
『目を閉じておいでよ』は、名古屋のみならず、日本のアンダーグラウンドシーンでは知る人ぞ知る存在であるミュージシャン、松石ゲル氏の秘蔵のコレクションから厳選された、
幻の廃盤ビデオや封印映画、未DVD化作品などのカルトなモンド映像の数々を、ゲル氏の解説&出所不明の怪しげなフリードリンク、フリーフード付きで鑑賞するという、きわめてサブカル濃度の高いフィルム&トークライブ形式のイベントである。

今回紹介された映像の数々も、あの美輪明宏の代表作とされながら何故か未だにDVD化されていない幻の名作『黒蜥蜴』や、タイトルからして放送コードという概念を失念しているとしか思えない『恐怖奇形人間』などの昭和40年代エログロ系映画に始まり、
内田裕也×若松孝二という刺激的なコラボレーションによるピカレスクロマン『餌食』などのハード路線、
そして、ウェンツ版から遡ること約20年前に人知れず製作されていたチープなVシネ作品『実写版・ゲゲゲの鬼太郎』や、80年代後半~90年代前半に乱発されたハウツー物セルビデオ作品等、いわゆるバブルの徒花的なトンデモ系爆笑映像まで、幅広くかつ濃度の濃ゆいラインアップでした。

そして、そんな魅惑のモンド映像ショーの幕間に突如始まった副賞付きのファミコン大会も、どうやらこのイベントの恒例行事であるらしい…。ファミコン創世記に「マリオとルイージの殺しあいバトル」という裏ルールが流行した(旧)マリオブラザーズやパックマンなどのレトロゲームに挑戦し、
勝者には今回紹介されたレア映像の中から、『黒蜥蜴』『恐怖奇形人間』『餌食』三作品いずれかの海賊盤DVDが進呈されるというので、
ぜひ三本ともゲットせしめんと、欲張って三度挑戦を試みたものの、加齢による反射神経の衰えゆえか、予想外に苦戦し一勝ニ敗というしょっぱい結果に終わる。
初代ファミコン直撃世代としては、こんなハズではなかったのだが…涬
しかし、ゲル氏のご厚意により一本オマケしていただき、『黒蜥蜴』と『餌食』二本のカルト映画を入手することに成功したのだった


『黒蜥蜴』は、名探偵・明智小五郎と女盗賊・黒蜥蜴の、愛憎入り交じった頭脳戦を描いた江戸川乱歩の傑作推理サスペンス小説、および三嶋由紀夫による、その戯曲版が原作となっており、
舞台においては『毛皮のマリー』と並び、現在までに幾度となく上演されている美輪明宏の代表作となっているが、
この幻の映画版では、一段と若く美しい美輪先生を存分に堪能することができる。「美しさとは姿形で決まるものではない」という理想論は、完璧な美しさを持つ者から発せられてこそ、逆にその説得力を増すものだ…。
また、冒頭の秘密クラブのシーンなどは、1968年という時代を反映したサイケデリックなグルーヴ感に満ちあふれており、
あたかも宇野亜喜良や田名網敬一によって施されたかのようなアングラ感が充満したの空間の中で、
極彩色のボディーペインティングを纏い、ドラッグやフリーセックスをアゲアゲになりながら謳歌するヒッピー&ジャンキー達の映像は、一瞬、『あしたのジョー』に登場したゴーゴークラブ『バロン』を彷彿させるが、
よくよく見れば、その何百倍もエログロ指数は高く、いかにもニューロック的な音楽も含め、昭和元禄和製グルーヴ愛好家ならストライク間違いなしのレア映像である。

ボブ・マーリーも来日した1979年に公開された『餌食』は、当時最先端の音楽であったレゲエミュージックを引っ提げ、マリファナをキメつつ、商業主義に支配された日本の音楽業界に喧嘩を売る外タレプロモーターを内田裕也が演じ、
昭和40年代には「ピンク映画の巨匠」と謳われた映画監督、若松孝二がメガホンを握ったという、まさに火に油を注ぐようなコラボレーションからして血生臭い匂いが漂うが、とくに、老衰したオールドタイプのRock'n'-rollが、80年代の(良し悪しはべつにしてだが)軽薄なポップ・カルチャーに駆逐されてゆく、その刹那の断末魔のようなクライマックス~エンディングシーンは、痛烈かつ鮮烈で、最狂レヴェルのインパクトであった…。
まるで演技とは思えない内田裕也のキレ芸は、もしやこれが素の状態の裕也さんでは?と思わせる説得力と狂気を併せ持ち、フィクションでありながらこの男なら本当にやりかねんというリアリティがあるところが恐ろしい(笑)
かつてウェイラーズの一員として、ボブ・マーリーとも共闘したレゲエ・ミュージシャン、ピーター・トッシュが音楽を担当しており、ジャマイカ音楽特有のユルいバイヴが、生々しく破滅的なセックス&バイオレンス描写と妙にマッチしていて、じつにスタイリッシュだった。
同時代の映画、沢田研二×長谷川和彦の『太陽を盗んだ男』や、一連の松田優作主演作にも似た雰囲気もあるが、そのバイオレンス指数は断トツの最凶レヴェルである。
海賊盤DVDを入手した二作品以外にも、封印された映像の数々には、それぞれに事情があって封印されているわけだが、その事情の中にこそ、香ばしい風情が感じられ、サブカル中毒者としては満足度の高いイベントでございました
