前回に引き続き、考察というほどでもないのですが、POWER OF LOVEプロジェクトからの繋がりが感じられる'Darl+ingや4th Album 'Face the Sun'の内容について、まとめておきます。

 

 今回は、SEVENTEENの 'Darl+ing'や'Face the Sun'のトレーラーなどが、映画『マトリックス』をオマージュしているように見える…という話です。

  このように感じた人は私以外にもたくさんいらっしゃると思うのですが、では、なぜ『マトリックス』をオマージュしているのか?という点を、今までの考察と繋げながら考えていきたいと思います。

 

 この記事は本当に箇条書きのメモ的なものなのですが、皆さんがSEVENTEENの作品を楽しむ際にその意味を考えるきっかけになる、ひとつのアイディアになればいいなと思います☺

 

 SEVENTEEN 4th Albim 'Face the Sun' Trailer: 13 Inner Shadowsのディエイト。衣装や小道具がかなり映画『マトリックス(the Matrix)』っぽいです。

 

 

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《映画『マトリックス』三部作の設定》

 ※少しですがグロテスクな部分もあるので苦手な方は再生をお勧めしません。

 

 まず、『マトリックス』を観たことがない方もいらっしゃると思いますので、この映画で描かれている世界の基本設定を説明します。以下、映画一作目~三作目のネタバレを含みます

 
 『マトリックス』は、ラリー・ウォシャウスキーとアンディ・ウォシャウスキー監督による、アメリカのSFアクション映画です。主演はキアヌ・リーヴス。第一作目は1999年に公開されました。SEVENTEENの作品との関連を考える上で大事な基本設定は以下の通り。
 

●21世紀末、人類と機械(人工知能を持つロボット)との戦争が起こった。

 機械のエネルギー源は太陽光だったため、人類は機械に勝つために人工の雲で空を覆い、太陽を隠す

 しかし、戦争は機械の勝利に終わる。太陽は隠れたままなので、機械は太陽光の代わりに人体からエネルギーを得ることを思いつき、それ以来人間を「栽培」するようになった。
 
●栽培されている人間は、プラグに繋がれ、一生眠って過ごす。戦争が起こる前の平和な世界の夢を強制的に見せられており、それを現実だと思い込んで、現実世界のことは一切知らずに生きている。その仮想現実(夢の中の世界)のことを、「マトリックス」と呼ぶ。
 
●現実世界には、戦争の際に生き残った人類の子孫などが集まり、プラグに繋がれずに生きている街がひとつだけある。
 この人間たちは、機械による支配を終わらせたいと考え、日々機械たちに攻撃を仕掛けている。
 リーダー格のモーフィアスは、栽培されている人間を、機械にばれないように夢から覚まし、少しずつ仲間に加えている。
 
 以上が、映画『マトリックス』の世界観です。
 次に、SEVENTEENの'Face the Sun'と特に関わりの強い設定や展開を、箇条書きで挙げていきます。
 
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《Face the Sunと特に関係のある設定や展開》
(1)太陽☀
 先述の通り、太陽の隠された世界の物語であり、三部作のラストは、太陽を見つめる場面
 
 →まさにface the sun。
 
(2)夢から覚めるというテーマ
 主人公のネオは機械に栽培され、マトリックスの中の人生を現実だと思っていたが、徐々に違和感を覚え、モーフィアスたちと出会って現実を知る。
 
 →・Darl+ingの、ネバーランドが虚構の世界であることに気づく展開。
    ・13 Inner Shadows エスクプス White Night
 

 

 

 

(3)電気プラグ🔌
 栽培されている人類の体にはプラグがささっている。マトリックスから目を覚ますためにはそれを引き抜く必要がある。
 
→・Darl+ingのプラグ(下の画像は、Darl+ing MVよりスクリーンショット)
 ・13 Inner Shadows ディノ
 
 

 

 

(4) Control
 マトリックスとは何か、モーフィアスがネオに説明する際、 "Matrix is control(マトリックスは支配だ)"と言う。
 
 →Face the Sun ep.1 のタイトルがControl。衣装や髪型も少しネオに似ている。

 

 

(5)公衆電話を取ると現実世界へ移動☎
 ネオたちはマトリックスに侵入しマトリックスの中から機械への攻撃を繰り返す。その際、マトリックスから現実世界に帰るためには公衆電話等のコールに出る必要がある。
 
→13 Inner Shadows ジョシュア Missed Call

 ジョシュアの公衆電話のガラスにhtml(ウェブサイト作成のためのプログラム言語)がびっしり書いてあるのも、緑色のコンピューター言語がびっしり書いてあるマトリックスの有名なイメージと重なる(画像は上の動画より)。

 
 
(6)黒ずくめの衣装🕶
 映画『マトリックス』と言えば、主人公たちの黒いサングラスと黒ずくめの衣装。ネオはマトリックス内ではサングラスを掛け、黒いロングコートを着ている。
 
 →・13 Inner Shadows ディエイトの衣装がネオとそっくり。
   ・Face the Sun ep.1 Controlの衣装は二作目のネオに似ている。

 

 
(7)テレビとソファー📺💺
 モーフィアスがネオにマトリックスについて説明する場面の空間には、上の画像のような古いテレビと一人がけのソファーがある(画像は下記サイトより引用)。
→13 Inner Shadows ディエイト(先ほどの動画よりスクリーンショット)。
テレビとソファーが映画のものと似ている。
 
