（前回ブログの続きです）

今回の間取り診断で弊社は次の4点を改善点にあげました。

●薪ストーブの位置

●シューズクロークの動線

●トイレの位置

●パントリーの位置・動線

（間取り診断を行った事例を再掲いたします。）

何が問題と考えたのでしょうか。

このうち、今回はトイレの位置を考えてみます。

普段あまり積極的に話すことは無いかもしれませんが…

（以下トイレに関する記述になりますので閲覧ご注意ください）

●まず、トイレとはお手洗い・便所のことですが、その昔は厠（かわや）と呼ばれ、その用途から日本では家自体とは離れた外の別棟や家の北側の一番端に設けられたりしたものでした。その理由としては、くみ取り式でその衛生面や臭気の問題が大きく、生活空間とは距離をとり、日の当たらない場所に設置されたものと考えます。

近年では水洗式が一般的となり、洗面・浴室などとセットで水回りの設備と考えられるようになりました。さらには換気設備が必須となり、その性能もあがった現代の住宅においては臭気そのものが大きな問題となることは少ないかと思います。それでも現代においても不衛生な設備であることから、心理的理由も含めて陽の当たる場所に設けられる存在ではなく、他の水回りとともに北側などの配置が多いです。ただし、この場合は生活空間との温度差によるヒートショックなど身体的な危険があります。

●一方で、現代の住宅においてはリビング等の生活空間とトイレの距離は格段に縮んできたと考えます。理由としては、まず平均的な家の敷地が狭くなりマンションや狭小住宅と言われるものも多くなってきたこと、これにより家の広さという物理的な制約からリビング等のそばにトイレを設けざるを得なくなった、さらには開放的な空間が望まれるようになり、現代の住宅の傾向として、リビングイン階段でおわかりのように極力廊下を無くし、広さ・抜けを重視した空間を作るようになったことから、リビングなどの生活空間から出入りできる位置にトイレが設けられるような事例が出てきたのだと考えます。別荘など大きなお宅でもお洒落でより広大な空間を確保するためにそのような廊下の無い間取りとなっていることは多いです。

リビング等生活空間と近づいたトイレのメリット・デメリットを考えてみます。

●メリット

・廊下を減らし、限られた床面積の中で大空間が確保できる

・お客様がリビングとトイレ間だけを行き来でき、プライベート空間へ侵入されることがない

・リビング等生活空間に近いことから温度変化が少なくヒートショックの危険性が下がる

・高齢者がリビングメインで生活する場合トイレに行きやすい

●デメリット

・トイレが近くに存在、また視界に入ることに対する衛生面の心配・嫌悪感。食べ物を扱うダイニングやキッチンからはトイレの中が見えることは絶対NG、ドアさえも視界に入らないようにすべきと弊社では考えます。リビングもお客様を迎える場所ですので極力視界に入らないようにしたいところです。

・音漏れの問題。たとえ家族であってもトイレの音が聞こえるのは気持ちの良いものではなく、ましてやお客様はトイレに行きにくいでしょう。近年のトイレは少ない水で洗浄できるようになりましたがその分洗浄音が大きいものも多く、ドア出入りの際は多少なりとも音漏れが考えられます。このため、対策として防音ドアの採用や静音タイプのトイレの採用などがあります。

・臭気もあまりに近い場合は問題になるかと思います。

ここで、今回の間取りを見てみます。

今回の指摘点は間取りをご覧になってお気づきになった方もいらっしゃったかもしれません。

まず前提として、今回の事例のお宅は平屋の別荘で、トイレは一箇所の設置です。

やはり先に記載した現代の住宅の傾向通り、このお宅も別荘として非日常的な広大な空間・抜けを確保するために廊下や壁を極力設けずに全体がワンフロアとして抜けた間取りとなっています。キッチンやダイニングから物入れやパントリーを挟んでトイレは隔離されており、畳スペースとの間は照明入りの縦格子で目隠しされるようです。別荘としては広さのインパクトもあり、お洒落な作りになっています。一見問題は無いように思えます。

※縦格子（今回は木の間に照明が入ります）

動線・視線をシミュレーションします。

今回も適当なお絵かきで申し訳ございませんが、赤線が動き、青点線がそれに伴う視界です。ダイニング・キッチンからトイレが視界に入ることはなく、リビングもソファなどでくつろぐ場合はもちろん、歩き回ってもパントリーなどから一段下げてあることによってトイレは死角（黄色塗りつぶし）となり視界に入ることは無いように計画されています。畳スペースからは縦格子が目隠しとなりますので、懸念された視界に入るという問題は無さそうです。

次に音の影響をシミュレーションしてみます。

トイレの前は廊下に見えますがよく見るとＬＤＫとの間に扉などが無く区切られていないことがわかります。これによりＬＤＫとその先の空間が連続してつながることで、別荘らしいさらに広い空間と抜けが実現されているのです。

一方、音は物理的な波であり、干渉物があることで吸収・反射されますので、このように抜けを優先した場合はデメリットに記載したように、防音ドアなどの対策を施したとしても出入りの際に洗浄音の音漏れが多少なりとも発生するものと考えます。

緑点線が音の伝わり方のシミュレーションです。

この事例でも目の前ではないものの、トイレドアが開いたタイミングでリビングには音が多少伝わると思います。

これはもし家の一番奥にトイレがあったとしても程度の差はあれ空間・抜けを優先すればやはり音は伝わると思われます。

まずは当面別荘としてのご利用ですから、その場合は空間の素晴らしさ・非日常感が楽しめるため、さほど問題にはなるものではないと思います。しかしながら、今回の施主様の条件を振り返って見ると、将来の定住も視野に入れているとのことでした。

さすがに毎日のこととなると、音漏れの問題はじわじわとストレスになって来るように思います。

抜けを優先するかどうか、リビングから近い方が良いのかどうか、将来的にはどうかなどライフスタイルによりますが、今回のケースでは将来を考え、弊社はリビングからドア1枚ではなく、できればもうワンクッションおきたいと考えました。

（続きます）

弊社では第三者のフラットな視点で、将来も売れる家を実現するため、間取り診断やデザインのコンサルティング・３Ｄ画像作成など、家づくりを支援するサービスを提供しております。ご要望に応じ、家相・風水などの観点でのアドバイスも可能です。

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