学校での生活はあっという間に過ぎていった。
呪術の術式の試験はまだいいが、吸血鬼並の身体能力を持つ祐希が組手の訓練で本気を出したらやばいとおもっていたので、何かと理由をつけて見学していた。
「ったく、こんな弱ぇの相手じゃ、訓練にならねぇよ。」
どこからか、そんな声が聞こえてきた。
気になった祐希は、そっちに意識を向けた。
殴られていたのはグレンで、殴ったのは五士典人という名の男子だった。
金色にブリーチされた髪に、軽薄そうな垂れ目。
同じクラスの五士家から来たエリートだ。
先程の五士の言った言葉を受け、取り巻きの生徒達が一斉に笑う。
「むしろ殴った手が汚れて困りますよねぇ。」
「先生に言った方がいいんじゃないですか?こんな奴と同じクラスでいたら、全員の士気が落ちて困るんですがって。」
五士がうなずいて言う。
「ああ、そりゃいいな。弱いやつがエリートばっかりのこのクラスに紛れてんのがそもそもおかしいしな。」
そして、それをグレンは上半身だけ起こして、五士を見ていた。
"なぁ、祐希。あの人たちってエリートとか言ってるけど、実は大したことないんじゃないのか?"
"まぁ、そうだろうね。誰一人、一ノ瀬グレンが本気を出してないのを見抜けてないし。"
最近、藤堂が家を開けるときが多いので、夜桜を持ち歩いてるのだ。
"だよね。でも、さすがは祐希。あなたは気づいたじゃん。"
"ふふ、ありがとう。でも夜桜、油断はしちゃダメよ。周りの人たちは置いといて、さっき一ノ瀬グレンを殴った五士って人と今その人と口げんかしてる十条美十って子は少しはやるみたいよ。"
"そうみたいだな。でも、祐希にかなう人なんてほとんどいないから、安心しなよ。"
すると、いきなり後ろから深夜が話しかけてきた。
「やぁ~、やっぱりグレンが気になる?あ、好きになっちゃったとか。力のないか弱い男の子を守ってあげたくなっちゃったとか?」
祐希は深夜を無視して、立ち上がった。
「おっと、そっけないなぁ~。もしかして図星だった?」
「そんなわけないでしょ。」
「やっと口きいてくれた。僕もグレンのこと気になってるよ。あ、別にそっち系の話じゃないから安心して。」
「あなたの話はどうでもいいわ。別にグレンのことを気にしてたわけじゃない。もう話しかけてこないでくれるかしら。」
もうこの話はこれでおしまいとでも言うかのように、祐希は歩くスピードを上げた。
「またまたぁ、ずっと見てたくせに。でも、グレンもさすがだね。殴られ方がうまい。」
その言葉に祐希は足を止める。
「あなたも気づいてたの?」
「まぁ、あまり確信していなかったけどね。五分五分かな?君もそうだと思ってるのなら八割くらいまで、確率が上がるかな~。神代家のお嬢さん?」
「言ったわよね?その名前を出したら殺すって。」
「お~怖い怖い。じゃあ僕はグレンの方に行ってこようかな。君は引き続きサボってなよ。」
そう言って、深夜はグレンたちのいる方へ走って行った。
"祐希、あの柊深夜って子、気をつけた方がいいね。"
"ええ、わかってるわ、夜桜。"
これからは、深夜のペースにならないよう祐希は決意したのだった。
