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今回は、前回に引き続き、

SEVENTEENの

POWER OF LOVEプロジェクトにおける

ジョシュアの役について

書いていきます。

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("Le Petit Prince" [Saint-Exupery, Editions Gallimard, 1946]と『戦う操縦士』[サン=テグジュペリ著、堀口大学訳、新潮社、昭和45年].)

 

※この記事はこちらの記事の続きです。

 

※考察をはじめから読むにはこちらをご覧ください。

 

 前回は、ジョシュアがPOWER OF LOVEプロジェクトにおいて『星の王子さま』の「転轍手」と「ヘビ」を表現している可能性について書きました。そのほか、ジョシュアは以下の二つの役も担っていると考えられます。

 

・・・★・・・★・・・★・・・

 

《デュテルトル観測中尉

([画像1] SEVENTEEN 9th Mini Album 'Attacca' Op.3 Concept Photo. サン=テグジュペリ役と考えられる金髪のエスクプス。その右隣にジョシュア。左隣は僚友ギヨメ役と考えられるドギョム。画像引用元は記事末尾に掲載)

 

 考察Part7では、『星の王子さま』や『人間の土地』の著者であるサン=テグジュペリが、彼が所属した飛行大隊の仲間たちを心から愛していたという話をしました。そのうちの一人がデュテルトルです。

 

 デュテルトルは、サン=テグジュペリが戦時下の実体験を綴った『戦う操縦士』に、サン=テグジュペリと行動を共にする準主役のような立ち位置で登場します。

 

 私がジョシュアがデュテルトルだと考える理由は以下の通りです(以下、『戦う操縦士』からの引用は、すべて光文社・鈴木雅生訳・2018年の電子書籍版から行います)。

 

①「左右」「進む方向」に関わる人物である

(SEVENTEEN 'Left & Right'MVよりスクリーンショット。MVは後ほど引用)

 

 『戦う操縦士』において、サン=テグジュペリは操縦士、デュテルトルは観測員として同じ飛行機に乗り込みます(もう一人、機銃員も一緒に乗りますがこちらは名前が出て来ません。デュテルトルの方が明らかに親しい人物として描かれています)。

 

 操縦士と観測員は飛行機の別々の部分に乗るため、飛行中は互いの姿を見ることはできず、声のみでやり取りをします。観測員は操縦席よりも視野の広い席につき、飛行機が正しい針路から逸れているようならそれを修正するよう操縦士に指示する役目を持っています。

 

 そのため、観測員デュテルトルと操縦士サン=テグジュペリの会話には、

 

●「デュテルトル……コンパス上での針路……大丈夫か?」

 「駄目です。かなりずれてます。右に針路を

 

●「大尉、少し左に踏み込んでください……」

 

●「大尉、針路を南に。高度を下げるのはフランス領空内の方がいいと思われます」

 

●「大尉、ジグザグ飛行を!」

  (中略)右をぐっと踏み込んで、左をぐっと踏み込んで、こうやって砲弾をかわす。小さい頃はよく木から落ちてこぶをつくったものだ。

 

●「大尉、左から猛烈な攻撃! 斜め方向へ!」

 

 など、右左や方向に関する言葉が非常に多く含まれています。

 

 これは、方向や方位を示すたくさんの標識や右・左・空へといった歌詞が登場する'Left & Right'のイメージとうまく重なっているように思えます。

 ※ちなみにデュテルトルの台詞には「針路」という言葉もよく登場しますが、‘Left & Right’と同じ7th Mini Album ‘Heng:garae’に収録されている‘Together’には「コンパス」という言葉が印象的に登場します。

 

(SEVENTEEN 'Left & Right'MVよりスクリーンショット。MVは後ほど引用)

 

 さらに、‘Left & Right’の中でも特にジョシュアとデュテルトルが重なっているように思える理由は、英語版の『戦う操縦士』では作品タイトルにもなっているアラスという都市の上を飛ぶ重要な場面における以下の台詞にあります。

 

 「完了! 上昇してください!

