この記事は

の続きです。

 

引き続き、

POWER OF LOVEプロジェクトにおける

メンバーの配役

について書いていきます。


今回は、

『星の王子さま』のもとになった

サン=テグジュペリの実体験・

“サハラ砂漠への不時着”に焦点を当て、

その事故の際に

彼と一緒に飛行機に乗っていた

一人の仲間

について、解説したいと思います。


(6)VERNON《機関士プレヴォ》

 『星の王子さま』では、「ぼく」は一人で砂漠に不時着しますが、この物語のもととなった現実の事故では、サン=テグジュペリの飛行機には同乗者がいました。機関士のアンドレ・プレヴォです。本記事では、私がバーノンがプレヴォの役を演じていると考える理由を書いていきたいと思います。

 

①Hiphop teamの一員である。

 今までの考察でお話ししてきた通り、今回のプロジェクトでは、Performance teamが天空の人を表しているのに対し、Hiphop teamは地上の人、特に灼熱の砂漠のイメージを表現していると考えられます。このプロジェクトとの関連が認められるINCOMPLETEでは'Back it up'を歌い、SEVENTEEN's Dawn Is Hotter than Dayのインテリアにはサボテンがありました。バーノンはこのチームの一員です。

 

②プレヴォは煙草に火をつけてくれる。
 サン=テグジュペリが僚友たちとの実体験を綴った『人間の土地』の中で、プレヴォは以下のように登場します。

 同乗の機関士、アンドレ・プレヴォが、僕の煙草に火をつけてくれる。
─コーヒーをやろうか……」

 ─サン=テグジュペリ『人間の土地』「砂漠の眞中にて」(新潮社、堀口大学訳)

 

 

 9月24日に公開された‘Attacca’のコンセプトトレーラーではジョシュアが花火を煙草のようにくわえ、ミンギュに火を放ったように見える場面が印象的でしたが、後に公開された同アルバムのタイトル曲‘Rock with you’のティーザーでは、バーノンがそれをくわえており、そのサムネイル画像から、ジョシュアと火を分け合ったのはバーノンであったことがわかります。

 これは、上に引用したプレヴォ初登場の一文、「アンドレ・プレヴォが、僕の煙草に火をつけてくれる」のイメージに合っています。

③プレヴォは機械に詳しく、よく眠る「熊」である。
 プレヴォは機関士です。「パイロット(飛行士・操縦士)」が飛行機を運転するのに対し、「機関士」は飛行機のエンジンの整備や修理など、機械そのものを専門的に扱います。本記事のはじめに引用した'Attacca'のOp.2,3のバーノンの写真はこのイメージによく合うように思います。

 また、これは私の個人的印象ですが、作品外における普段のバーノンも、音楽の制作・鑑賞や趣味の映画鑑賞のために最新の電子機器をうまく扱っているイメージがあります。


 機関士はパイロットと一緒に飛行機に乗りますが、『人間の土地』を読む限り、パイロットが操縦をしている間に仮眠を取ることもあるようで、序盤、プレヴォは寝たり起きたりを繰り返します。「プレヴォは眠りに落ちている」「配電盤の接触点から光が漏れてくる。プレヴォを起こして消してもらうことにする。プレヴォは、影の中で熊のように働いている」「プレヴォが目を覚ました」などの描写があり、プレヴォは「眠り」の印象が強い人物です。‘Attacca’ Op. 1のコンセプトフォトでも、バーノンは寝起きのような姿でした。

 また、「熊のように」というのも、公式の絵文字が白熊であるバーノンのイメージによく合います。

  GOING SEVENTEENや雑誌の撮影風景などの中で他のメンバーが起きている時にバーノンがすやすやと眠っている…という場面も何度か見かけたことがあります。コンセプトや振り付けについて話し合った際に、メンバーから「プレヴォにはバーノンが合うんじゃない?」という意見が出てもおかしくないような気がします。

MOREの撮影風景。最後の方でバーノンが眠っています。

 

