誤球のプレーと誤所からのプレーの定義を再考する

2020年5月26日

1 ゴルフ規則の誤球のプレーと誤所からのプレーについて,私はどうしても整理が出来ません。ゴルフ規則が規定する定義に問題があるのかとさえ悩みます。そこで,いっそのこと自分で勝手に考えた方が良いのではと思った次第です。次のような定義はどうでしょうか。

  ⑴ 誤球のプレー

プレーヤーが,自分のインプレーでない球をプレーすること。但し,次の場合,球は自分のインプレーの球ではないが誤球のプレーではない。

* ティーイングエリアから球をプレーすること

* 暫定球をプレーすること

* ストロークプレーで第2の球をプレーすること

 

  ⑵ 誤所からのプレー

    プレーヤーが,規則に違反してインプレーにした自分の球をプレーすること。

    規則がプレーすることを禁じている場所から,自分のインプレーの球をプレーすること。

 

  ゴルフ規則の巻末に定義されているように「誤球」と「誤所」だけを定義するとなるとかなり難しいことになります。これを「誤球のプレー」と「誤所からのプレー」としたらどうでしょうか。

誤球のプレーについて,例外があることを認めたうえで,積極的に定義した方が良いのではと思うのです。そうすれば,誤球のプレーか誤所からのプレーか判断するとき,プレーヤーのインプレーの球か否かが一つの目安になります。

 

2 インプレーではない球の具体的な例

  ① ティーイングエリアからプレーする前の球

    ティーイングエリアからプレーする前の球は,ストロークするまでインプレーでないことは,「ティーイングエリアからその球にストロークを行ったとき,ホールで初めてインプレーの球となる。(定義:インプレー)」とされているので明白です。通常ティーイングエリアにプレース(ティーアップ)された球です。また,ティーイングエリアからストロークされ,一度インプレーの球となった球でも,規則に基づいてティーイングエリアから再びプレーする場合(空振など)は,「プレーヤーが球をストロークするまでその球はインプレーにならない。(6.2b⑸参照)」とされていますからこれも明白です。

 

  ② 暫定球

  ③ ストロークプレーでプレーした第2の球(規則20.1c)

    上記②と③については,「どんな時でもプレーヤーは複数のインプレーの球を持つことはない。(定義:インプレー)」とされていますから,暫定球,第2の球をプレーした時点では,それらの球はインプレーではありません。

 

  ④ ティーイングエリアの外からプレーされた球

    「ティーイングエリアの外からプレーされた球はインプレーではない。(6.1b⑵)」と明文があります。

 

  ⑤ コースから拾い上げられた球

  ⑥ 紛失した球

  ⑦ アウトオブバウンズに止まった球

    上記⑤⑥⑦については,「次のときはもはやインプレーではなくなる。(定義:インプレー,規則14.4)」と明文があります。

 

  ⑧ 別の球をインプレーにした場合の元の球

    これについてゴルフ規則は,定義:インプレーで,「別の球に取り替えたとき(規則で認められていなかったとしても)。」と規定しています。何とも杜撰な規定です。ゴルフ規則は,どの時点でその球がインプレーでなくなるかを問題にしているのです。別の球に取り替えることができるか否かなどを問題にしている場合とは違うのですから,何時からどの球がインプレーでなくなるか明確に規定すべきです。

 

3 インプレーの球の具体的な例

   インプレーの球とは,ある球が,Aプレーヤーにとってはインプレーの球であり,Bプレーヤーにとってはインプレーではないという概念ではないと思います。いずれのプレーヤーにとってもインプレーの球です。プレーヤーにとっては,自分の球か否かということです。ですから,具体的に規則を適用する場合には,インプレーでない球であるなら問題にする必要はありませんが,そのインプレーの球が,自分のインプレーの球か,他のプレーヤーのインプレーの球かを常に問題にしなければなりません。

 

   インプレーの球の具体的な例を検討します。

  ⑨ ティーイングエリアからストロークされた球

(規則6.2b⑸,同⑹,規則14.4,定義:インプレー)

  ⑩ 規則に従って,球をコース上にリプレース,ドロップ,プレースした球(規則14.4)

