ヒビカナイ先輩は笑顔でうなずき、僕らに手を振りながら歩いていった。
「おい、ヒビカナイ先輩は兵士か、それとも違うか、わかるかぁ?」
突然、ツテが質問してきた。
「違うんじゃないかな。だってさ、“兵士”なら自らの“ダメ”な部分を露呈させないだろ?違うか?」
「なんだ、おまえちゃんとわかってんじゃないか。なんで、ときどき、わかってないふうなセリフを吐くんだぁ?」
「そうかなぁ・・。」
「それにしても生産手段を持っている人間はいいよなぁ。特権階級だよ。」
ツテが羨ましそうに呟いた。
僕らはゼミの教室へと向かった。
「はい、時間が来たので今日はここまで。」僕らのゼミのウスイ先生がいつものように時計を気にしながら言い放った。
「大学の専任講師っていいよな。ウスイ先生だってゼミとかいっときながらただ、おれらに勝手に議論させといてそれで終わりだからなぁ。彼からは何の知的なメッセージも感じやしないよ。」ツテはこの先生に不満があるみたいだ。
「誰も知的なメッセージなんか求めてやしないよ。少なくともこの学校ではね。」
僕のこのセリフを待っていたとばかりにツテは静かに黙った。彼は僕だけにではなく他の人たちにもわざと意図的なことを言い、彼の聞きだしたいフレーズを人から引き出させては満足しているフシがあった。定かではないが、仮に、もしそれが本当だとしたら彼は変態に違いない。こんな変態といる僕って一体・・・。
今日はテニスサークルの飲み会がある日だ。もう3年になるから、1、2年のときみたいにはしゃげなくなってきたなぁ。なんで、ほとんど年も変わらないのにこんなに差を感じるんだろ?