④水がなくなっても地面にオールを漕いで進むクルーのイメージ

 1935年、操縦士サン=テグジュペリと機関士プレヴォは、フランス─ベトナム間の最短飛行時間記録に挑戦するため、『熱風号』という飛行機に乗って飛び立ちました。
 しかし、積乱雲にぶつかり、リビア砂漠(広義のサハラ砂漠の一部)に不時着します。その際に命を落とさなかっただけでもかなりの幸運ですが、二人は周りに人も水も食料も無い砂漠の真ん中に落ちたにも関わらず、奇跡の生還を果たします。

 『人間の土地』の「七 砂漠の真中にて」の部分には、その数日間のようすが詳細に綴られています。彼らは最初の二日間は他の飛行機が助けに来てくれる可能性に賭け、SOSの合図として焚火を燃やし、壊れた機体から離れず手持ちのわずかな食料を食べて過ごしました。しかし、食料が尽き、助けが来る可能性も低いとわかると、水や人を求めて広大な砂漠を歩き始めます。
 
 ─出かけよう、プレヴォ!僕らの喉はまだ塞がりきってはいない、さあ、歩かなければいけない」
 ─サン=テグジュペリ『人間の土地』

 

 このようにして彼らは三日間歩き続け、何度も幻覚を見るほどの極限状態の中、偶然通りかかった、ラクダを連れた遊牧民に救われます(※砂漠やラクダのイメージがAttaccaのプロモーション期間中のSEVENTEEN’s Dawn is Hotter than DayやGOING SEVENTEENで強調されていたことは考察Part 1に書きました)。


 ここで、POWER OF LOVEプロジェクトを読み解く鍵となっていると思われるINCOMPLETE(その理由は考察Part1参照)で、Hiphop Teamが歌った‘Back it up’の歌詞を見てみましょう。

 

SEVENTEEN Hiphop team ‘Back it up’

(INCOMPLETEの映像ではありませんが、公式に観ることのできる同じ曲のパフォーマンス映像です。)

 

 道を開けろ どいてくれ
 エルサを呼んでも俺を冷やせない
 牛の角をつけて走る一直線
 Back back back back back
 数え切れないトロフィーたちの入場
 それでも目標に執着する

 渇きを解消できない心臓
 情熱以上の赤に沈着
 だから俺たちは白旗を掲げるつもりはない

 毎日毎日さらに湧き上がるスタミナ
 後ろは見ないから壊せバックミラー
 Yeh Back it up
 抜き出た先頭を超えて決勝戦を
 
水が引いても地面にオールを漕いで進む
 (中略)
 Moonwalking toward the moon
   (訳:月に向かってムーンウォーク)
 The man in the moon
(訳:月に居るその男)
 This LE VOYAGE DANS LA LUNE
(訳:月へ向かうこの旅)
 
Bullet(訳:弾丸)の中にクルーを乗せて
 Shoot it into his 目
(訳:彼の目にそれを撃ちこむ)
 
青い地球の人間の中で
 俺は不時着した宇宙人 Brr

 ─SEVENTEEN Hiphop Team/ Back it up


 いかがでしょうか…?今まで積み重ねてきた実績への自信と飽くなき向上心を歌った曲ですが、白旗を掲げずに水の無い灼熱の大地を進むイメージは、‘Attacca’ Op.2のHiphop Teamの写真や、『熱風号』に乗ってフランス─ベトナム間最短飛行記録に挑戦するも砂漠に落ち、歩いて生き延びたサン=テグジュペリとプレヴォの体験によく合います。2019年の曲なのでもともとこのイメージに合わせて書かれたかは不明ですが、今回のプロジェクトのイメージに合うということでINCOMPLETEのセットリストに選ばれた可能性は十分にあるでしょう。

 2021年1月に行われたIN-COMPLETEは、パンデミックにより途中で終わってしまったワールドツアー・‘Ode to you’(2019~2020)の次に開催されたライブコンサートです(※その前にファンミーティングはオンライン開催しています)

