せっかく世界遺産に登録された国立西洋美術館に来たんだから、建物の方を見ていこう。
箱形の建物を柱で浮かせた構造になっている。今では一般的だけど、『ピロティ』と言われる構造で、ル・コルビュジエが初めて提案したものである。
建物の外壁は、玉砂利を洗い出したパネルとなっていて、雨に濡れると少し緑がかって見える。洗い出しの良いところは、雨による黒い筋のような水の跡がつかないところ。
ピロティの足元には、建物と広場の間には継ぎ目があるが、これは建築当初にはなかったものである。
この継ぎ目こそ、『免震レトロフィット工法』による工事の跡である。
免震レトロフィット工法は、建物と地面を切り離し、その間にゴムを挟み、地震で地面が揺れた場合にこのゴムが揺れを吸収して、地震による揺れが建物に伝わらなくするもの。
耐震補強をすれば、ピロティの柱は太くなり、筋かい等が必要になり、ル・コルビュジエが設計した建物の様相が変わってしまうので、免震レトロフィット工法が採用されたんだと思う。
建物の地震対策として、『耐震』、『免震』、『制震』があるが、耐震は揺れに耐えるように頑丈な建物にすること、免震はゴムなどで建物に揺れを伝えないようにすること、制震はおもりやダンパーなどで揺れを吸収するもので、役所や病院などは、免震構造を採用する場合が多いようだ。


