「そういえば、おれ新しいパスタのメニュー開発したんだ。ウニソースのパスタなんだけど、よくあるおしゃれカフェにあるやつと違うとこはたらこを絡めてるとこなんだ。結構、イケるぞ。」ツテが自慢げに言った。
全くこいつは僕がサークルやゼミとかで頑張って表の“顔”を作って就職活動に入ろうとしてるときに一体何してんだ?
こないだはこないだでギターに目覚めたと言い出し、練習をいっさい譜面を見ないでやるのがいいと言っていたし。そもそも、譜面やテキストを使わないでどうやって練習するっていうんだ?全く意味が僕にはわからなかった。
年が明け、就活がとうとう本格的に始まり出した。
“面接もいくつか受けたけど、いまいち、なんかしっくりこないんだよなぁ。”
他の友人たちもこの不況で苦戦しているみたいだった。“みんなも同じように頑張ってるんだ。僕も負けずに頑張ろう・・”僕は自分に言い聞かせた。ツテはどうしているんだろうか。後期になって受ける授業がなくなってから、僕はあまり大学に顔を出していなかった。後期になってからツテはゼミに出なくなっていた。やっぱり、あの先生が原因だったのかな。
今日も僕はある大手の営業職の面接を受けた。大学のときは皆、お調子者を演じてただろうくせに就活が始まるとなんだこの豹変ぶりは。でも、考えて見れば、僕もそのうちの一人に過ぎなかった。彼らを批判することが皮肉にも僕自身を批判することになるのだ。今になってツテの言っていた“兵士”というワードが僕の頭をよぎり始めるのがわかった。
面接が終わり、今日の予定はこれで終了だ。もう、夕方6時を過ぎようとしていた。そこへツテから電話がかかってきた。
「今、時間ある?飲みにでもいかないかぁ?」
「おぅ、今ちょうど、面接が終わったとこだ。」
僕らはいきつけの見た目の割りには安い飲み屋へいくことにした。
「なんだ、結構、様になってるじゃないか、スーツ姿。」