 

 デュテルトルはそれまでほとんどの場面で「右か左か」の水平方向の動きを指示しているのですが、この最も重要な場面では、上に行くよう指示するのです。少し長めに引用してみましょう。

 

完了! 上昇してください!」デュテルトルだ。私はもう一度、雲までの距離を目測し、機首を上げる。もう一度、機体を左に、そして右に傾ける。もう一度、地上を一瞥する。この光景を忘れることはないだろう。

 

 サン=テグジュペリにデュテルトルが上へ行けと指示するこの場面は、'Left & Right'のエスクプス(サン=テグジュペリ)とジョシュアの関係を思い起こさせます。

 

 'Left &Right'ではジョシュアは車に同乗していませんが、先ほど書いたように観測員と操縦士は飛行機の別々の部屋におり、操縦士は観測員の指示を受けながら一人で操縦を行います。「方向の指示を出す者」と「その指示を聞いて操縦する者」というイメージで考えれば、'Left & Right'の二人の関係とよく似ていると思います。

(SEVENTEEN 'Left & Right'MVよりスクリーンショット。MVは後ほど引用)

 

 引用した台詞からもわかるように、サン=テグジュペリは大尉、デュテルトルは中尉で、サン=テグジュペリの方が組織の中での立場は上です。しかし、飛行中の二人は、観測員が目、操縦士が胴体であるかのように一心同体となって飛行機を動かしており、対等な関係にあるように感じられます。

 

 さらに、

「大尉、歌なんか歌ってると……意識を失っちまいますよ……」

私は歌など歌っていたのか?

デュテルトルのやつめ、おかげでちょっと音楽でもという気分どころじゃなくなる。

 というやりとりがあったり、デュテルトルのやや無茶な指示にサン=テグジュペリが内心むきになりながら従ったりと、デュテルトルの方が立場が上に見える場面さえあります。

 後に引用する別の場面からもわかるのですが、二人は友人のような関係にあったのだと思います。

 

 観測員は、広い視野で操縦士を支え、操縦士が道を見失いそうになった時には声を出して軌道を修正します。操縦桿を握っているのは操縦士ですが、彼は観測員の目と言葉を信じて舵を取っているのであり、二人の間には厚い信頼関係が成り立っています。

 

 この関係は、SEVENTEENの長男でありリーダーであるエスクプスと、その彼を同年齢のメンバーとして、そして対等な友人として支えるジョシュアによく合っているように思えます。

 

 

 前回の記事では、ジョシュアが『星の王子さま』の転轍手ではないかという話をしました。

 『星の王子さま』の転轍手と『戦う操縦士』の観測員は全く別の人物ですが、「乗り物の進む方向を決める者」や「針」というイメージでは重なり合っており(転轍手はフランス語の原文ではl’aigulleurで、aigulleは針。観測員は羅針盤で針路を指示する人)、右左に言及する台詞があるという点でも共通しています。

 ※'Attacca'リリースの告知があった2021年9月22日とその翌週のGOING SEVENTEEN'Tribal Games'は、ラクダ、トラ、ゾウ、草を食べるかという質問、箱の中身を当てる、水をどこかに隠しているなど、私には『星の王子さま』関連の言葉やモチーフでいっぱいに見えるのですが、ゲームの中に「針」も出てきましたよね。

 

 POWER OF LOVEにおいては、これら二人の人物のイメージが混ざり合い、ジョシュアという一人の人物によって表現されているのではないかと思います。
 

SEVENTEEN 'Left & Right' Official MV

 

GOING SEVENTEEN Ep.23 Tribal Games #1

GOING SEVENTEEN Ep.23 Tribal Games #2

 

②学生時代に戻って教室で遊ぶ夢

 観測員デュテルトルが活躍する『戦う操縦士』は、『星の王子さま』や『人間の土地』に比べると知名度の低い作品かと思います。そのため、最初は、この作品は関係無いかな…と思っていました。

 私が「もしかして、この作品も関係ある?」と思い始めた理由は、GOING SEVENTEENにあります。

 

