少年H ☆☆☆☆ | ROUTE8787 サンサクキロク

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水谷豊って・・・・
こんなに、いい演技をする人やったんですね(←失礼)


 相棒とか、観ていないので、
水谷豊って、どんなもんだろうかと思っていたが、
いやはや、何とも、素晴らしい演技を見せつけて頂いた。

 ちなみに、伊藤蘭さまも、素晴らしかった。

空爆があり、街がすべて焼けてしまった後の、
水谷豊演じる、少年Hの父親の、演技は、格別だった。

 すべてが一瞬にして失われた喪失感と、虚無感。
息子と再会しても、笑顔はない。
 「一体、この戦争は何なのだ?」という、疑問。

 音もなく、台詞もない、あの場面の、
水谷豊の眼光が、すべてを表現していた。
 
 さて、物語は、妹尾河童実話を映画化したもの。
昭和初期の神戸が舞台。
 紳士服の仕立て屋の父親と、クリスチャンの母親と、妹と暮らしている。
軍国化していく日本の姿と、その変化に巻き込まれていく人々を、
少年H(肇のH)の目を通して、描かれていく。

 戦争映画・・・という括りよりは、まさにヒューマンドラマである。
戦争映画特有の暗さはなく、時折、ぷぷぷ・・・と笑ってしまう場面も多い。

 戦争と、終戦の劇的な変化に、戸惑いをみせる少年H。
軍国主義であった人間が、終戦になれば、全く別物になっていた。
そんな光景を、少年は「ワカメのようだ」と表現する。

 上手に環境の変化に、順応していく人間もあれば、
父親のように、その変化についていけず、虚無感に苛まれる人間。
 それが、戦争直後の姿を、描いているんだな・・・と思った。

 父親は、日本が、軍国主義へと傾倒していく状況の中、
息子に、
「目立ったことはせず、じっと、この世界に何があるか見ているんだ」という。
「すべてが終わった時、恥じる人間になってはならない」とも言う。
 
その言葉に、家族を守ろうという父親の、気持ちが伝わってきた。

あの時代、確かに、戦争にすべてを賭けていた人もいたに違いないが、
父親であった人々にとって、
やはり、守るべきは、家族であったと思う。
 こんな風に、声を潜めて、
「今は、目立つことはするな。我慢の時」と家族にそう呟いた父親・母親は多かったんじゃないかな・・・と思った。

 少年Hの父親は、あのような時代であっても、冷静であった。
正義感だけでは、立ち行かない事もあるということを知っていた。
 上手に賢く、この時代を生きていくことも大切であるが、
間違ったことはしてはならない・・・と子どもに教えた。
 しかしながら、父親自身も自分に言い聞かせていたように思う。
理不尽であっても、そういう時代を受け入れていくしかない・・・
 そんな戸惑いも、非常にリアルだった。

ただ、そんな風に、上手に生きながらも、
信念を守り抜く大切さも伝えている。
 あの状況であっても、クリスチャンである妻に、教会通いを止めようとはしない。
「異宗教を邪教と呼ぶなら、あんたの神も、他の宗教からしたら、
邪教になるんとちゃうか?」と優しく妻を諭す。
 どんな時も、冷静な目で、物事を考える姿勢に、
学ぶべきことがある。

 この父親の存在感は、圧巻だ。
少年Hの少年らしい、素直で純粋な、濁りのない目でみた光景は、
この父親に育てられたからだと、合点がいく。

 父親の表情一つ一つ、言葉一つ一つが、
ストンと心に落ちていくようである。


「これからの時代は、あんたらやで。
よく物事を見ておくんや」

 混沌とする福島原発問題。
56年振りに沸く、東京オリンピック。

状況は違えど、
あらゆる理不尽さ や、喪失感
喜びや、盛り上がる興奮
 様々な情報と その信憑性

 などが、錯綜している世の中。
そんな中でも、
冷静に、物事を見るのだ・・・・

 そんな風に、感じたのも、事実である。




 しかし、ホント、水谷豊良かったな・・・・
いっきに、ファンになってしもた。
   
あと、子役も良かったねー。少年Hも良かったけど、
妹の良子ちゃんも、良かったし。

 ちょい役だったけど、濱田岳が出てた。
彼は、何だか、存在感あるね~。
 

 とにもかくにも、良い映画だったなー。

まるで、
この父親が、仕立てた服にアイロンをかけていくかのように。

丁寧に、
まっすぐに、
じっくりと。

 そんな風にして作られた、秀作である。

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