image

 

君が描く光 / 韓国

2016年 Hulu 117分

2023年29本目 ☆☆☆☆

 

  ネタバレあらすじ

済州島の海女であるケチュンは、孫のヘジと仲良く暮らしていた。

ヘジの父親は死に、母親は行方知れず。

ある日、出掛けた街で、ヘジが行方不明になり、ケチュンは必死に探すけれど、

見つからないまま、無情にも12年の月日が流れた。

 12年大人になったヘジは、すさんで、貧しい暮らしをし、

仲間と一緒に詐欺まがいの事を行い、トラブルに巻き込まれる。

 その時、手にとった牛乳パックに、自分を探す広告が載せられていて・・・

image

 その済州島を、逃亡場所として選ぶのだった。

 

12年経過した今も、孫・ヘジは帰ってくると信じているケチュンは、

ヘジが見つかったという連絡に、大喜び。

image

再会したヘジに、「帰ってきたから、これでいい」と涙を流すが、

ヘジは、戸惑いの表情を見せる。

image

 12年前のあの日、町でスジを誘拐したのは、

実母だった。

そして、実母はヘジに、ケチュンばあちゃんは死んだと聞かされていた。

そして、実母も交通事故で死に、

継父が親権を放棄したため、施設で育ったとの事だった。

image

ケチュンとヘジの生活が、再び始まったが、

なかなかその生活に馴染めないヘジ。

昔から絵が得意だったヘジの才能を感じた、

美術の先生の指南によって、絵を本格的に描き始める。

image

image

少しづつ、済州島での生活に慣れ、

今まで感じた事のないような安らぎを得たヘジンだったが、

そこへ現れたのは、継父だった。

image

お金を工面するように言い、

また、一生に詐欺まがいの事をしていた仲間にも、

その居場所を知られてしまった。

image

ケチュンにその事を知られたくなし、

迷惑もかけたくない・・・と思ったヘジは、

済州島を離れようとします。

 ソウルの街で、仲間たちと揉めて、警察に連行されたヘジ。

そこにケチュンが迎えに来たが、

ヘジとケチュンが再会して時に提出された遺伝子結果が、

伝えられた。

ヘジと、ケチュンは、血縁関係がなかったのだ。

 

 実母と継父との間にヘジと同じ年の娘がいて、その名をウンジュ。

ヘジとウンジュは短い期間だったが仲良く暮らし、

ヘジはウンジュに済州島での生活を話して聞かせていた。

ある日、4人の乗った車が交通事故に巻き込まれ、

実母とウンジュが亡くなったのだ。

 しかし、継父は、実子が亡くなった方が、

保険金が支払われると思い、生き残ったウンジュに、

お前はヘジだと言いくるめ、

ウンジュは、以後、ヘジとして生きる事になったのだ。

 

ヘジはもうこの世にはいない事を知ったケチュンは、

再びひっそりと済州島で一人で暮らしはじめる。

 すっかり落ち込んでしまったケチュンを、ヘジの絵の先生が訪れ、

ヘジの描いた絵を置いていく。

image

 海の中、ケチュンとヘジ、ウンジュが描かれていた。

(ヘジと偽ったウンジュが描いたこの絵は、真実を告げる告白の意味を持つ)

 