 戦う操縦士』は、飛行大隊の隊員たちが学生だった16歳の頃に戻って、教室でコンパスや黒板を使って勉強したり、ゲームや手品をして戯れたりしている夢想から始まるのです。

 

 これは、SEVENTEENが高校生に戻って休み時間を満喫したGOING SEVENTEENの'Best Friends'の設定に似てはいないでしょうか。

 

GOING SEVENTEEN 2021 EP.31 ‘Best Friends’

 

 この回が配信されたのは'Attacca'の活動が終わった11月でしたが、オンラインコンサート'Power of Love'の開催時期と重なっており、プロジェクトの最後を飾った日本シングル'あいのちから'のリリース前なので、POWER OF LOVEプロジェクトが活発に行われていた時期と言えます。

 

 アイドルがバラエティ企画で学生服を着るということはよくあることではありますが、単に学生服を着ているというだけでなく、年齢が若返っているという設定があり、それを本人たちが自覚しながらドラマのように始まるところに、『戦う操縦士』との重なりを感じます。

 

 本当に高校の同級生になったかのように笑い合うメンバーたちの姿が微笑ましく、次々と飛び出すユーモアたっぷりの反則技には笑ってしまいましたが、『戦う操縦士』も、想像の中のそんなあたたかな日常の光景から始まります。

 

 デュテルトルが通りかかる。私は呼び止める。

「そこに座りなよ、カードで手品してやるから……」

そして私はデュテルトルの選んだスペードのエースを当てて悦に入る。

 デュテルトルは私の前の黒い机に腰かけて脚をぶらぶらさせながら、笑い声を上げる。

 

 しかし、ここで二人はこの寄宿学校の舎監らしき人に呼び出されます。そして、そこで学生時代の夢は終わり、舞台は戦時下の現実へと移ります。彼らはもはや寄宿学校の生徒ではありません。彼らを呼び出したのは軍の隊長で、二人はアラス上空へと向かう危険な偵察飛行を任じられるのでした。

 

 

 仲間たちとの楽しい学生時代の夢想から、敵軍からの攻撃に耐え燃え盛る街の上を飛ぶ現実の描写へと移って行く『戦う操縦士』。

 この作品に登場するサン=テグジュペリの相棒デュテルトルは、 1920~40年代の軍人やパイロット風の衣装に身を包み、金網越しに真っ赤な夕日(か炎)を見つめているように見える'Attacca'Op.3のジョシュアのイメージと重なるように思えます。

 

 前回の記事では、ヘビを演じるジョシュアが、「当時フランスと敵対していた国の操縦士で、サン=テグジュペリ作品の愛読者でもあった人物」のイメージも含んでいる可能性について触れましたが、『戦う操縦士』には、「敵機」が毒を吐くコブラに喩えられている箇所もあります。

 

 サン=テグジュペリの相棒の飛行機乗りであるデュテルトルと、彼と敵対する飛行機乗りとを一人の人物(ジョシュア)が演じるのは、生まれる時代や場所が違えば相棒になり得た存在、あるいは、自分がそちら側だったかもしれない「鏡に映した自分自身」のような存在としての敵対者のイメージを表現するためではないかと私は思っています。

 

 相手側からすればサン=テグジュペリたちが「敵」ですし、当時のどちら側の人々も、そのほとんどは、戦うことを望んではいなかったと思います。戦争が無ければ、どの国の飛行機乗りも、軍の命令に従って飛ぶ戦闘機や偵察機の操縦士ではなく、夢を胸に抱いた旅人や心のこもった手紙を乗せて、あるいはただ空を愛するがゆえに空を駆ける飛行士でいられたはずです。

 実際、サン=テグジュペリが愛した飛行大隊の仲間たちは、戦争前は郵便飛行などの分野で活躍した仲間たちでした。Op.3のセピア色の古い写真のようなコンセプトフォトには、荒れた倉庫のような部屋やメンバーの表情から、どこか悲しい時代の雰囲気が漂っているように感じられます。

 

