<ネタバレ>くちびるに歌を  ☆☆☆ | ROUTE8787 サンサクキロク

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好きなものを好きなだけ。
韓ドラ狂騒キロク
映画と音楽とドラマがあればいい

 原作は、未読。
でも、小説の方の評価が良いのを知っていて、
読む予定にしていたのに、図書館の順番が回ってきたときには、
読む時間がなくて、予約をキャンセル。
映画よりは、先に読了しておきたい気持ちがあったが、
 
映画の評価が高かったことと、
五島が舞台であり、その景色を堪能したい・・・とレンタルしてみた。


産休を取ることになった親友の音楽教師ハルコ(木村文乃)の代理として、生まれ故郷の五島列島にある中学の臨時教師となった柏木(新垣結衣)。天賦の才能を持つピアニストとして活躍したうわさのある美女だが、その性格はがさつで乗り回す車もボロいトラック。住民たちの注目を浴びる中、彼女はコンクール出場を目標に日々奮闘している合唱部の顧問に。そして部員たちに、課題として15年後の自分に宛てた手紙を書かせる。やがて、部員たちがつづった手紙から、それぞれが抱える苦悩や秘密が浮き上がってくるが……。  


 とても、良い仕上がりに、満足出来る作品。
特に、中学生のキャストがよく、
五島の素晴らしい風景に、決して見劣りしない、清らかで美しい青春の輝きを、
見せてもらった。
 大きな事件が起きるのでもなく、
日常の中の、合唱部に焦点をあてた作品でありながら、
これほどまでに、大きな輝きを放つ映画は、そうはないと思う。

 子供たちが抱える暗い問題も、
静かに丁寧に描かれていて、
大袈裟感がなく、好印象をうける。


 五島の景色の美しさ、中学生の純粋で一生懸命頑張る姿、
素敵な音楽の中にあって、

やはり、ガッキーの役不足感は否めない。
 ガッキーが子供たちに影響を受けていく過程も分からなければ、
子供たちが、この臨時教師に何の影響を受けたのか、分からない。
 ガッキー自身が、この役に迷いがあるまま臨んだかのような、
戸惑い・不安を抱えた演技が、最後まで続いた印象を受ける。

 なので、冒頭、この先生が私の人生に大きな影響を与えたという言葉が、
そのまま、宙ぶらりんのまま、臨時教師は去っていくのである。
 一体、この先生の何に、影響を受けたのか?
あのピアノ演奏だけでは、全く、不十分。
もっと台詞をいれるなり、表情なりでの説明が必要になる。
 
臨時教師の心の変化が曖昧だから、
「逃げるな!」とか、
「あれ、やるしかないんじゃないの?」とか
「笑って。そして、ほがらかに」とか、


いきなり、どないしたん??と、びっくりというか、
そこだけ、人格変わられても、こっちが、こっぱずかしいわ~となる。
 中学生の行動をみて、こっぱずかしくなるのとは、
ちょっと、違う。

「逃げるな。あなたが、それを教えてくれたんでしょ」という台詞も、

え・・・・そうだったの???みたいな(笑)


 終始抑え過ぎた演技のせいで、その存在感は、ガッキーファンでない私には、
皆無に等しく、
 木村文乃とか桐谷健太のが、田舎教師の良さを発揮し、存在感を出していたように思う。

ラスト30分間は、ありがちな、「やり過ぎ感」満載で、危惧したが、
父親に2度捨てられた少女と、同じ合唱部の少年の、兄(自閉症)との、
船の汽笛を巡るエピソードに、救われた。
 救われたけれど・・・・。

 最後のホールでのみんなでの大合唱は、やはり「やり過ぎ感」が残る。
そもそも、理解のない父親が、自閉症の兄を連れて、
高速船のって、長崎市内まで来るとは思えないんだよね。
 ここに生まれる「わざとらしさ」

そして、ガッキーを見送る生徒達。
「笑って」の言葉で、ガッキーのこれまた、演じ方わかりません・・・的な表情で終了。
 ここは、もっと、笑っていいのになぁ・・・・と思う。
すべてをさらけだして、自分は、再び、歩きはじめるんだ!!

それでこそ、この映画のメッセージではないのか?と。

船の汽笛「ボー」2回は、出発の音。
前進あるのみ。

 気持ちを切り替えて、進んでいく。
臨時教師も、気持ちを切り替えて、前進していくのだから、
中途半端な笑顔ではなく、ぞれこそ、全身で、そのメッセージを私の脳裏に、
焼き付けて欲しかった。

 気になる・・といえば、
終始、自閉症の兄を持つ少年のエピソードは、納得がいかない。
 兄の送り迎えをさせ、部活に入るのを許さない父。
いやいや、そういう父親はいるとは思う。
 そして、それを、「部活やりたいんでしょう」と少年に加勢する母。
うんうん、母はそーゆーもんだ。
・・・と思ったが。

「お兄ちゃんのお迎えは、私が行くから。部活したいんでしょ」と母
「ごめんなさい」と少年。
「そういう時はね、ありがとうでいいのよ」

いや、違うでしょ。
そこ、違うと思う。
 家族として、自閉症の兄を支えていくのは、大切なことだと思う。
でも、この両親は、完全に、弟に依存しすぎだし、求めすぎだと思う。
 家族も生きていくのに必死・・という状況なら、そんな事言っておれん・・・かも知れないが、木村多江演じる母親からは、そんな空気感はないし。
 弟にそこまで依存する必要性を感じない。
 
 この少年が書いた手紙には、
「自分の生きる意味は、兄のお世話をするためだ。そのために、両親は自分を生んだ。
だから、自分は、兄に感謝しなくちゃならない」と書く。
 ここは、全身全霊で、否定してあげないといけない所なんじゃないのか?

思春期にありがちの、ネガティブ思考の1ツで、そう思ってしまうだけ・・・
あなたの両親は、それだけのために、生んだワケじゃないのよ~!!!

・・・って言いたいのに。
この両親だと、本当に、そうかも知れない・・と思う。
それでも、そうであったとしても、少年には、それを強く否定する存在が必要だったのに。
 そこを、完全にスルー。
この少年が、この先ずっと、自分は「兄のために生まれ、生きていく」と思い、
前進していくのか・・・と思うと、ゾッとする。


 全体的に、上質な仕上がりだけど、ちょっとした違和感を紐解いてしまうと、
なんとなく、後味の悪い映画になってしまう・・・不思議な作品。
 五島と中学生、そして、中学生が歌う歌声の美しさに、
隠れてしまった大人の姑息さやずるさ。
 そして、それを、完全にスルーしてしまっている罪な映画かも知れない。 
  
 


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