誤球のプレーと誤所からのプレーの違い

2020年5月18日

1 先日同伴競技者が,誤ってバックティーにティーアップしたところ,キャディーさんから,「違いますよ,前ですよ。誤所からのプレーになってしまいますよ。」と注意されておりました。確かにそう理解している人がいても,おかしくはないなと思いました。

  誤球と誤所についてはゴルフ規則書の巻末の定義に並んでいます。一度読んでください。誤球のプレーと誤所からのプレーは,ラウンド中頻発するにもかかわらずいずれの定義も決して分かり易いとは言えません。件のキャディーさんが誤解しているのも無理はありません。

 

2 まず,ゴルフ規則書の巻末の定義で,誤球について「次のプレーヤーの球以外のすべての球:」と消極的に定義し,続けて誤球の例を具体的に挙げ,積極的に定義しています。この規定の仕方は,複雑でありとても理解するのが困難です。

ゴルフ規則書の巻末の誤球の定義は,

  誤球とは,「次のプレーヤーの球以外の全ての球: ・インプレーの球 ・暫定球 ・ストロークプレーでプレーした第2の球」

  と規定しています。「~~以外の全ての球:」という規定は,分かりにくいだけでなく,問題がないわけではありません。

  ・ プレーヤーがティーイングエリアからその球にストロークを行ったとき,ホールで始めてインプレーの球となる(ゴルフ規則書の巻末のインプレーの定義)とされています。よって,ストロークするまでは誤球であるということになります。ところが,規則6.3cは,プレーヤーは誤球に対してストロークを行ってはならないとしています。ストロークプレーの規則としては,あまり芳しい規定ではありません。

  ・規則6.1b⑵は,「・ティーイングエリアの外からプレーされた球はインプレーではない。」のですから,誤球の代表的な例なのに,誤球の例として挙げられていません。さらに,ストロークプレーの規則では,誤球と全く同じ効果であることが具体的に規定されていません。ゴルフ規則が理由とするところは,マッチプレーとストロークプレーが規則を共用しているので,誤球と言いたくないものと思います。

  誤球の定義として,「次のプレーヤーの球以外の全ての球: ・インプレーの球」としたことが,そもそも問題を含んでいるのではないでしょうか。

  ゴルフ規則書は巻末で「誤球」と「誤所」を定義しています。しかし,プレーすることを度外視して,「誤球」「誤所」という用語だけを定義するのは難しいと思います。「誤球のプレーとは」,「誤所からのプレーとは」として定義すれば,もっと分かり易くできるのではないでしょうか。

  いつか,誤球のプレー,誤所からのプレーとして,その概念についてもっと分かり易い規定にできないか検討できればと思っております。今日のところは,誤球のプレーと誤所からのプレーについて,その違いを検討してみます。

 

3 誤球のプレーと誤所からのプレーの要素について検討します。

 ⑴ 誤球のプレーとは,「プレーヤーのインプレーでないをプレーすること」だと思います。

  誤球のプレーは,規則に従って訂正しないで,そのままホールアウトすると失格です(6.3c⑴末尾)。

 

①   ティーイングエリアの外からプレーされた球

    これを誤球と言うか否かは別として,誤球と全く同じことです。キャディーさんが誤解したように,誤所からのプレーではありません。そのままホールアウトしても2罰打では済まず失格です。

 

②   プレーヤー自身の球で,アウトオブバウンズに止まった球

    通常は,ストロークによってO.B.に止まった球のことです。しかし,プレーヤーが球をドロップして,救済エリアの外に球が止まっても,そこがインバウンズであれば誤所からのプレーですが,同じく救済エリアの外であるが,アウトオブバウンズに止まった球をそのままプレーすると誤球です。ゴルフ規則書巻末の誤球の定義で,アウトオブバウンズに止まった球は誤球であると規定しています。

 