(8) 救世主
 モーフィアスは「救世主が現れてマトリックスから人類を救う」という預言を信じており、ネオを救世主だと考えている。
 
→13 Inner Shadows ホシ “The Savior(救世主)”
 映画では“The one”と呼ばれているが、人類を救う救世主である(日本語字幕は救世主)
※届かない手紙というモチーフについては、去年のPower of loveから引き継がれ、パンデミック以降のSVTの心境を表していると思われる。ウジのトレーラーもOde to youからの苦悩を思わせる。

 

 

 
(9) 飛行船のクルー⛵☁️
 モーフィアスらは飛行船のパイロットやクルーとして、チームを組んで行動している。
 
→2021年からのプロジェクトを予告していたと思われる2020年には飛行船のクルーを演じるMY MYのMVが公開され、2021年のプロジェクトでは比喩的に飛行チームの仲間たちというイメージが表現されていた。

 

 こちらのRock with youのパフォーマンスでは、背景に飛行機が置いてあります。

 

(10) ウイルスと戦う
ネオたちを付け狙うエージェント・スミスは自己複製を繰り返し蔓延するコンピューターウイルスである。
→パンデミックと重ねている。
 
(11)抜け出すのと留まるのどちらが幸せか🕊
 目覚めた人間の中には、マトリックスの中に居続けた方が幸せだったと考える者も居る。
マトリックスの中では、支配されていることなど知らず、明るい太陽の下、美味しいご飯を食べ、普通の暮らしをしていた。だが、マトリックスから目覚めた今は、暗い世界でまずい食糧を食べ、預言通り救世主が現れる保証もない中、命懸けの戦いをしている。
 
→13 Inner Shadows ジョンハンとバーノン
選択は対照的だが、どちらも「誰かに支配された狭くて安全な世界(鳥籠や金魚鉢)と、自由だが危険もある世界(空や海)どちらを選ぶか」という問いかけに見える。
 ちなみに映画には、鍵束を持った「キーメーカー」という人物や、「翼のない天使」と呼ばれる「セラフ」という人物も登場します🗝👼

 

 

 

 

(12) 殻を破って新しい人生へ🦋
 栽培されている人間は、ぬるぬるとした卵型の透明な膜に包まれて眠っている。ネオはその膜を破り、現実の世界を初めて目にした。
 
→13 Inner Shadows ジュン
 羽化するように薄緑の半透明のビニールを破る。殻を破って、それまでと違う第二の人生を歩み始めることの比喩では。

 

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《まとめ:SEVENTEENにとっての仮想現実》
 上述の通り、'Face the Sun'のトレーラーや、'Face the Sun'から先行配信された'Darl+ing'には、映画『マトリックス』との重なりが感じられます。
 
 そして、その重なりの理由は、単に格好良いから、名作だからオマージュしたということではなくて、いま、SEVENTEENが作品を通して伝えたいことを表すのに『マトリックス』の物語が適していたから、ではないかと思います。
 
 『マトリックス』は、少し古い映画ではありますが、当時大きな反響を呼んだ世界的に有名な作品であり、2021年には久しぶりに新作も公開されました。
 SEVENTEENは、『マトリックス』を表現することをゴールとしているのではなく、「メタバース」という言葉もなかった時代に仮想現実を描いて映画史にその名前を刻んだ作品『マトリックス』のイメージを引用することで、その作品の内容をファンに思い出させ、自分たちが伝えたいメッセージのヒントを与えているのだと思います。
 
 『マトリックス』の物語をものすごく簡単に要約すると、「仮想現実を抜け出し、厳しい現実と向き合い、太陽を取り戻す」です。
 
 これは、SEVENTEENが、終わらせられなかった'Ode to you'の記憶に囚われながら、映像作品の中でOde to youを続行し、映像の裏にある孤独や不安や葛藤を隠して笑顔や頼もしい姿をオンライン上で見せ続けていたこれまでの状況を抜け出し、光も影もある現実の世界で新たな挑戦を始めるという今の状況にぴったりだと思います。
 
 柔らかい曲調の'Darl+ing'と暗く重苦しい'Face the Sun'のTrailerは雰囲気が異なっているようにも見えますが、どこからでもアクセス可能な仮想現実というモチーフは、ピーター・パン原作(『ピーター・パンとウェンディ』)で世界中の子どもたちの夢と繋がっているネバーランドともよく似ています。
 
 つまり、マトリックスとネバーランドは、どちらも、「平和な虚構の世界」を表すために用いられた引喩であると考えられます。そして、その中に留まるのではなく、そこから抜け出すこと。これが、今、SEVENTEENが伝えたい彼らの物語なのではないでしょうか。
 
 ぜひ、ネバーランドとスペインについてまとめた前回の記事と合わせて読んでいただけたらと思います。 


 また、もし興味がございましたら、POWER OF LOVE考察とも照らし合わせてみてください。私には、全てが繋がって、ひとつの大きな物語になっているように感じられます。


 以上、'Face the Sun'から映画『マトリックス』の雰囲気が漂っているのはなぜか?というメモでした。ここまで読んでいただきありがとうございました!