僕は音楽の授業が嫌いだ。なんで、こんな退屈に感じるんだ?わざとやってるのかって思ってしまう。僕はこの時間で“何も考えない”ということを覚えた。



僕の名前は山下夢路。高校3年の18歳。

学校が終わって、いつものようにお気に入りの音楽をアイ・ポッドで聴きながら大学受験予備校へ向かう。ここでの時間は僕にとってなぜか“癒し”の時間なのだ。それは、多分、どこでもない境界線のような場所だと僕が勝手に思っているからかもしれない。厳しく言えば、当事者意識が足りないだけとも言える。



「おまえ、大学は理学系でいくのか?それなら、××大学がいいんじゃないか?この学校からも大勢、入学してるからな。」担任の先生が慣れ切った口調で僕に言った。



こんなことを思い出しながら、予備校での講義を終え、帰宅途中のことだった。いつもより体調がよくないのか、少し頭痛がする。薄く暗い夜道を歩いていると、突然、僕は自転車とぶつかり地面に押し倒された。



「いてっ」



「あっ、大丈夫ですか?怪我はないっすか? ほんとに、すいません。」



自転車の人は中肉中背で、見た目はごく普通の青年だった。丁寧に何回も謝り、僕がなんでもなかったことを確認すると、再び自転車に乗り、走り去っていった。



無事、家に帰宅して、シャワーを浴びていると、右腕の手首の近くにあざがあることに気付いた。“あのときにできたやつだな・・” そのあざはなんとなくではあるが何かの象形文字のようにも見えた。手の親指くらいの大きさだった。



翌朝、あざはすっかり消えていた。学校の教室ではいつもの友人たちとくだらないが笑える話をし、授業ではくだらなくはないが少しも笑えない話を聞いていた。いつもと同じような一日・・。“でも、何かおかしい”



友人たちが皆、よく見ると見慣れないアクセサリーを付けていた。でも、何かが変だった。半透明なのである。というのも、その物体としてのアクセサリー自体が透けているのである。“こんなことはあり得ない” 友人たちにはもちろん“それ”が見えていない感じだった。