 一方、'Attacca'のタイトル曲である'Rock with you'からは、全体的に明るいエネルギーが感じられます。

 先に公開されたコンセプトフォトのイメージから、もう少し暗めの曲を予想していたファンの方も多いのではないでしょうか。リリース日にわくわくしながらMVを再生すると、想像より爽やかで楽しそうな彼らの姿が待っていました。ロックテイストを取り入れた力強い曲で、儚さや切なさを感じる部分もありますが、メンバーの笑顔やどこまでも広がる美しい空からは前向きなメッセージが伝わってくるように思います。

 そして、MVやパフォーマンスには、シャツにネクタイ、その上から作業着を羽織ったような衣装が見られます。この衣装は、現代の飛行士や整備士の雰囲気を漂わせているように思えます。

 映像にも歌詞にも飛行機は出て来ません。実際に職業がパイロットであるというよりは「ともに羽ばたく者」「愛の言葉を届けるために世界中を飛び回る仲間」という比喩的な「飛行士」のイメージなのでしょう。しかし、下のブルーの作業着のような衣装は航空会社のドラマなどでよく見かけるものに近いですし、MVではヘリポートで踊っている場面で着用していますよね。

 

 

 MVにはバイクが登場し、TVでは車が置かれていたこともありましたが、このステージには旅客機と空港の掲示板が置かれていました。私はこの旅客機こそ本命だと思うのですが、"ride"や"Hold on"と歌いながら、何に乗っているのかはっきり口にせず、わざとはぐらかしているような印象です。車はLeft&Rightの「ロケット」のイメージかなと思います。 

 

 このように、MVやTVでの'Rock with you'のパフォーマンスを見ると、POWER OF LOVEがメインテーマとして描いているのはOp.3の時代ではなく、今度こそ自由に飛び回り、一緒に幸せになろうと誓う現代なのだという気がします(「生まれ変わって現代で再び巡り合う」という話題については、後日、ジュンの記事に詳しく書きたいと思います)。

 

 ジョシュアに話を戻しますと、‘Rock with you’には、ジョシュアとジョンハンが背中合わせにくるくると入れ替わる振り付けがあります。

 

 まだ記事にしていませんがジョンハンの役は「王子さま(の心を取り戻した「ぼく」であり、サン=テグジュペリ)の生まれ変わり」と考えられますので、彼とジョシュアがくるくると回るこの振り付けは、やはり、「王子さまとヘビ」や、「サン=テグジュペリと敵対国の飛行士」が反転可能な存在であることを表現しているのではないかと思います。    

 また、二人が笑顔で踊っていることから、同じ夢や情熱を持つ彼らが現代では何者にも引き裂かれず、同じ未来を見つめる仲間になったという明るいメッセージが感じられるように思います。

 

SEVENTEEN 'Rock with you' Official MV

 

 以上、途中だいぶ話が逸れてしまいましたが、私がPOWER OF LOVEのジョシュアが「デュテルトル観測中尉」のイメージも表現しているのではないかと思う理由でした。

 

 次の人物に移りましょう!

 

《うぬぼれ男》

 最後に、ジョシュア…というか、ジョシュアが主役となったGOING SEVENTEENが『星の王子さま』の「うぬぼれ男」を表現しているのではないか?というお話をしたいと思います。ここからはぜひ気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

 

("Le Petit Prince" [Saint-Exupery, Editions Gallimard, 1946]より、「うぬぼれ男」の挿絵)
 

 『星の王子さま』では、王子さまは故郷の小惑星を発ち、宇宙を漂って六つの小惑星を巡ります。そして、それぞれの星に住む六人の「大人」に出会います。

 

(1) 自分以外の者は皆自分の家来だと思っている「王さま」

(2) 誰もが自分に感心していると思っている「うぬぼれ男」

(3) 酒を飲むのをやめられない「呑み助」

(4) お金を数えてばかりいる「実業屋」

(5) 街灯に明かりを灯し続ける「点燈夫」

(6) 自分では海や川を一つも見たことのない「地理学者」

 

