障害物の定義

2019年7月19日

(加筆)2024年1月15日

1 新しいゴルフ規則は,障害物について「不可分な物と境界物を除くすべての人工物」と定義しました。旧ゴルフ規則も極めて複雑な定義をしておりましたが,新しいゴルフ規則も決して分かり易くなったとは言えそうもありません。

  ただ,障害物の例を列挙して積極的に示した点は,幾分よくなったと思います。「不可分な物」と「境界物」については別に定義されておりますので後述します。まず,障害物の例を挙げてみます。

 

2 障害物の例:(定義 障害物)

  * 人工的な表面を持つ道路(これらの人工的な縁石を含む)。

  * 建物,避難小屋。

  * スプリンクラーヘッド,排水溝,灌漑ボックスまたは制御ボックス。

  * 杭,壁,レ―リング,フェンス(しかし,これらがコースの境界を定める,または示す境界物である場合を除く)。

  * ゴルフカート,芝刈り機,車,工事用重機。

  * ゴミ箱,案内標識,ベンチ。

  * プレーヤーの用具,旗竿,レーキ。

  旧ゴルフ規則は,障害物とは人工の物をいい,道路・通路の人工の表面と側面,および人造の氷を含む。ただし,次のものは除くとして,障害物とならないものを列挙していました。それに比べれば,積極的に障害物の例を記載したので分かり易くなったと思います。

 

3 規則で言う障害物か否か判断する際,注意しなければならないことが三つ程あります。

 (1)一つは,「不可分な物」と言われるもので「委員会がコースをプレーする上で挑戦の一部として定めた罰なしの救済が認められない人工物」で,バンカーの縁を押さえた枕木などです。旧ゴルフ規則は,「不可分な物とは,委員会によりコースと不可分の部分に指定されているすべての構築物」と定義していたのです。何のことかさっぱりわかりません。新規則になってやっとその意味が分かるように「プレーする上で挑戦の一部として定めた人工物」と定義をしたのです。これも障害物ではないということです。

 (2)二つ目は,次の項で述べる動かせる障害物や動かせない障害物の定義に合致する杭やフェンスであっても,それらが「コースの境界を定める,または示す境界物」である場合は,障害物ではないということです。

 (3)三つ目は,当然のことですが,一般的概念で,ゴルフプレーに障害になったとしても,切り株や木の枝などという物は,人工物でないため障害物に含まれません。規則で言う障害物は,ゴルフ規則においてだけ通用する特殊な概念であることを常に意識していなければなりません。

 

4 この稿では障害物の定義を明らかにしているだけです。注意しなければならないことは,動かせない障害物の定義に合致するものがあっても,それらから救済を受けられるか否かは全く別の問題であることです。例えば,プレーヤーが意図するプレーの線上に,散水の流量を管理するフィールドコントローラーボックスがあったとしても,それだけでは,動かせない障害物からの救済は受けられません。16.1以下の要件(障害が生じている)がなくてはならないということです。

 

5 以上に挙げたゴルフ規則で言う障害物は,動かせる障害物と動かせない障害物のいずれかとなるとしています(定義:障害物)。その2つに分類する意義は,障害物から救済を受ける方法が異なるからです。動かせる障害物からの救済は,規則15.2にあり,動かせない障害物からの救済は,16.1にありますが,この稿では取りあげません。

 

  動かせる障害物

  「合理的な努力でその障害物やコースを損傷させずに動かすことができる障害物。」と定義されており,これが主な内容といってもよいでしょう。

 

  動かせない障害物

  「不合理な努力なしには,またはその障害物やコースを壊さずには動かすことができない物。」これが主な内容といってもよいでしょう。

  それから,「委員会は,障害物が動かせる障害物に合致したとしても,その障害物を動かせない障害物と定めることができる。」とされているので注意が必要です。これには,特段の理由が必要ではなく委員会の任意です。立て看板(試合の時,見物人を誘導する立て看板などは,簡単に動かせても動かせない障害物とし,移動禁止となっている場合があるそうです),グリーン近くに置いてある取り除いた防霜シートなどが考えられます。

  例えば,委員会は動かせる障害物(例えば防霜シート)であっても動かせない障害物と定めることができるので,委員会がその物の全体を動かせない障害物と定めた以上,仮に,その物の一部が動かせる障害物の定義に合致しても,定義「動かせる障害物」の2段目にある「動かせない障害物や不可分な物の一部(例えば,門,ドア,取り付けられたケーブルの一部)がこれら(合理的な努力でその障害物やコースを損傷させずに動かすことができる)2つの基準に合致する場合,その部分は動かせる障害物として扱われる。との規定は適用されないと解釈すべきと思います。

  また,工事用のブルドーザーがコースに置かれていたとします。オペレーターがいれば動かせる障害物でしょう。誰もいなかったら,不合理な努力なしには,動かすことができない物ではないでしょうか。つまり,障害物自体によって,いずれかに決まっているというものではないと思います。

 

6 障害物の定義も然ることながら,混乱するのは障害物からの救済です。ゴルフ規則は,それぞれの救済方法について,動かせる障害物は,ルースインペディメントとまとめて規則15で規定し,動かせない障害物は,異常なコース状態の一つの場合として,規則16で規定しています。

新しいゴルフ規則は,その救済方法の類似性から分類してまとめているのです。ルースインペディメントと動かせる障害物からの救済と,異常なコース状態の一つである動かせない障害物からの救済と2つに分けて,別の稿で説明します。    以上