1970年代、サウスボストン。アイリッシュ・マフィアのボスとして同地一帯を牛耳るジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー(ジョニー・デップ)に、FBI捜査官のジョン・コナリー(ジョエル・エドガートン)が接触を図ってくる。彼はFBIと手を組んでイタリア系マフィアを駆逐しようとホワイティに持ち掛け、密約を交わすことに成功。両者の連携によってイタリア系マフィアの勢力は弱まるが、その一方でホワイティは絶大な権力を持つようになる。
ジョニー・デップがそれほど好きではない。
彼の作品選びが、どーにも好きではない。
特に、ここ数年の彼は、演技というよりは、キャラクターのようで。
どれもこれも、ジョニー・デップというキャラクターが演じているようだった。
人を小馬鹿にしてようなキャラクターばかりで、観るのも失せておった所、
久しぶりに、まともな人間の役をするのか・・・と気になっていた。
まともな人間では無かったけれど、久しぶりに、唸る演技を見せてくれた。
私は、昔、マフィアものに一時はまりまして、
あらゆる作品を観てきたかれど、「アンタッチャブル」のアル・カポネを演じたデニーロ様が、最高のマフィアだと思っていた。
今回のジミーを演じたジョニー・デップは、本当に、背筋が凍るような怖さのある、
マフィアを演じて,デニーロ様に張り合う怖さ。
静かな冷酷さと、狂気染みた愛情。
子供を巡っての奥さん(恋人?)との口論。
彼女の手を握りながら、「何を言った?」と冷たく問い詰める。
ステーキソースのレシピについて問い詰める場面。
ジョンの妻の部屋に行き、彼女の頬に触れる場面。
そんな恐怖におののくシーンが、これでもか・・・と描かれていく。
もういいです・・・・もう、十分です。
・・とこちらが、白旗をあげたくなってくるような、恐怖の連続。
けれど、いかんせん、それだけなのが、この映画の勿体ないところ。
マフィアのボスの恐怖だけが描かれ、その人間性や、
ジミー、その友人のFBI捜査官ジョン、そしてジミーの弟の関係性が、
イマイチ、よく分からない。
3人にある「絆」を感じさせる場面がなく、ジミーの恐怖以外の魅力が描かれているワケではないので、その関係性が浮き彫りにされず、
一体何の絆が、3人に存在したのか分からないままなのだ。
逆を言えば、それが真実なのかも知れないとも思う。
人間性などと、甘い部分など、彼には存在しなかった。
そう考えると、ジョンもまた絆などではなく、自分の利益のために、
ジミーを利用し続け、弟は、ひたすらに兄弟という「血」に呪われていたということになる。
もし、その辺りまで描かれていたら・・・・と、
やはり、冷酷な悪をひたすらに描く中にも、人間の弱さや感情を求めてしまう。
いずれにせよ、そういった感情を排除した作品であるが故、
ジョニー・デップ以外の俳優さんが非常に勿体なく感じる。
カンパーバッチにしろ、ジョエル・エドガートンにしろ、ケヴィン・ベーコンにしろ、
もっと出来る子なのよ!!と叫びたくなった(笑)
あとは、マフィアとして上り詰める割に、その疾走感がないというか・・・。
こじんまりとしているというか。
疾走感も、失速感もなく・・という感じ。
まぁ、実話ということなので、実際はそんなものかも知れない。
実話だからこそ、もう少し、その人物像や関係性を、
観たかったかな。
特に、同じように育ちながら、兄と弟で、どうしてこうも、
道が違ってしまったのか。
実話の表面では見られない部分を掘り下げて知る事が出来る。
これが実話映画の醍醐味だと個人的には思うので、
そういう意味からいうと、この作品は、不十分だったかも知れない。
けれど、それ以上に、ジョニー・デップの演技に、魂を持っていかれたので、
文句は言うまい。
ちなみに、日本で1番怖いやくざは、
今のところ、「凶悪」のピエール瀧様です。