 (5)を除いて、どの人物も「大切なものを見失っている大人」を風刺的に描いたものなのですが、2020~2021年のGOING SEVENTEENには、時折これらの人物がこっそりと顔を出していたのではないかと思います。

 せっかくなので、ジョシュア演じる「うぬぼれ男」だけでなく、他の人物についても書いていきます。

 

(1) 王さま⇒エレベーター係のようなDK

GOING SEVENTEEN 2020 EP.9 'Don't lie III'

 

 ‘Don't Lie III’はちょうど‘Left & Right’がリリースされた時期に配信されました。内容はマフィアゲームですが、気になるのは場所と衣装です。

 本編の予告やルール説明の後、メンバーはエレベーターに乗って登場します。また、DKの衣装がエレベーター係のように見えます。

 

 DKはミュージカル『エクスカリバー』に出演し、アーサー王を演じたことで知られています。そのことを踏まえると、Don't Lie IIIでは王がエレベーター係の格好をしていると言えます。これは、『星の王子さま』を原作としたある映画を思い起こさせはしないでしょうか。

 

 SEVENTEENが2015年に試写会に出席した映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』です(※以下、この映画のネタバレを含みます)。

 

 この映画では、『星の王子さま』に登場する「大人」たちが会社員や警察官などの社会人として都会で暮らしているパラレルワールドのような世界が描かれます。そして、その世界では、「王さま」は、王冠ではなく帽子を被り、エレベーター係の仕事をしているのです!

 

 ちなみに'Attacca'のHighlight Medleyに登場する「レコード盤」や'あいのちから'のMVに登場する「青い蝶」や「紙飛行機」を見ても、SEVENTEENのPOWER OF LOVEプロジェクトは、『星の王子さま』の原作小説だけでなくこの映画からかなり影響を受けているように感じられます。デビューした年の冬に、おそらく初めて試写会というものに招待され、メンバー全員で観た映画ですから、メンバーやスタッフにとってとても印象深かったのではないかと思います。

 

(2) うぬぼれ男⇒シルクハットを被ったジョシュア

GOING SEVENTEEN 2020 EP.39 'CARNIVAL'

 

 企画や冗談が尽く滑った「失敗コンテンツ」であると宣言することでかえって絶妙な面白さを獲得しているこちらの回ですが、考察上まず注目すべきはジョシュアのシルクハットです。

 『星の王子さま』の「うぬぼれ男」は、シルクハットを被っています。

 

("Le Petit Prince" [Saint-Exupery, Editions Gallimard, 1946])

 

 次に注目したいのは、この回に、メンバー一人一人に称賛の言葉を贈るコーナーがあることです。メンバーからメンバーへ、あたたかい言葉がたくさん贈られたとても素敵なコーナーでしたが、なぜ突然この回に称賛コーナーが設けられたのかは不明です。

 

 しかし、これが『星の王子さま』の「うぬぼれ男」を暗示する回なのだとすれば、納得できます。

 なぜなら、『星の王子さま』の「うぬぼれ男」は、称賛の言葉をかけられるのが大好きで、それ以外の言葉には耳を貸さないという特徴を持っているからです。彼がシルクハットを被っているのも、称賛の言葉や拍手を受けた時に帽子を上げて挨拶するためです。

 

 シルクハットだけなら偶然ということも十分あり得ますが、「シルクハット×誉め言葉」という組み合わせが、なんだかとてもあやしいと思います(CARNIVALというタイトルと車にも何か意味が隠されていそうですが、残念ながら私にはまだ解読できておりません)。

 

 この回は、2020年の11月23日に配信されました。'HOME;RUN'のリリースからは一か月ほど経っていますが、年末年始の授賞式や音楽番組で'Left & Right'や'HOME;RUN'を披露する機会はまだ残っておりますし、1月にはPOWER OF LOVEを読み解く鍵となるオンラインコンサート'IN-COMPLETE'も控えていますので、『星の王子さま』コンセプトを仄めかすヒントが含まれていてもおかしくない時期だと思います