    ⑨と⑩については,正に自分のインプレーの球です。

 

  ⑪ 規則に違反して(間違った球,間違った箇所,間違った方法,適用しない手続など),プレーヤーが球をインプレーにする意図を持ってコースに戻した球(規則14.4)

    規則に違反していても,プレーヤーが球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合,ゴルフ規則はインプレーの球であるとしています(14.4)。もちろん,規則に違反して球をコースに戻した場合,球はインプレーではないと規定しても良いかもしれません。しかし,元の球がアウトオブプレーとなった後,プレーヤーの球を正確に手続に違反しないでインプレーに戻すことはかなり難しいことです。そこで,ゴルフ規則は,「プレーヤーがどんな方法であれ球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合,その球はインプレーとなる。(14.4)」と規定しました。大幅に要件は緩和されておりますが,キャディーが池から拾い上げてコースに置いた球をそのままストロークした場合まで含まないでしょうし,ドロップ自体がないのです。しかしこの場合もインプレーの球と解釈されているようです。(本ブログ内の「元の球がアウトオブプレ―となった後に球がインプレーに戻る場合」を参照してください。)

 

  ⑫ 規則がそこでプレーすることを禁じている場所にある球(目的外グリーンによる障害のある球 規則13.1f,プレー禁止区域による障害のある球 16.1f)

    目的外グリーンによる障害のある球,プレー禁止区域による障害のある球がインプレーであることに問題はありません。アウトオブバウンズに止まった球と違うところです。

 

4 以上の球について,インプレーかインプレーでないかを注意しながら,私が冒頭に掲げた誤球のプレーと誤所からのプレーの定義に従って検討します。

 

  ① プレーヤーがティーイングエリアからプレーする球

  ② 暫定球

  ③ ストロークプレーでプレーした第2の球(規則20.1c)

  上記①~③については,いずれの球も確かにインプレーではありません。しかし,これを誤球と呼ぶのは気が引けます。これに限って,誤球とはならないものとして除外する規定方法で致し方ないと思います。もちろん誤所からのプレーでもありません。

 

  ④ ティーイングエリアの外からプレーされた球

  「ティーイングエリアの外からプレーされた球はインプレーではない。(6.1b⑵)」と明文があります。ゴルフ規則は,これを誤球に分類していません。ストロークプレーにおいては,ティーイングエリアの外からプレーされた球は誤球以外の何物でもありません。

   定義において誤球の例として,「・ ティーイングエリアの外からプレーされた球」を付け加えるべきです。

   マッチプレ-の規定と規則を共用しているため,誤球と言えないのだと思いますが,マッチプレ-には両競技者が球を取り違えた場合それを有効とする規定(6.3c⑴)もあるのですから,それらをマッチプレーの特則として規定すべきではないでしょうか。

 

  ⑤ コースから拾い上げられた球

  ⑥ 紛失した球

  ⑦ アウトオブバウンズに止まった球

  上記⑤~⑦は,一度インプレーになった球が,もはやインプレーではなくなる場合です。規則14.4は,これを「元の球がアウトオブプレーとなった後に~~ 。」としています。以上の球が誤球であることに異論はないと思います。

  ⑦について,ドロップしてO.B.に止まった球もインプレーではありません。規則に違反していても,プレーヤーが球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合,ゴルフ規則はインプレーの球であるとしています(14.4)。この場合アウトオブバウンズに球があるのですからコースに戻していません。誤球とすべきです。

 

  ⑧ 別の球をインプレーにした場合の元の球

  ゴルフ規則には,元の球がインプレーであってもプレーヤーの任意で別の球をインプレーにすることができる場合があります。ストローク&ディスタンス,元の球があると推定する場所よりホールに近いところで暫定球をプレーした場合(18.3c⑵参照)。元の球が誤球であることに異論はないと思います。

 

  ⑨ ティーイングエリアからストロークされた球

  ⑩ 規則に従って,球をコース上にリプレース,ドロップ,プレースした球

  上記⑨と⑩は,インプレーの球です。誤球のプレーでも誤所からのプレーでもありません。

 

