しかし、もう一度、店の中の男の色を見てみたとき気付いたことがあった。“虫がたかっている・・”確かに小さなハエのようなものが何匹も男のベルトのアクセサリー部分を飛んでいた。「危険だから、君も下がって」警察の人に言われ、僕は後ろへ下がり、そのままその場を立ち去った。
あの事件から一週間が過ぎ、僕はバンドの練習をしにいつものスタジオへと向かった。
「相変わらず、夢路のギターの手癖は独特でグルーヴ感があるよなぁ。」ドラム担当が僕に言った。
「コード進行が変則的だから、セッションするときはもっとシンプルなのにしてくれよ。」とはベースの意見だ。
“このまま、音楽をやっていくのもいいかもなぁ”
それから、僕は大学に現役で合格し、進学した。相変わらず、特に何がやりたいとか、何になりたいとか明確なビジョンはなかった。
入学式で僕の同期となる新入生の“色”を見てみた。彼らの表情とは裏腹に“色”はどことなく力がなく自分の色に対し何か“迷い”があるように僕は感じた。それに対し、僕の右手首に付いているブレスレッドにあるガラスの色は何の迷いもなくきれいな銀色を放っていた。それはこれからの僕の人生を暗示しているかのようであった。