 ※GOING SEVENTEENは一年中どの企画も常に作品と関連付けられているわけではなく、カムバック期やコンサートの時期に合わせて、様々な楽しい企画の中にちょっと「新作のスポ」や「作品読解のヒント」を含ませているのかなと思います。

 
 個人的に、歌やダンスに関してはどちらかというと最初からずば抜けた力があったというよりは謙虚な努力家でどんんどん魅力的になっていったという印象のあるジョシュアですが、自分の顔立ちについては自信満々な発言を度々しており、その言い方に嫌味がなく素直でかわいらしいなと感じます(誰かと比べて優位に立とうとしたり他人を貶したりするのでなければ、何かに自信があって、自分の好きなところを素直に口にできるって素敵なことだと思うので…)
 六つの惑星のそれぞれの住人たちは基本的に人間の「だめな部分」を風刺したものなので「良い役」とは言えないのですが、普段のメンバーの特徴を活かして楽しみながら配役を決め、冗談めかして演じているのかなという気がします。
 
 ちなみに映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』では、この大人たちは恐ろしい悪役のように描かれています。しかし、小説を読むと、極悪人というよりは、誰もが少しは持っている部分、人間の悲しくて情けない部分を滑稽に描いたものという印象が強く、私はなんだか憎み切れません。
 DKが表現していると思われる「王さま」も、自分以外の者を皆家来だと思っていて命令ばかりしたがる人ですが、相手が実行できない命令は絶対にしない、そういう命令をした場合は命じた自分が悪いのだと考える人のよいところがあるんですよね(ちなみに王さまの星にはネズミが一匹住んでおり、王さまは王子さまに、このネズミを裁き、死刑を宣告し、特赦してやる権限を与えようとします。マウスバスターズの回、もしかして…と思ったりもします)。
 

(3) 呑み助

GOING SEVENTEEN 2021 EP.20 'Dive into TTT #3 Water Sports Ver.'

 これはちょっと自信が無いのですが、「呑み助」をあえて挙げるならこのあたりの全員かなと思います。SEVENTEENがお酒を飲む回は他にもありますが、上記の公式ツイートで「アルコール」が強調されているからです(ビールの広告が含まれている回だからという事情もあるかと思いますが)。2021年9月の回です。'Attacca'のトレーラーなどの公開は9月末から始まりました。

 

(4)実業屋⇒ギャツビーとバーノン

GOING SEVENTEEN 2021 EP26. 'Catch Stock'

 

 'Attacca(Rock with you')'でのカムバックが近づいた10月の回です。考察Part3のキツネの話題の際にも引用しましたが、今回注目したいのは、この回のメンバーのスーツ姿が上記の公式ツイートで「グレート・ギャツビーの撮影現場のよう」と表現されていることです。

 

 “The Great Gatsby”はアメリカの作家F. Scott Fitzgeraldの小説で、映画や舞台にもなっています(日本での知名度はいまひとつかもしれないのですが、アメリカの高校などでは教科書に載っていることもあるそうで、日本でいうと国語の教科書に載っている夏目漱石の「こころ」のような感じかなと思います。整髪料などのギャツビーシリーズはこの映画から名前をとっています)。ギャツビーは主人公の名前で、1920年代の大富豪という設定です。

 

 ‘Catch Stock’は株取引ゲームの回なのでメンバーをギャツビーに喩えるのはわからなくはないのですが、現代的なスーツはギャツビー風ではありませんし、大富豪というイメージだけならほかの人物でもよかったように思えます。

 

 さらに、“The Great Gatsby”は'Catch Stock'のみならず、その前の'Tribal Games'の回にも登場しています。‘Attacca’リリースのちょうど1ヶ月前の回で、カムバックの予告があった重要な回です(この日にディノがTwitterで『星の王子さま』の像と並んだ写真を投稿してもいます)。この回では、映画のタイトルを当てるジェスチャーゲームのお題のひとつとして、ギャツビーが登場しました。

 

 その際、ミンギュがこの映画が'HOME;RUN'のコンセプトだったことも明かしています。

 確かにIN-COMPLETEのHOME;RUNの始まりは扉の模様がまさにそれでしたし(下に引用したサムネイル画像参照)、衣装や小道具にはジャズが流行した時代の雰囲気やギャツビーのパーティーのイメージが表現されていました。

 

 

 2021年のSEVENTEENに、ギャツビーの影が三度もちらつくのは、いったいなぜなのでしょう?

