潜入捜査官がいた事、

仲間が2人目の前で・・・一人は自分が殺した事で、

カン課長への不信感を募らせていた。

そもそも、この作戦のために、

会長を殺害したのもカン課長の計画じゃないとか疑ってもいた。

(多分、そう)

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 (ジャソンの妻もまた、警官であり、

ジャソンの動向をカン課長に報告する役割を担っているが、

その事をジャソンは知らない)

 

ジュングの手下による襲撃により、

チョンは瀕死の重体となる。

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(警察のたくらみを察知していたチョン

たくらみにハマったジュング)

 

 連絡を受けたジャソンは、病院へと急いだ。

自分が警察だと知った上で、チョンは、どんな反応をするだろうか。

怒り狂い、裏切者だと叫ぶだろうか。

 

 不安を抱えながら、横たわる兄貴に近寄っていく。

薄く目をあけたチョンは、想像したよりも、ずっと穏やかだった。

 手を少し動かし、近くに来いと合図する。

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「そんな顔をするな、この野郎

襲撃しないさ

もう会えないと思ってた 嬉しいよ

おいブラザー 苦しんでるみたいだな

そんなに悩むな この辺で選べ

兄貴のいう事を聞け お前が生き残るためだ

もしも、もしもだが 俺の命が助かったらどうする?

お前は俺を許せるか?

事務所の机に、お前への土産がある

強くなれ 強く生きるんだ

俺の舎弟 それがお前の生きる道だ

分かったか?行け、眠い」

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そう言い残して、チョンは、息を引き取った。

 兄貴としてのチョンの器の大きさに、ジャソンは、

自分の弱さを痛感するしかなかった。

 やくざの道か、警察の道か。

どちらが正義なのかどうか、もう、分からなかった。

 

上司と信じて生きてきたけれど、

自分を駒のように扱ってきたカン課長は、

息つく間もなく、組織の内部情報を提供しろと言ってきた。

 組織から賄賂を貰った人間、組織に渡した人間。

それらをあぶり出し、逮捕する事は正義なのかも知れないが。

 これは、正義なのか?

人を騙し、衝突を起こさせ、多くの人間が死んだ。

 流れた血液は、正義の為だと、肯定できるものなのか?

チョンの流した血も・・・・。

 

チョン兄貴が残した土産は、机の下の金庫に隠されていた。

それは、ジャソンが警察官であるという情報だった。

彼は常に、「兄貴を信じていればいい」と言った。

逆をいえば、常に自分を信じてくれていたという事だ。

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 この8年は、チョン兄貴とともにあった。

この任務に気が狂いそうになる時、

自分の向いている方向が見えなくなった時、

常に、チョン兄貴は自分の光であり、羅針盤だったのだ。

 

自分は選択しなければならない。

どの選択も、チョン兄貴は認めてくれるだろう。

妻がこくりと頷いたのを確認して、家を出た。

 

全ては、予定通りに事は進んだ。

自分と手を組む予定だったチャン・スギは、

案の定、自分を殺す算段をつけていたが、

もうすでに、立場は逆転していた、

 自分を殺せと命じた手下によって、逆に殺害された。

証拠不十分で警察を出されたジュングは、

その死を覚悟していたようで、抵抗もなくビルから落とされた。

 

自分の経歴を知るカン課長と、局長には、

殺し屋を送り込んだ。

 

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それぞれが、自分の仕事を全うし、

ジャソンは、会長の座についた。

会長のイスに座り、チョンからの土産に火をつけた。

警察である自分も、警察であった過去の自分も、

もういない。

 

チョン兄貴が、自分という人間を信じ守ってくれた。

その絆と信頼が存在した、この世界に、

これからも生きていく。

 

 出会った頃を思い出す。

高らかに笑い、情に溢れたチョン兄貴。

 彼と笑いあった情景が、たばこの煙の向こうに見えた。

血生臭くて、気の狂いそうな日々だったはずなのに、

不思議と、眩しい光で満ちていた。

 確かな、幸せが、そこにはあったのだ。

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