【洋画】ミナリ ネタバレ感想 | ROUTE8787 サンサクキロク

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ミナリ

2020年 アメリカ ☆☆☆

2023年映画8本目 NETFLIX

1980年代、農業で成功することを夢みる韓国系移民のジェイコブは、アメリカはアーカンソー州の高原に、家族と共に引っ越してきた。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを見た妻のモニカは、いつまでも心は少年の夫の冒険に危険な匂いを感じるが、しっかり者の長女アンと心臓に病を持つが好奇心旺盛な弟のデビッドは、新しい土地に希望を見つけていく。まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、デビッドと一風変わった絆を結ぶ。だが、水が干上がり、作物は売れず、追い詰められた一家に、思いもしない事態が立ち上がる──。

 

A24とプランBのコラボになり、

がっちりアメリカ配給なのに、

ほぼ全編韓国語という、異色な作品です。

 

アメリカに渡り、

広い農場を夢見ているジェイコブ。

その夢にシッカリ乗り切れず、現実を観続け、

ジェイコブへの反発を繰り返すモニカ。

 2人の関係は、互いの言い分の応酬に疲弊し、

ギリギリのところまで来てしまっていた。

 

古びたトレーラー、熱い日差しと、枯渇する畑

そこは広い土地で、夢みたアメリカなのに。

韓国の古びた半地下の生活を

思い起こさせる映像が、秀逸だった。

 

広いのに、その狭い空間で、

失敗出来ないというプレッシャーに日々、追い込まれていくジェイコブを、

スティーブン・ユアンは、見事に演じきっていた。

子供と戯れていても、冗談を言っても、

その瞳の奥にたたえているのは、焦りと、先の見えない絶望だった。

 気を抜けば、一瞬でこの身も、

この家族も、夢も、

すべて持っていかれてしまう、ギリギリの所で、彼はぐっと耐え、闘っているのだ。

 

それを眺めるモニカは、

その苦しみの淵に立つ夫を、きっと救い上げたかったんだと思う。

現実を見ず、夢を追う夫に嫌気がさしている・・・それだけの想いだけではなく、

夢を追い、それしかないと他のものが見えず、

足掻いている夫を、

楽な道へ導きたかったに違いない。

 

炎がすべてを焼き尽くそうとした時、

モニカは自分の危険を顧みず、夫の作った野菜を、守ろうとした。

 それが全てだな・・・と思う。

そのモニカを、

ジェイコブは力の限りに抱きしめる。

 とても、印象に残るシーンだった。

 

炎がすべてを焼き尽くし、

けれど、ジェイコブの表情は穏やかだった。

 義母の植えたミナリを眺める姿は、

以前の、ジェイコブのものとは違っていた。

ミナリのように、どこでも、生きていける。

ワンダフルミナリ。

 力の抜けたジェイコブを、モニカはそっと支えていくだろう。

 

デイビットと祖母の関係も面白かったけど、

私は、この夫婦の絆に、目を奪われた作品だった。

 夫婦の関係は単純ではなく、

批判・反発するから、愛がないワケではない。

 愛があるからこそ、守りたいからこそ、

反発し合うのかも知れない。

 

異国の地で勝負するという事は、

大きな博打みたいなもん。

こんな風に、夢と現実の間で、

国境を越えてきた多くの人が、

愛を凌駕するほどの苦悩や反発と向き合ってきたのかも知れない。