 

 私は、この答えはバーノンと『星の王子さま』の「実業屋」にあると思っています。

 

 毎晩華やかなパーティーを開く大富豪ジェイ・ギャツビーは、貧しい農家の息子であったジェイムズ・ギャッツが、名前を変え、手段を選ばずに成り上がって手に入れた理想の姿です。

 彼は初登場の場面で、一人静かに庭に立ち、星空に向かって両腕を伸ばしています。また、私が特に好きな月夜の場面では、彼は天に続く梯子を想像し、星の音叉が打たれるのに耳を澄ませます。

 

 星や月に手を伸ばす、悲しい大富豪のイメージ。これは、バーノンが2021年11月23日にリリースしたBANDS BOYの内容と重なっているように感じられます。この曲には、仮想通貨などのお金を積み上げ、星に手を伸ばし月を目指すという歌詞があります。

 

 また、BANDS BOYには'Catch me if you can'という言葉も登場します。これは映画好きのバーノンが映画'Catch Me If You Can'に掛けて書いたものでは?と私は思っていますが、この映画にもTo the moonという、月に関連した印象的な台詞があります(慣用句として日本語字幕版では「前途洋々」と訳されています)。※以下、この映画のネタバレを含みます。

 

 また、嘘でお金を手に入れ、しかし、本当に欲しいものは手に入れられないという点でも、この映画の主人公はギャツビーと共通しています(ちなみに、この映画の主人公は17歳にして天才詐欺師となり様々な職業の人物になりすますのですが、その中で最初になりすまし、後半のクライマックスでもなりすましているのはパイロットです。空のジェームズ・ボンドという記事で新聞に載りボンドと同じスーツと車を買う場面もあり、007との繋がりもあります)。

 

 そして、考察上興味深いのは、'Catch Me If You Can'も'the Great Gatsby'も、レオナルド・ディカプリオ主演の映画だということです。

 

 バーノンはメンバーやファンからディカプリオに似ていると言われることがありますので、そのイメージをあえて利用してこれらの映画を暗示し、『星の王子さま』の実業屋のイメージに繋げようとしているのかなという気がします

 ※考察からは話がそれますが…気心の知れたメンバーからそう呼ばれている場面を見ると不快そうには見えないので安心していますが、個人的には、「ディカプリオ似だね」というのは安易に言い過ぎるのはよくないのかなと感じることがあります。眉と目の角度など単純に造形的にわからなくもないですし、言う側にとっては「ハンサムだね」という意味なのもわかるのですが。バーノンはバーノンなので、別の芸能人に喩えられることや、容姿にアメリカ人の特徴も含まれていることばかりに注目されることは、本人にとって嬉しいことばかりではないかもしれないなとふと思うことがあります。もちろん、姿かたち、お母さんがアメリカ人であること、アメリカで過ごした時間があること、英語を話すことなどは彼の大切な一部ですから、それを無視するというのも逆に失礼な話です。ただ、「ハーフ」「外国人風」など、誉め言葉のつもりで使われがちな言葉は(そもそもなぜそれが「誉め言葉」になるのかという問題もあります)、本人が自認する自分と合っていなかったり、自然なことなのに「よそ者」や「珍しいもの」として見られている、あるいは外見的な特徴だけで一括りにされているという印象を与えてしまったりして、相手を傷つけることもあります。同じような境遇の人々でも感じ方はそれぞれなので「嬉しい」「何とも感じない」という人もいますが相手がどう感じるかわからない初対面の人などを突然そう呼ぶのは避けるべきだし、友だちやファンとしてプラスの意味でそのような言葉を使いたくなった時にも、その人の性格やその人と自分の関係性、場、文脈などをよく考えてから使うべきだなあと日々感じます。本人が見てほしいと思っている特徴だったり、好きな俳優だったりで、言われたらとっても嬉しい、という場合にはもちろん言ってよいと思うのですが。本当に、言う必要がある場面か、言ったらその相手はどう思うかによりますよね。また、「ハーフ」という言葉自体、半分という意味に聞こえて失礼だという考えもあり、ちょっとここには書き切れない複雑な問題です。

