すばらしき世界
2020年 日本 2021年30本目 

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あらすじ

  下町で暮らす短気な性格の三上(役所広司)は、強面の外見とは裏腹に、困っている人を放っておけない優しい一面も持っていた。過去に殺人を犯し、人生のほとんどを刑務所の中で過ごしてきた彼は、何とかまっとうに生きようともがき苦しむ。そんな三上に目をつけた、テレビマンの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は、彼に取り入って彼をネタにしようと考えていた。

キャスト

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三上正夫(役所広司)

 人生の大半を、塀の中で過ごす。短気であり、感情のまま行動にうつすが。

正義感も強い。

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津野田さん(仲野太賀)

 テレビマン。三上の身分帳を読み、彼を取材することになる

 

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松本さん(六角精児) 

 スーパーの店員さんで、三上に親身になる。

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井口さん(北村有起哉)

役所の人。三上に親身になる。

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庄司さん(橋爪功)

 身寄りのない三上の身元引受人

ネタバレあらすじ

 

人生の大半を、獄中で過ごしてきた三上。

13年の刑期を終えた。

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今度こど、まっとうに生きようと心に決める。

三上は、生き別れた母親を探す番組で取り扱って欲しいと、

自分の身分帳をテレビ局に送っていた。

 興味を持った津野田と、吉澤(長澤まさみ)は、彼の取材を開始する。

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しかし、世の中は、もと反社には冷たかった。

失効してしまった免許を取ろうとするが、なかなかうまくいかない。

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社会に受け入れられない悔しさや、焦りから、

反社の知り合いの組長の元へ、連絡を入れてしまう。

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運よく?ガサ入れがあり、組長の妻から、逃げるように言われる。

三上は、心を入れ替え、介護職の職業につく。

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 そんな中、持病ある三上は、

発作で倒れてしまう。

 

感想

 役所広司は、まぁ、間違いがない。

間違いはないが、ちょっと、桁がはずれてるな・・・・と思うほど、凄い。

 正義感が強く、まっすぐ。

けれど、感情的で、一度沸点に達すると、コントロールがきかない。

 純粋で素朴な部分と、狂気と怒りの部分を、

見事に共存させ、その結果、すべてを含めて、

魅了されてしまう。

 だからこそ、彼に魅了され手助けしようする人たちに、

共感出来るのだ。

 

 キャスト含め、すべてに無駄のない、

無骨さと繊細を持ち合わせた秀逸な作品である。

 

 三上の行動を追う内に、私たちは、大きな疑問を抱える事になる。

果たして、すばらしき世界とは?

 三上は、同僚が虐められている姿を見ても、

見ないフリをし、影でからかわれても、

見事に話を合わせた。

 それが、すばらしき世界なのだろうかと。

 

スーパーの松本さんは、働くうえで、三上にアドバイスをする。

目をつぶること。

しかし、そういった事は、三上のピュアな部分を奪うことになる。

 そういった世界が、すばらしき世界なのだろうかと。

 

 それでも、三上は、最後に美しく素晴らしいものを見て、

ヤクザではない、普通の人として、死ぬことが出来た。

 手に握ったコスモスを見て、

彼は確かに、すばらしき世界にいる事が出来たと、

感じた事だろう。

 嵐の前にコスモスを避難させた彼。

その美しい花を、三上に分けてくれた。

 彼にとって、それが、すばらしい世界であったのだ。

 

これほど、主人公の死が、自然に受け入れられる作品があっただろうか。

こういっては何だけど、

このまま生きていても、三上がこの世界に順応していくのも、

彼に苦痛をもたらすし、

順応せず元の世界へ戻っていくにしても、

苦痛である。

 そう感じさせられる困難さも、また、三上のリアルでもある。

 だからこそ、このタイミングでの死を受け入れられてしまうのかも知れない。

 そう思ってしまうほど、この世は世知辛く、

このタイトルに込められた皮肉を、感じ取るのだ。

 

印象的なシーン

 

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「カメラを回さないなら、喧嘩をとめろ。

そうじゃないなら、回せ。

お前みたいな半端者が一番誰も救えない」

 

 

三上がチンピラと喧嘩を初めてしまい、怖くなって逃げだした津野田を、

古澤は一喝する。

 痺れましたね・・・・。

長澤まさみ、爪痕残したね!

 

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「シャバは我慢の連続ですよ。

だけどね、シャバの人間は広いお空の下で生きられるから・・・・」

 

組長の奥さんが、三上さんに、東京に変えれという場面。

 

この言葉が最後のシーンで、しっかりと思い出されます。

三上と懇意にしていた人たちが、

彼の死に、失意の中、空を見上げる。

 彼は確かに、この広い空の下にいたのだと。