たんたん短歌115「生きる」
2024年6月9日(日)放送分の「NHK短歌」におけるお題(テーマ)は「嫉妬」だった。
たしかに人は生きている間に、自分より恵まれた暮らしをしている者に対して羨む気持ちを、あるいは、そうした者が為す能天気な振る舞いに対して怒りの感情を持つことがある。
ちなみに、ブログ主も今から十年以上前に、このテーマをもって、次のような作品を制作していた。今回はそれを紹介しよう。
職無くて「お休みですか?」と問われるも休んで生きてる者なぞいない
(歌集「君はパパの子」17ページ)
平日の自宅にサービスマンがやってきた。そして、気の利いた話題も思い付かない挙句に、「今日はお休みですか(=休暇を取ったのですか)?」なぞと言いだす。
私は(いやいや、私は無職なので、毎日が休日)と返そうかとも思ったが、ばかばかしいのでやめた。
ちなみに、私が会社勤めをしていた頃を思い返してみると、会社員は凡そ人生の日々について、それを営業日か、それとも休暇を取った日かの二者択一で認識しているような気がする。
ただし、それは人に使われている者の思い込みである。もちろん、彼ら以外の人々はそれぞれの人生において別の生き方をしている。
例えば、学生のうちは様々な勉学にいそしみ、多様な芸術やスポーツを経験する。また、子どもを産む母親の、育てる主婦(や主夫)の日々の営みは、仕事と比較することのできない神聖な労働である。
そして、若者が社会活動に、あるいは、退職後のご高齢が地域ボランティアに汗を流している姿は、金稼ぎとは無縁の崇高なものであろう。「勤務していない」のは「休んでいる」のでは無い。
なお、週に五、六日の重労働を強いられている会社員であれば、残りの一日を休むどころか死んだように眠ることに費やすのも仕方が無いことだ。
ただし、もしも彼らが休暇を取って一日中寝てばかりでは無く、家族と一緒にお出掛けしてみれば、配偶者や子供たちはそれを決して「休み」とは思っていないことに気が付くだろう。家族たちはその日一日を無駄にしないように、精一杯明るく楽しく元気よく過ごしている。
人であれば、それぞれの人生の日々を、家族や親戚と、学校の友人と、職場の同僚たちと、地域の住民やサークル仲間とともに過ごすであろう。そして、勉学に、スポーツに、勤労に、趣味に、そして、芸術や社会活動に、一生懸命生きている。
「休んで」生きている者なぞ、決してどこにもいないのだ。
(2013.3.6)
もえたたん「皆さん、こんにちは」
ゆうたたん「こんにちは。今回紹介する歌は何ですか?」
も「 Bruce Springsteen 「 Dancing in the Dark 」(1984)」
ゆ「それでは次回もたんたんと」