 

 『星の王子さま』の実業屋は、空に輝く五億もの星を全て自分の資産だと考え、くわえた煙草に火をつける暇もないほど星を数えることに夢中になっています。何十年も机に向かって勘定を続け、その財産を使うこともなく、ただ数えるのに忙しくしている彼の姿は、なんだかとても虚しく、寂しくも見えます。

 2020~2021年のSEVENTEENに、“The Great Gatsby”や“Catch Me If You Can”を通して「星や月に手を伸ばす悲しい大富豪」の影がつきまとうのは、この人物を表すためではないでしょうか。

 

 「実業屋」が消えた煙草をくわえていることと、バーノンがこのプロジェクトで演じていると思われる別の役「機関士プレヴォ」が煙草に火をつける人であることが対比的になっているのもかえって疑わしいですし(ここにも「反転可能」のテーマ)、BANDS BOY冒頭の“Always counting”という歌詞も、かなりあやしいと思っています。

  ※プロジェクトの一部としてではなく、ソロ作品としてのBANDS BOYの歌詞の意味についてはこちらの記事にまとめてあります。もし興味がございましたらご覧ください。

 

 

(5)点燈夫

 こちらの人物に関しては、後日ホシの記事に書きたいと思います!

 

(6)地理学者

GOING SEVENTEEN 2021 EP.7 'Treasure Island:13 Raiders #1'

 

 こちらは2021年6月、'Your Choice (Ready to love)'のリリース直前の時期に配信されました。メンバーが探検家のように無人島を歩き、破れた地図を拾って完成させながら宝探しをします。

 おそらく、これは、『星の王子さま』の「地理学者」そのものではなく、「地理学者」が語る「探検家」を表したものではないかと思います。

 「地理学者」は、初対面の王子さまに向かって、「ほう!探検家だな!」と声を掛け、自分と「探検家」との関係や違いについて語ります(『星の王子さま』、サン=テグジュペリ著、内藤濯訳、岩波文庫、2021年)。

 

 「地理学者」は、地理に関する大きな書物を何冊も書いているのですが、自分の目でそれらの土地を確かめたことはなく、探検家から得た情報を書き記しているだけです。しかも、自分の興味のあることだけ。彼は自分の星に海や山があるかどうかも知りません。自分はとても大切な仕事をしているので、歩き回っている暇など無いと言います。

 

 上記のGOING SEVENTEENの「地図を完成させていく探検家」は、王子さまが訪れた六番目の星を描いたこの章のイメージをわずかに匂わせているように感じられます。

 

 

 王子さまはこの六つの星を巡った後、とうとう地球にやってきます。そして、キツネや「ぼく」と出会い心を通わせるわけですが、このあたりは、'Attacca'収録曲'PANG!'でディエイトが歌う「West side 漂い east side 宇宙を彷徨って すぐに見つけてしまった 遠くで回っていても輝いてる」という歌詞を思わせもしますよね。

 王子さま(ディエイト)は、宇宙を漂い、そして、かけげのない友情を見つけたのですから。

 'Rock with you'やジュンのソロ曲'Fall in love'のリリックビデオも、ぜひもう一度見てみてほしいと思います。

 

SEVENTEEN (Performance Team) 'PANG!'

 

SEVENTEEN 'Rock with you' English Lyric Video

 

JUN 'Fall in Love' Lyric Video

 

・・・★・・・★・・・★・・・

 

以上、関連事項も含めてとっても長くなってしまいましたが、ジョシュアの考察の続きでした。

次回はスングァンについて書きたいと思います。

今回も読んでいただきありがとうございました!

 

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画像引用元

※画像1