  ⑪ 規則に違反して(間違った球,間違った箇所,間違った方法,適用しない手続など),球をインプレーにする意図を持ってコースに戻した球

  この⑪が誤所からのプレーの代表的な例です。規則に違反していても,プレーヤーが球をインプレーにする意図を持ってコースに戻した球について,ゴルフ規則はインプレーの球であるとしています(14.4)。その理由は,前記のとおりです。規則に違反しているのですから,確かに誤った所からのプレーであることに違いありません。しかし,「誤った所」というより,規則に違反して球をインプレーにしたという要素が強いと言えます。私が誤所からのプレーを「プレーヤーが,規則に違反してインプレーにした自分の球をプレーすること。」と定義したのは以上が理由です。

 

  ⑫ 目的外グリーンによる障害のある球,プレー禁止区域による障害のある球

  ⑫の球は,いずれも誤った所と言えます。アウトオブバウンズに止まった球と違うところで,インプレーであることに問題はありません。従って救済を受けないでそのままプレーすると誤所からのプレーになります。

 

5 ゴルフ規則の巻末の定義「誤球」と「誤所」を削除して,「誤球のプレー」と「誤所からのプレー」とし,次のようにしたらどうでしょうか。(マッチプレーの特則の変更が前提です)

 

  誤球のプレー

プレーヤーが,自分のインプレーでない球をプレーすること。但し,次の場合,球はインプレーではないが誤球のプレーとはならない。

* ティーイングエリアから球をプレーすること

* 暫定球をプレーすること

* ストロークプレーでプレーした第2の球をプレーすること

   注意すべき誤球のプレーの例:

   * O.B.に止まった球(ドロップしてO.B.に止まった球を含む)をプレーすること

   * 紛失球となった球(球を確認できても紛失と扱われる場合18.3c⑵参照)をプレーすること

   (別のプレーヤーのインプレーの球,捨てられている球,拾い上げられた球は,余りにも当然なので,例示する必要はないと思います。)

 

  誤所からのプレー

    プレーヤーが,規則に違反してインプレーにした自分の球をプレーすること。

    規則がプレーすることを禁じている場所から,自分のインプレーの球をプレーすること。

   誤所からのプレーの例:

   * 間違った球,間違った箇所,間違った方法,適用しない手続などによって,プレーヤーがインプレーにする意図を持ってコースに戻した球をプレーすること

    (注意すべきは,規則で認められていないのに,球を取り替えてしまった場合です。これには,誤って取り換えた球にストロークを行った場合の規定があり(規則6.3b⑶),1罰打となっており,その球でホールを終えることになっています。この場合のみ罰打を軽くしていますが,大した根拠がなく混乱の原因と思います。これも「間違った球」というべきと思いますが,ゴルフ規則は1罰打と軽くしています。)

   * 目的外グリーンによる障害のある球,プレー禁止区域による障害のある球について救済を受けないでプレーすること。

 

  いかなる理由で誤球のプレーと誤所からのプレーを分けているのか,これで少しは明らかになりましたか。これでもまだ分りづらいですね。

 

6 ところで,誤球されたプレーヤーはその後どう処置するか「球をリプレースする場合の具体的箇所」の項目で詳しく説明しました。参照してください。簡単に説明すると,

 ⑴ [規則14.2d ⑴

   例えば,バンカーの中の球を誤球された場合,砂に穴があいて当然ライが変更されます。誤球された球は,元のライをできるだけ復元してリプレースすることになります。

 ⑵ [規則14.2d ⑵ ]

砂の中以外の場所にあった球を誤球された場合,ライを復元することはできません。誤球されて元の箇所にあいた穴にディポットを戻し復元すると,認められていない行動をとったことになります(8.1a)。この場合,元のライに最も近く,最も似ていて,次の要件を満たす箇所にリプレースしなければなりません。

   ① 元の箇所から1クラブレングス以内。

   ② ホールに近づかない。

   ③ その個所と同じコースエリア。

いずれも,元の箇所や,元のライが分からないときは,推定することになっています。

なお,元のライに最も近く,最も似ていて,という要件は削除すべきであるとする意見は,別稿の「球をリプレースする場合の具体的箇所」で述べたとおりです。

以上