 このオンラインコンサートのセットリストに'Back it up'を入れたことには、新たな挑戦であり世界中のCARATに歌を届ける希望に満ちた旅路であった‘Ode to you(直訳:君に宛てた詩)’を、手紙や荷物を世界中に届ける郵便機のパイロットであったサン=テグジュペリたちの挑戦に重ね、たとえその途中で飛行機が砂漠に落ちても、絶望せずに進み続けるという決意が表れているように思えます(※Ode to youと、Ready to Loveを始めとするそれ以後の曲の関係については別の記事にまとめましたので、興味がありましたらそちらをご参照ください)。

 水の無いプールを歩くメンバーの後ろ姿をとらえた'Attacca'のの集合写真が『人間の土地』の最も有名な一節、愛するということは、お互いに相見合うことではなくて、諸共に同じ方向を見ることだ」を表現しているという解釈は、考察Part1でも述べた通りです。


 

 また、同じくIN-COMPLETEで披露されたPerformance Teamの'MOONWALKER'との歌詞の重なりも面白く、空から降りてきたロープを掴み軽やかに舞い上がっていくPerformance Teamと、その空を睨むように見上げながら干からびた大地を突き進むHiphop Teamは、宇宙側と地球側の対比的なイメージを見事に表現しているように思えます

 この‘Back it up’の歌詞を頭に入れた状態で、今回のプロジェクトの目玉とも言える‘Rock with you’のパフォーマンスを見ると、バーノンが歌っている箇所の周りのメンバーの動きが気になってきます。

SEVENTEEN ‘Rock with you’ Choreography vedeo

※1:40あたりに注目してみてください。


 私には、バーノンを取り囲むメンバーがオールを漕いでいるように見えます。

 この動きは、飛行船での旅を描いたMVや波の上を進む船を表した振り付けが印象的な‘My My’(2020)にも登場します

※0:51~0:56のあたり、「櫂を漕ぐ」という歌詞に合わせて中央部のメンバーが実際にそのような動きをしています。


SEVENTEEN ‘My My’ MV


 ‘My My’は明らかに「旅」や「船」をテーマとした曲ですが、‘Rock with you’には「旅」「船」「海」などを表す直接的な言葉はありません。

 それなのに、なぜ、バーノンの周りでメンバーがオールを漕ぐのでしょうか。


 IN-COMPLETEがPower of Loveプロジェクトを読み解く重大な鍵である可能性を考慮すると(考察Part1参照)、その答えは、やはり‘Back it up’の歌詞にあると考えることができます。


 すなわち、バーノンとオールを漕ぐ動きを重ねることで、‘Back it up’の「水が引いても地面にオールを漕いで進む」ことを表し、そして、それが『人間の土地』で砂漠に不時着したプレヴォたちのイメージを表現しているということです。

 
 バーノンはこのパートで、“I just want you, I need you”と、誰か大切なひとのことを歌っています。

 私が『人間の土地』のプレヴォの描写で好きなのは、砂漠に落ちたことがわかり彼が涙を流す場面です。


 プレヴォは泣いている。僕は彼の肩を叩く。僕が言う、彼を慰めようと、
─駄目なら駄目で仕方がないさ……」
彼が、僕に答える、
─僕が泣いているのは、自分の事やなんかじゃないよ」
(中略)
そうだ、そうなのだ、堪え難いのはじつはこれだ。待っていてくれる、あの数々の目が見えるたびに、僕は火傷のような痛さを感じる。すぐさま起き上がってまっしぐらに前方へ走り出したい衝動に僕は駆られる。向こうで人々が助けてくれとさけんでいるのだ、人々が難破しかけているのだ!

 ―サン=テグジュペリ『人間の土地』「七 砂漠の真中にて」


 プレヴォとサン=テグジュペリはこの場面で、もう帰れないことを覚悟しています。しかし、プレヴォが泣く理由は自分の命が助からないことではなく、自分が助からなかったら、待っていてくれる人々はどんな思いをするだろう?ということなのです。

 砂漠に落ちたのは自分たちなのに、二人は、待っていてくれる人たちこそ助けを求めている、自分たちが駆けつけねばならないと感じています。

 初めて行く予定だったヨーロッパ等での公演の中止。東京ドームでのコンサートの中止。ワールドツアーOde to youの途中から始まった、ファンと直接会うことができない今の状況を、志半ばで砂漠に落ちた空の旅に重ねているのだとすれば、これは自分たちを待っているファンへの思いでしょう。

