元の球がアウトオブプレ―となった後に球がインプレーに戻る場合

2022年8月21日

 ゴルフ規則14.4は,元の球がアウトオブプレ―となった後にプレーヤーの球がインプレーに戻る場合について規定しています。

  プレーヤーの球がホールで初めてインプレーとなるのは,ティーイングエリアからその球にストロークを行ったとき以外ありません(定義:インプレー,ストローク競技のみ)。きわめて単純明快です。

  ところが,元の球が一度インプレーになり,その球がアウトオブプレーとなった場合,再びプレーヤーの球をインプレーに戻す方法はぐちゃぐちゃです。

 

2 ゴルフ規則は,定義:インプレーの項で「ただし(インプレーの球は)次の時はもはやインプレーでなくなる」として次の4つを挙げています。

 ⑴ その球がコースから拾い上げられたとき。

 ⑵ その球が紛失したとき。

 ⑶ その球がアウトオブバウンズに止まったとき。

 ⑷ 別の球に取り替えたとき。

  いくつか注意すべき点を挙げてみます。

  ⑴については,誰が拾い上げたか問いません。カラスが咥えて持ち去っても拾い上げたと言うかどうかは別にして同じです(9.6参照)。

  ⑵は紛失と判断された場合です。

  ⑶のアウトオブバウンズに止まったときは問題ありません。

  ⑷の別の球に取り替えたときというのは,⑴⑵⑶が元の球の状態に生じたことを問題にしているのに対し,⑷はそれを問題にしていません。元の球がインプレーであっても,プレーヤーがストローク&ディスタンスの救済を受けるため,別の球をインプレーにした場合などです。

ゴルフ規則は,「どんな時でもプレーヤーは複数のインプレーの球を持つことはない。(定義:インプレー)」としています。ということは,元のインプレーの球は,ある一瞬からインプレーでなくなるということです。ここは正確に,プレーヤーが別の球をインプレーにした時とすべきではないかと思います。

 

3 規則14.4は,「プレーヤーのインプレーの球に,前項⑴⑵⑶の事実が発生した場合,その球はもはやインプレーではない。」と規定し,⑷の別の球に取り替えたときを省いています。規則14.4の表題が,「元の球がアウトオブプレ―となった後に」としているので,⑷は,元の球がインプレーの場合もあるので省いているのでしょう。しかし,ここは規則の体裁を少し変更して,インプレーの球があっても別の球をインプレーにすることが出来ることを明確にし,定義:インプレーと同じように整えるべきです。例えば「元の球がアウトオブプレ―となった後に球がインプレーに戻る場合」を「元の球がアウトオブプレーとなった後に球がインプレーに戻る場合,またプレーヤーが別の球をインプレーにする場合」と変更すれば十分ではないでしょうか。

  規則14.4は,「次の場合にのみ再びプレーヤーのインプレーの球となる。」としています。「次の場合にのみ」となっていますが,まだ1つあります。皆さん気付きましたか。元の球がアウトオブプレ―と確定してもその前に暫定球を打っていれば,その暫定球がインプレーの球となります。順次検討します。

 ⑴ ティーイングエリアから元の球か別の球をプレーする。

 ⑵ 球をインプレーにする意図を持って元の球か別の球をコース上にリプレース,ドロップ,プレースする。

  以上はそのとおりで問題ありません。次の⑶が問題なのです。

 ⑶ プレーヤーがどんな方法であれ球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合,次のときであっても,その球はインプレーとなる。とし,その例として,①規則で認められない球の取り換え,②誤所に,③間違った方法,④適用しない手続でリプレースなどをした等を例示しています。

   この⑶についてどんな場合が想定されるか幾つか考えてみます。

  ① 認められていない人がリプレースをした球,間違った方法でリプレースした球をプレーした場合,規則14.2b⑴,同⑵に1罰打の規定があります。

  ② それでは,キャディーが池から拾い上げて,ジェネラルエリアに置いた球をそのままプレ-した場合はどうでしょうか。また,池から拾い上げた球がロストボールであった場合はどうでしょうか。ロストボールを使用することは問題ないでしょう。しかし,いずれもドロップが有りません。

  前記①②いずれの場合も「プレーヤーがどんな方法であれ球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合」に該当すると言わざるを得ません。キャディーの意思や行為は,プレーヤーに及びますから球はインプレーでしょう。あとはどのような罰打が課されるかということです。規則上明確ではありませんが,多分誤所からのプレーとして2罰打を課されるのではないでしょうか(14.7a)

 

4 前項の⑶において,元の球を再びインプレーに戻す方法を極めて広く認めている理由について検討します。

  プレーヤーがティーイングエリアから球にストロークをし,インプレーとなった球がインプレーでなくなった場合,再び球をインプレーにする手続きは厳格で,多くのプレーヤーが何らかの間違いを犯すことは少なくありません。私の経験では,後方線上の救済受けたのか,ラテラル救済を受けたのか分からないような救済,完全な救済のニヤレストポイントとは言えない,スタンスがカート道路に掛かっていたり,プレースすべきなのにドロップをしているプレーヤーなど。10回のドロップ,リプレースで,4回は間違っていると思います。間違った手続きなどで,リプレース,ドロップをした球は,全てインプレーにならないとすると誤球となってしまいます。インプレーでない球は誤球である(定義:インプレー参照)とされているので,そのままプレーを続けると失格となってしまいます。そこで,リプレースやドロップがない場合まで含め「プレーヤーがどんな方法であれ球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合」全て,球はインプレーとなり,あとは,罰打をもって処理することにしたのだと思います。R&Aの仕業とは思えない,非常に大胆な規則であり,多くのアマチュアゴルファーの賛同も得られると思います。

以上