「む」

その後も俺の右手は開かなかった。

医者は見放し
親は諦め
周りは気の毒がった。

「ストレッチして伸ばさないと
筋肉や筋が衰えて
一生開かなくなります。
神経も退化してしまうでしょう」

医者というものはあてにならないんだなと思った。
それまでは病気をしたら
何でもお医者さんが直してくれるものと信じていた。
今で言う西洋医学を信じて疑わなかった。

しかしそうではないこともあるんだと知らされた。

言われた通り
筋を伸ばすことは続けていたが
一向に回復せず
但し握力だけは以前に増して強くなったように感じた。
実際に強かった。
この拳で何人もぶっ飛ばした。
俗にいうグレタ。
喧嘩ばかりしていた。

そのうち俺に近づくものはいなくなった。