「ケンちゃん、私、結婚するわ」

いつもの部屋に3人。
向かい合った女が開口一番切り出す。

「そうか、おめでとう」

グラスの水を口に含む。

「彼も2度目なんだけどね。
とってもいい人なの。
子供のことも気にしないっていってくれたし」

「そうか、良かったな」

少し間を置いて続ける。

「あなたの側を離れたくないって気持ちもあるのよ
でも娘のとこを考えたら
また新しい人生を送らなきゃとも思うの」

「そうだな、良いんじゃないか」

バッグから取り出したハンカチで目を押さえる。

「今までありがとう。本当に感謝しているわ。
本当に・・・」

優しく微笑む。

「いいんだよ。おめでとう。
それじゃ一美の幸せに乾杯だな。
真島君?」

「はい」

冷蔵庫から
冷えたスパークリングワインが出てくる。

「さあ、乾杯」
「ありがとう・・・」

むせぶような小さな声でこたえる。
グラスがなる。





「じゃあこれからのことは真島君と相談してな。
オレは明日からでかけるから。
きっと幸せになるんだぜ」
「はい、、ありがとう」
「またな」

立ち上がり
右手を差し出す。
最後の握手をしたとき
女が少し震えた。