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アンモナイトの目覚め / イギリス他

2021年4月公開 118分

2023年21本目 UNEXT ☆☆☆☆

実在した古生物学者のメアリー・アニングを題材にした作品

 

メアリー・アニングというお方は、

なんと12歳で、イクチオサウルスの全身化石を発見されて、その後も、幾つかの全身化石を発見した方だそうです。ただ時代が時代だけに、女性であったが為に、論文や本を出す事は許されず、歴史に埋もれてしまっていた人物だそうです。

 47歳で死去 生涯独身。

 

映画でも描かれているように、古生物学への大きな貢献があったにも関わらず、

相応な対価もなく、

発掘のために危険な崖を登ったり・・・

と身の危険にさらされながら、

極貧な生活を余儀なくされていたようです。

 

 

  ネタバレ簡単あらすじ

 そういう事で、メアリーは、毎日を発掘に捧げる生活をしておりました。

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母親は子供を10人産んで、8人亡くしており、

家はとても暗くて重苦しい雰囲気だ。

 

そんなある日、メアリーのもとへ、

化石を購入したいという男が現れ、

そのついでに、鬱になっている妻・シャーロットを療養のために、この町に置いていくので、様子を見て欲しいと頼まれる。

(シャーロットはどうも流産か何かで、鬱になったみたい)

 

 メアリーは仕方なく、

発掘作業にシャーロットを連れていくが、

極貧育ちのメアリーと、お嬢様のシャーロット。

相容れるはずもなく。

 

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しかし、シャーロットが熱を出して介抱したりするうちに、徐々に距離を縮めていき、互いに惹かれ合い、体を重ねるようになる。

 

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(海辺の2人は美しいです)

 

しかし、そんな蜜月はシャーロットの夫が迎えにきた事で、終わりを告げる。

 シャーロットがいなくなり、再びメアリーは、

孤独に発掘作業を続ける。

 

そんなある日、シャーロットが我が家に来て・・・と連絡が入り、

メアリーが豪華な家へ出向くと、

シャーロットは、メアリーにこう提案した。

 

「危険な発掘作業はやめて、ここに住んで!!

そして、研究をすればいいわ!

この部屋は私の部屋にも繋がっているのよ。

ずっと一緒にいれるわ!

夫?夫は、お陰様で化石に夢中だから大丈夫!!」

 

けれど、メアリーは不機嫌になり、

 

「私を閉じ込めるの??

私を金の鳥かごに閉じ込めるの⁈」

 

・・・と激怒し、家を飛び出した。

 

そして、自分の発掘した化石が展示されている大英博物館を訪れる。

自分が発掘した化石(手柄は別の男性になってる)を眺めるメアリー

そのショーケースに向こうには、

そのメアリーを見つめる

シャーロットがいたのだった。

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  ネタバレ感想

 この作品は、古生物学者のメアリー・アニングが題材になってますが、彼女がレズビアンであった事・シャーロットの関係などは、すべてフィクションのようです。

 なので、題材になっているとかは一切、クレジットで明記されてません。

 

始め、この作品は、

フェミニズム的なテーマが主軸なのかな・・・と

思っておりました。

 一生懸命危険をおかしながら、

化石を発掘しても、女性である自分の手柄にはならず、極貧な生活は変わらない・・・・。

 女性はこういう時代があり、徐々に、その名誉を得ていくのかな?と思っていたら、ドンドン話が違う方向へ行くので、ちょっと戸惑いました。

 

 けれど、最後まで観ると、

この作品のテーマは、

ともかく「自由」であるという事なんだと

理解しました。

 

メアリーの、性別を超えた愛の自由、

最後の場面で、

金の鳥かごに閉じ込めるの?と叫んだ怒りの言葉

 

それらが、ひたむきに危険をおかしてまで、

メアリーがのめり込む化石発掘という作業にリンクしていくワケです。

 

彼女は、閉じ込められた古生物を、

自由に解放してあげたかった。

そういう、メアリーの中にある、大きな軸が、

「自由」だったんじゃないのかな?と思います。

 

メアリーは自分の化石が別の人の手柄になっていても、それを、何とも思っていない感じがあります。

それは、メアリーが、そういう事を一切気にしていないからかも知れない。

逆に、メアリーは、自分が解放した化石が、

再びショーケースで保管されているのを良しと思っておらず、逆に、その中の化石と、

シャーロットの家に閉じ籠る自分を、

重ね合わせていたのかも知れない。

 

博物館で、数々の偉人たちの肖像画の前で、

メアリーの姿がピッタリと重なる場面がありますが重なっていても、メアリーは、その中にいるワケではありません。

 

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 そういう名誉の額縁を求めているワケではないメアリーの、自由への貪欲さが伝わってきました。

 

 最後のシーンから先は、

観客の手に委ねられます。

彼女たちが、今後、どうなっていくのか。

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 シャーロットの挑戦的で決意のある表情は、

2人で目の前のショーケースをたたき割るようにして、2人での自由を選ぶような気がしてます。

 

 メアリーにとっては、

フェミニズムも名誉も手柄も、

「自由」ではないんですよね。

 ただただ、すべてにおいて閉じ込められたくない・・・という

単純で明快な気性が、

彼女が没頭する発掘作業と重なっていきます。

 そんな無骨なテーマを、

ケイト・ウィンスレットが、

冷たく大胆に描いていて、

本人無自覚の、「自由」へのプライドが、

非常にうまく演じておられて、

さすが、ケイト・ウィンスレット!!

 

そして、そんなメアリーに惹かれていくシャーロットを、シアーシャ・ローナンが演じてます。

 病的な感じから、メアリーと親しくなる度に、自信に満ち溢れて表情になる。

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 そうすると、メアリーとは逆の性格が見えてくるのも面白い。

化石を発掘し解放させる事が大事で、

その化石の値段に意味を見出さないメアリーと、

その対価を求めるシャーロット。

 この2人の違いが、終盤に向けての伏線になっていくんですよね。

 

メアリー自身を尊敬し愛しているシャーロットが、

ケイト・ウィンスレットを敬愛するローナンとかぶりましたね。

 

 

2人のベッドシーンも、非常に無骨で荒々しくて、

私は好きでしたね。

お二人とも体張ってます。

 

ですが・・・・・

 

メアリーが「自由」を無自覚に貪欲に求める人だったからこそ。

 

どうしても、こういう選択肢しかなかったのか・・・と引っかかってしまうんですよね。

 

というのも、始めに書いたけれど、

実在のメアリーがレズビアンであったのか、

シャーロットとの関係がどうであったのかは、

全くの想像・全くの創作なワケです。

(実際、親族からのクレームもあったそうですが)

 

でも、実在の人物だからこそ、化石発掘と自由のリンクが、見事に浮彫にされているし、

ケイト・ウィンスレットとローナンだからこそ、

この関係性が見事に描かれていたとも思うし、

あの時代でも、同性愛に躊躇しない所もメアリーらしいと思うし。

 

確かに、こういう設定だからこそ、

秀作に仕上がっているのかな・・・とも思うので、

難しいな~・・・と。

 

まぁ、でも、メアリーの事だから、

自分の終わった人生は、自由にどっかに飛んでいってるから、気にしてなさそう(笑)

 

歴史上に、こんな女性がおられた事を知れて、

良かったです。

そして、

様々のものからの解放の必要性を感じる中で、

それもまた、「自由」ではないという事。

何となく、「自由」たるものの基本を感じさせてくれる秀作でした。