1年後、ソウルでバイトをしながら絵を描いているウンジュは、

あれ以来、済州島には行っていない。

 そこへ、ケチュンの親戚が現れ、ケチュンがあの後、

施設へ自ら入ったが、ここ1週間ほど施設を抜け出して行方不明になっており、

ウンジュの元には来ていないか?と確認した。

 ウンジュは、ケチュンを探す。

ヘジが行方不明となったソウルの市場で、ケチュンを探し、

見つけ出したが、ケチュンは認知症が進んだ状況だった。

 ウンジュを見つめ、ヘジと勘違いし、

「もう、離れてはダメだよ・・・」と呟くのだった。

image 

再び、済州島で共に暮らし始めた2人。

ウンジュは、ケチュンの面倒を見ながら、絵を描いている。

image

ある日、ウンジュは、ケチュンのカセットテープを再生すると、
ケチュンの声が録音されていた。
そこには、「ケチュンが、ウンジュをヘジではないと
薄々感じ取っていたこと、知らないままが良かったと・・・
けれど信じるも何も、お前は私の孫だよ・・・。
私は海女として生き、お前は画家として生きるんだ。
辛い人生だったが、お前と合えて幸せだった。
でもお前を置いてはいけない・・」と語られていた。
涙するウジュン。
そして、ヘジとして偽った事は、間違いだったと謝罪するのだった。
image
image
その後、ケチュンは、病院でその時を迎えていた。
ウンジュが、傍で手を握る。
image
ケチュンは、しっかりとした意識の中で、
ウンジュの名を呼び、
「私は、もうヘジの元へ行かなくちゃ。幼いあの子を、
長く待たせてしまったからね・・お前は、幸せにならないとダメだよ。
孫として来てくれて、ありがとう」
そう言い残し、ケチュンは息を引き取った。
 
数年後、ウンジュは「ケチュンばあちゃん」という個展を開いていた。
済州島での、ケチュンとの日々が、色鮮やかに描かれていた。
 

  ネタバレ感想

間違いのないキャストで、

本当に、間違いなかったな・・・満足いく作品です。

 

キム・ゴウン様ユン・ヨジョン様と

演技はまぁ、申し分ない上に、

脚本が良かったし。

 117分、最後の1分まで中身のしっかりと詰まった感じだ。

 

不要な場面はほぼ無いし、一つ一つのシーンが、

物語に厚みを持たせる伏線になっているのだ。

 

口紅、クレヨン、オモチャのブレスレット、

日焼け止めクリーム、ラジカセ。

ケチュンとの海潜り。

 そして、空と海のどっちが大きい?という質問。

 

散りばめられた伏線は、意味をもってしっかりと回収され、

その一つ一つにシーンを印象付けることに成功している。

 

正直、映画を色々観ている人にとっては、

この流れを察知してしまうが。

察知してもなお、面白みが欠けるワケでもなく、

むしろ、その前提で観ると、それぞれの演技が身に沁みるのだ。

(なので、2度観ることをおススメしまう)

 

「空と海とどちらが広い?」と再会したヘジに、そう問いかけ、

昔ヘジが言った答えとは逆の答えを言った時の、

ケチュンの表情は秀逸だった。

 ヘジがヘジではないという疑惑を感じながら、

それでも、そうであると信じたい。

そんな心情が伝わってくるワケなんですよね・・・。

 そして、続く言葉は、たとえそうであっても、

孫として自分の所へ来た以上、守ってやりたいという

決意も感じさせらた。

image

つらい人生に疲れ果てても

味方が一人いれば

生きていけるもんだ

私が 味方になるから

思い通りに生きなさい

 

とにかく。

主人公2人名演が光る。

image

ゴウン様。特に、凄いと思ったのは、

初めて絵を褒められた時の、ウンジュ(左下)

「本当に、うまく描けてます?」と確認する所は、

痺れる演技でした。

 初めて、自分が認められた瞬間の、驚きと嬉しさと、

にわかに信じられない感じが、非常にうまかった・・・・!

image

ヨジョン様、目の演技が素晴らしかったです。

塗って貰った日焼けクリームのように、ウンジュの顔に絵の具を

塗るシーン、素敵でした。

ヘジンとの想い出ではなく、ウンジュとの想い出を、

しっかりと記憶に残しているんですよ・・・泣ける。

 

済州島の景色と、ウンジュの描く絵が、

とにかく優しくて、

すべての真実や苦しみを飲み込みます。

 家族でなくとも、愛は偉大で。

愛があるということ、味方がいるという事は、

何事にも代えがたいものだと感じさせてくれる秀作です。