 オフラインコンサートの中止はSEVENTEEN自身にとって非常に辛いことであると思います。しかし、自分たちよりも、待っていてくれるファンの方こそ辛いのだ…僕たちがどうにかしてその心を救わなくてはならない…というのは、ファン思いで責任感の強い彼らが感じていてもおかしくない感情のように思えます。『人間の土地』のこの部分に共感し、サン=テグジュペリ作品のイメージをプロジェクトに取り入れたということは十分あり得る気がします。

 

 また、「帰りを待っていてくれる人」のイメージから、私はSEVENTEENがデビュー直前に数々のミッションに挑んだ『SEVENTEENプロジェクト』での、バーノンの言葉も思い出しました。


─こうして(プロジェクトが)始まりましたが、一番思い出す人は誰ですか。
─妹です。妹がふだんから僕に会いたがってるんです。会いたい分だけ活躍する姿を見せて友達にも自慢させてあげたいのに。でも、妹から“今日 家に帰れる?”とそう聞かれて“帰るよ”と答えても帰れない日が多くて。ガッカリしたことがたくさんあったろうし、申し訳ないです。
 ―SEVENTEENプロジェクト第1話より

※SEVENTEEN PROJECTはアマゾンプライムで視聴できます。

https://watch.amazon.co.jp/detail?gti=amzn1.dv.gti.0cb9b694-9ad0-af48-4217-75912c999a2a&ref_=atv_dp_share_seas&r=web

 

 バーノンは「自分の帰りを待つ人」を心から大切に思い、原動力に変える人なのです。

 

 この時から六年の月日が経ち、感じ方や考え方、表現し方において変わったことはたくさんあると思いますが、こうした思いやりや責任感、待つ人がいるからこそ歩き続ける強さは、今も変わっていないように見えます。

 このようなバーノンの姿は、「待つ人」のために泣き、そして砂漠を歩いたプレヴォにぴったりであるように思えます。


 このようにして、「道を開けろ」と唸る‘Back it up’の"Siren"は、POWER OF LOVEプロジェクトにおいては、彼らを待つ「難破」した人々のために駆け出した救助隊のサイレンとして、果てしない砂漠に響き渡ります。

⑤プレヴォは生き抜くために「毒」を飲む。

 もう一つプレヴォの特徴をお話ししましょう。砂漠の真ん中に落ちたサン=テグジュペリとプレヴォは、どうにかして水を得られないものかと考え、非常用パラシュートの布を広げて空(から)のガソリンタンクに露を集めようとします。夜の間にそれを広げておき、朝目覚めると、確かにそこには液体が溜まっていました。

 

 ところがその水たるや、見事な黄緑色をしている。そして最初の一口から、僕にはその怖ろしい味がわかる。おかげで渇きに苦しんでいながらも、この一口を飲み込む前に、僕はまず一息つく。たぶん泥でも飲むだろうと思われるのに、この毒の金属性の味は、僕の渇きより強い。

 ―サン=テグジュペリ『人間の土地』

  

 タンクに付着していたガソリンのせいなのかパラシュートの塗料のせいなのか、きれいな水を得ることはできなかったのです。しかし、それでも二人は生き延びるためにこの水を飲みました。

 

 この場面で、この液体は「毒」と呼ばれています。『星の王子さま』に毒ヘビが登場することは有名ですが、『人間の土地』にも毒は登場していたわけです。王子さまはある意味で死ぬために、サン=テグジュペリとプレヴォは生きるために毒を摂取しますが、共通しているのは、それが自分を待つ愛する人の元へ向かうためだということです。

 

 SEVENTEENの「毒」と言えば、'毒:fear'と'Fearless'の二部作が思い起こされます。この二作品は、ともにINCOMPLETEのオープニングに組み込まれていました。リーダーズのNew Worldでコンサートが始まり、BRING IT, My I, Flower, Fear, Fearlessのメドレーでメンバーが少しずつ揃っていくさまはとても迫力があって、大好きな部分です。最初の三曲についてはまた別のメンバーの記事でお話ししたいと思いますが、'Flower'は前回の記事で重要だった「バラ」の曲であり、その次にこの「毒」二部作が並んでいます。

