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それだけが、僕の世界 / 韓国

2018年 Hulu 120分

2023年30本目 ☆☆☆☆

かつてアジアチャンピオンにまでのぼり詰めたが、40を過ぎた今は見る影もなく落ちぶれ、

その日暮らしをしている

ボクサーのジョハ(イ・ビョンホン)。

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少年の頃、母は父親の暴力が原因で、

ジョハを残し、家を出ていき

父は刑務所に入っている。

ある日数十年ぶりに母と再会。

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ちょうど、定住しない生活をしていたジョハは、

母親の家に転がり込む事になった。

そこで、サヴァン症候群を患う弟ジンテ(パク・ジョンミン)の存在を初めて知る事になる。

母親が、家を出て自殺しようとした時に、

それを助けてくれた男性との間の子供で、

ジョハとは父親違いの弟となる。

 生活を共にする中で、

ジョハとジンテは、距離を縮め、

ジンテのピアノの才能を認めるようになる。

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 ジョハは、交通事故で出会った義足の女性が、

ジンテが尊敬するピアニスト・ガユルだと知った。

ガユルは有名なピアニストだったが、

大きな事故を経験し、

右足が義肢になってからは、ピアノをぱったりと辞めてしまった。

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 ジョハは、ガユルのもとへジンテを連れていき、

その才能を見極めて欲しいと伝えるが、

いったんは拒否される。

しかし、

ピアノを弾き出したジンテに導かれるように、

ガユルは自らも、ピアノを弾き、

その喜びを思い出すのだった。

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 その頃、母親は仕事のため、

1ヶ月ほど家を空けるので、

ジンテの面倒をジョハに頼む。

 2人での生活が始まり、

ジンテをピアノのコンクールにも参加させた。

ジンテの演奏は1番素晴らしかったが、

サヴァン症候群である事が影響し、

受賞を逃すのだった。

 

 ある日、ジンテが行方不明になり

ジョハが探している所へ、

母親が一時的に帰ってきた。

 ジンテが行方不明になっている事に、激怒し、

きちんと見ていなかったジョハをなじる。

 自分を捨てた母親が、

自分に激怒する事にショックを受けたジョハ。

 しかし、母親の体調の異変に気付き

(髪の毛が抜け落ちていた)

職場に確認すると、やはり仕事は嘘で、

病院に入院していたのだ。

 

真実を知ったジョハは、

刑務所にいる父親を面会し、

親子の縁は切る。もう、

ここから出てくるなと、決別した。

 そして、母親の病院を訪れ、

何故、自分を捨てたのかと問うた。

「オヤジも、アンタも、俺は絶対に許さない」

母親は、「ごめんね。生まれ変わったら、

今度はアンタの為だけに生きる」と

涙を流すのだった。

 

父からも母からも決別し、

カナダで生きる事を決心したジョハ。

その空港で、ピアノ演奏会で、

ジンテが演奏する事を知る。

 ガユルとその母親が、

ジンテのピアノの才能を認め、

彼に演奏の機会を与えたのだった。

 

ジョハは、病院へ向かい、

母親を連れて、演奏会の会場へ向かった。

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ジンテの演奏は素晴らしく、

大きな拍手が鳴りやまなかった。

 

演奏会の後、

病院でベッドで横になる母親にそっと寄り添い、

「早く、家に帰ろう・・・」と言うジンテに、

「天国に来た時に、

大切な人を探してと言われたら、

お母さんを探してね」と

言い残すのだった。

 

 母親のお葬式で、ジンテの姿が見えず、

ジョハは探しに行く。

ジンテは公園のピアノで、

ひっそりとピアノを弾いていた。

 ジンテと並び、信号を待つジョハ。

飛び出そうとするジンテを、そっと制し、

ギュッとその手を握る。

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  ネタバレ感想

もう・・・・めちゃくちゃ良かったですね。

Huluでの映画、アタリが続くわ~。

 

パク・ジョンミン様の演技は、

もうジンテにしか見えないし、

イ・ビョンホンの繊細な演技も、

本当に素晴らしかった。

 

けれど、私が、やっぱり、

1番スゴイ!!!と思ったのは、

 

ピアノを弾くシーンなんですよね~・・・・

 

もう、

プロ根性がスゴ過ぎるとしか言えない・・・・

 

ジョンミン様もだけど、地味に、

ハン・ジミン様も凄いと思う。

 

ジンテの最後の演奏会のシーンは、

大画面で観たかったな~!!と悔やむほどだし。

しかも、ピアノ弾くだけじゃなくて。

その中に、純粋にピアノを弾く喜びが、

これでもかって程に、詰め込まれている事に、

震えました。

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ジンテの世界の中で、

まるで自然と同じようなレベルで、

ピアノは存在し、彼自身の息吹であり、

鼓動であるという事を、

こう感じるんですよね。

ああ、魂のこもった演奏って、

こういう事なんだと、

そう感じさせてくれるんです。

 

こういう身が震えるような同じような感覚を

以前にも経験しておりまして。

それは、恩田陸作品の名作ともいえる

「蜜蜂と遠雷」を

読んだ時なんです。

 

「世界は音楽に満ちている」

 

 こちらの作品では、言葉や文字で、

これほど音楽に感動させられるとは

思っていなかった。

世界は、音楽に満ちている・・・という言葉が、

音楽を聴かずとも、

こう胸にストンと落ちてきたんです。

 

本作においては、

音楽が、ジンテの世界に満ちている事を、

しっかりと感じさせてくれるんですよね。

 

そして、イ・ビョンホン様が、

ジョハの心情を繊細に、

見事に演じていたのが、本当に素晴らしかった。

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母親を恨みながらも、甘えたいと思う心情

母親を守りたいという心情。

もう、これが、切ないし、健気なんですよね。

 

正直、暴力夫の元へ、幼い子供を残す心情は、

私には理解出来ないんですよね・・・・・

せめて、どっかの施設に

「子供を残してきたので引き取って下さい」

とか連絡シーンを入れたら良かったと思うんだけど・・・・

 

 ただね・・・DVを受けた人の心情って分からないし、

そういう選択をしてしまうほどの事なのかも知れない。

ジョハも、自分を捨てておきながら、

ジンテばかりを守ろうとする姿に、

悲しみや怒りの気持ちがあっただろうけど。

 でも、そうなんだよね。

根本的に悪いのは、母親ではなく、

そういう状況を作り出した父親なんだもの!!!

母親も被害者であって、

こういう風に責めてしまうのも、

被害者を更に傷つけてしまうんだな・・・と

ジョハの気持ちを考えながら、

私も反省した次第です。

 

イ・ビョンホン様は本当に素晴らしい演技だったと思う。

ついつい、パク・ジョンミン様の演技に目が行きそうだけど・・・。

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そして、この作品の良い所はね・・・・

悪い人がいないって事なんだよね。

始めに出てきた大家さんも、

悪い人と思わせておいて、

娘がジンテの家に居座る娘の行動を止めず、

自由にさせていたり。

母親が病気の事を唯一話していたり、

ジンテを面倒みる事になるジョハに、

仕事を与えようとしたり。

 

ガユルも、ガユルの母親も、

ジンテの才能をそのまま認めてくれる、

凄く器の大きい人だったなぁ・・・という。

 

そういう意味では、悪い人がほぼ皆無で・・・

まぁ、こう上手く行き過ぎるよな・・・という感じはあるけども。

 

兄と弟、

息子と、母親の関係に涙しつつ。

圧巻のピアノ演奏に、心を震わせられる秀作です。