③   プレーヤーのインプレーの球がコース上から拾い上げられた,紛失した,O.Bとなった場合に,規則14.4に基づいてインプレーにしていない球。

    規則14.4は,プレーヤーがどんな方法であれ球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合,その球はインプレーになるとしています。キャディーさんや同伴競技者が,池から球を拾い上げて置いた球をそのままストロークするのを見たことがあります。これでは,どんな方法であれ球をインプレーにする意図を持って球をコースに戻した場合とさえ言えません。そして,ドロップ自体がないのです。誤球以外の何物でもないのですが,これについては解釈でインプレーの球であるとされているようです。(本ブログ内「元の球がアウトオブプレ―となった後に球がインプレーに戻る場合」を参照してください。)

 

 ⑵ 次に誤所からのプレーについてですが,通常2罰打(14.7a,)です。重大な違反がある場合失格(14.7b⑴)です。

   誤所からのプレーは,「規則に違反してインプレーにされた球をプレーすること」ではないでしょうか。ゴルフ規則14.4は,元の球がインプレーでなくなった場合,球は次の場合にのみ再びインプレーとなると規定しています。

    ・ティーイングエリアから元の球か別の球をプレーする

    ・球をインプレーにする意図を持って,元の球か別の球をコース上にリプレース,ドロップ,プレースする

  さらに,プレーヤーがどんな方法であれ球をインプレーにする意図をもって球をコース上に戻した場合,その球はインプレーとなるとしています。

    ・規則で認められていないのに,球を取り替えた。

    ・誤所,間違った方法,適用しない手続をもって,リプレース,ドロップ,プレースした。

   よって,球がインプレーになる最低限の要件は,プレーヤーが球(違う球を含む)をインプレーにする意図をもって,リプレース,ドロップ,プレースすることです。その箇所や方法などが誤っていても球はインプレーとなるため混乱が生じるのです。

   誤所からのプレーは訂正しないと失格という考えもあると思いますが,ドロップ,リプレースを正しくすることはかなり難しいことです。誤った場合球はインプレーにならず,それらはみな誤球だとすると多くの失格者が出てしまいます。従って2罰打としているのです。致し方ないと思います。

   ゆえに,誤所からのプレーは,「規則に違反してインプレーにされた球をプレーすること」と定義しても良いのかなと思っております。もちろん,規則がプレーすることを禁じている場所から,自分のインプレーの球をプレーすること(目的外グリーンによる障害のある球,プレー禁止区域による障害のある球)も加えなければなりません。具体的な例を挙げていきます。

 

  ① 規則で認められていないのに,球を取り替えてしまった場合です。これには,誤って取り換えた球にストロークを行った場合の規定があり(規則6.3b⑶),1罰打となっており,その球でホールを終えることになっています。しかし,この場合のみ罰打を軽くしていますが,大した根拠がなく混乱の原因と思います。

 

  ② 誤った箇所,間違った方法,適用しない手続をもって,リプレース,ドロップ,プレースした場合です。

    リプレースすべきなのにドロップした。ドロップした球が救済エリアの外に止まったのに再ドロップしなかった。ドロップした球が救済エリアの内に止まったのに再ドロップした。動いた球を元の箇所に戻さなければならないのに,そのままストロークしたなどでしょう。

 

  ③ 目的外グリーンによる障害のある球,プレー禁止区域による障害のある球

 

  誤球のプレーと誤所からのプレーについては,課される罰とその効果が違うので,定義において,その区別が明確でなければならないと思います。

  もう一つ誤所からのプレーについて頭に入れておいていただきたいことは,規則14.5aです。要約すると,「プレーヤーが誤所,間違った方法などでリプレース,ドロップなどをした場合,球をプレーする前であれば,罰なしにその球を拾い上げて誤りを訂正することが出来る。」ということです。

   罰なしなのですから,怪しいと思ったら同伴競技者に遠慮なく尋ねて訂正すべきです。

以上

追記

  本ブログ内の「定義としての誤球のプレーと誤所からのプレーを再考する」も併せて参考にしてください。