 

 バーノンは'Fear'のMVではサムネイル画像となっており、また、'Fearless'のパフォーマンスでは一人でステージに立ち曲の幕開けを担当します。どの曲でもすべてのメンバーが輝いていますが、この二曲におけるバーノンの存在感は大きいと言えるでしょう。

SEVENTEEN 'Fearless'

 

 「毒」作品におけるバーノンの印象の強さは、毒を飲むプレヴォのイメージによく合います。

 


 ちなみに、サン=テグジュペリとプレヴォが飲んだ「毒」を表現しているメンバーはもう一人いると思われます。まず、二人が飲んだ「毒」についての以下の説明を読んでみてください。

 

 しかし僕らはパラシュートの布のを持ってきていた。もしあの毒が、塗料に原因するのでなかったら、明朝、僕らは飲めるはずだった。もう一度、星の下に、露を捕まえる罠を広げてみようではないか。
 ―サン=テグジュペリ『人間の土地』


 パラシュートの布には、縫い目やロープなどの線が細かく走っていると思います。その布が、「露を捕まえる罠」として広げられているところを想像してみてください。私には、"Somebody help"という声が静かに聞こえてくるように思えます。

 

HOSHI 'Spider' MV

 

 'Spider'は、危険な恋に落ちて逃れられない心理をクモの罠に掛かることにたとえた曲ですが、その巣には「雫」が輝いており、 君の「毒」に酔ったという表現も出てきます。

 ホシはオンラインコンサート'POWER OF LOVE'で、'ホランイPower'と'Spider'を披露しました。POWER OF LOVEプロジェクトにおいてホシには別に重要な役があるのですが、それ以外に、端役の「トラ」と、今回紹介したサン=テグジュペリとプレヴォの「露を集める罠」の場面も表現しているのではないかと考えられます。

 ‘Spider’は身を滅ぼすような、それでいて遊戯のような、危険な恋の歌としてももちろん鑑賞できますが、「誰か僕を助けて」というコーラスから始まり、一瞬でも緊張を解いたら命を落としてしまいそうな"emergency(非常事態)"は、かなりプレヴォたちの状況に合っています。幻想的な誘惑に抗えない雰囲気も、プレヴォたちが何度も泉や人の幻覚を見て、わかってはいるのに引っかかってしまう場面と重なります。2021年4月の曲ですので、このダブルミーニングは意識的なのではないかなと思います。
 

 以上、最後はホシに話が逸れてしまいましたが、「煙草に火をつけてくれる」や「水が引いても地面にオールを漕ぐ」’Back it up’、「毒」など、私がバーノンがプレヴォであると思う理由でした。

 そして、とても細かいところで、これは「理由」とは言えないのですが、最後に好きな場面をひとつ。食べ物も飲み物も殆ど無い中でプレヴォを救ったもののひとつに、"ある果物"があります


 プレヴォが、残骸の中に、奇蹟のオレンジを一つ見出した。ぼくらはそれをわかつた。
─サン=テグジュペリ『人間の土地』


 プレヴォにバーノンを重ねながら『人間の土地』を読み返した時、私はこの文を読んで、同じ98年生まれでバーノンと仲の良いスングァンを思い出し温かい気持ちになりました。出身地の名産品であるミカンをたくさん持ってきてスタッフやメンバーに配ることがあるため、スングァンを表す公式の絵文字は「🍊」になっていますよね。

 

 『人間の土地』は作者の詩的・哲学的な独白の多いエッセイで読みづらい部分もあるのですが、プレヴォとのこの砂漠での体験を描いた「七 砂漠の真中にて」の部分は映画のように場面が想像できて読みやすいので、もしこの考察に納得していただけれるであれば、バーノンファンの方にお勧めです(「二 僚友」には、考察Part 3でドギョムが演じているのではないかとお話ししたギヨメの話も出てきます)。


 それでは、今回もこんなに長い文章を読んでいただきありがとうございました。次回は、今回の記事とつながりの深いエスクプスの役について書こうかな・・・と思っています。