球をリプレースする場合の具体的箇所

2019年2月27日

 

球をある一点にリプレースする場合の総則規定規則14.1,同.2,同.3)には,使用する球,リプレースする人,リプレースする箇所,元のライが変えられた場合の処置,球が元の箇所に止まらない場合の処置が規定されています。

 ところが,具体的事例に際し,それだけでは判断できない場合があります。プレー中にしばしば問題となりそうな例だけですが,いくつかゴルフ規則の中から拾い出して検討します。

 

1 元のライが変えられた場合に球をリプレースする場所

  元のライが変えられた場合の処置については,総則規定の14.2d にあります。ライの変更は,プレー中にしばしば起こるので,この記事で検討します。

  拾い上げたり,動かした後にリプレースしなければならない球のライが変えられた場合,球が砂の中に止まっていた場合と,砂の中以外の場所にあった場合とでリプレース前の処置が異なります。

 

 ⑴ [規則14.2d ⑴ ]砂の中の球といってもバンカーに限りません。日本のゴルフ場ではあまり見かけませんが,砂漠地帯にはよくあるそうです。

   例えば,バンカーの中の球を誤球された場合,砂に穴があいて当然ライが変更されます。誤球された球は,元のライをできるだけ復元してリプレースすることになります。

 

 ⑵ [規則14.2d ⑵ ]砂の中以外の場所にある球は,ライを復元することはできません。誤球されて元の箇所にあいた穴にディポットを戻し復元すると,認められていない行動をとったことになります(8.1a)。この場合,元のライに最も近く,最も似ていて,次の要件を満たす箇所にリプレースしなければなりません。

   ① 元の箇所から1クラブレングス以内。

   ② ホールに近づかない。

   ③ その個所と同じコースエリア。

   この,元のライに最も近く,最も似ていて,というフレーズは,ゴルフ規則の中に他にはありません。前記①②③だけで良かったと私は思います。前記①②③の制限に更に元のライに最も近く,最も似ていてというあまり意味のない制限を追加するのは,規則を複雑にするだけです。いずれも,元の箇所や,元のライが分からないときは,推定することになっています。

 

2 [規則14.3c ⑵ ]正しい方法でドロップした球が救済エリアの外に止まった場合にすること。

 

 ⑴ プレーヤーは正しいい方法で2回目のドロップをしなければなりません。

 

 ⑵ 2回目のドロップをしても球が再度救済エリアの外に止まった場合。

  ① プレーヤーは,2回目にドロップしたときにその球が最初に地面に触れた箇所に球をプレースしなければならない。球がそこに止まっていたものではないのでプレースとしているのです。

  ② 以上のプレースの方法は,14.2の球をある一点にリプレースする手続きを使用して球をプレースすることにより救済を完了しなければなりません。

  ③ プレースしても球が止まらない場合は,2回目のプレースを試み,それでも止まらないときは球が止まる最も近いところに球をプレースします。

    この,球が止まる最も近いところ,という以上当然距離に関する制限はなくなるということです。

 

3 [規則6.3c ⑵ ]プレーヤーの球が誤球として別のプレーヤーによってプレーされた場合に行うこと。

 

 ⑴ プレー中にしばしば起こることであるにもかかわらず,旧ゴルフ規則には,このような親切な規定はありませんでした。

  ① 別のプレーヤーによって誤球としてプレーされたことが分かっている,または事実上確実な場合でなくてはなりません。

  ② 元の球か別の球を元の箇所にリプレースしなければなりません。誤球したプレーヤーも,その球を動かす原因となった人ですから,このリプレースをすることができます(14.2b ⑴)。

 

 ⑵ このリプレースをする場合,前記1項で検討した「元のライが変えられた場合に球をリプレースする場所」の問題が発生します。バンカーであれば大きな穴があくでしょうし,フェアーウエイでもディポットがとられているでしょう。処置を誤らないようにしなければなりません(14.2d ⑴,同 ⑵)。

 

4 [規則14.6]前のストロークを行った場所から次のストロークを行う場合,通常球をドロップしますが,最初からプレースする場合があります。

 

 ⑴ [規則14.6a ]直前のストロークをティーイングエリアから行った場合

   旧ゴルフ規則において,直前のストロークをティーイングエリアで行った場合,球は一度インプレ―になっているので,直前のストロークを行ったティーイングエリアに球をプレースした瞬間に,球はインプレ―になるというのが私の解釈でした。

 

   [新規則6.2b ⑸ ]は,旧ゴルフ規則の欠陥に気付いたのでしょう。明文をもって明確に解決しました。すなわち,

   球がティーアップされたか,地面の上に置かれたかに関係なく,ホールをスタートする場合や,規則に基づいてティーイングエリアから再びプレーする場合

   ・ プレーヤーが球をストロークするまでその球はインプレ―とならない。

   ・ ストロークを行う前であればその球を罰なしに拾い上げたり,動かす事ができる。

   規則に基づいてティーイングエリアから再びプレーする場合とは,例えばストロークアンドディスタンスの処置などです。

   旧ゴルフ規則には前記の規定が全くないのに,ほぼ上記の規定が存在するかのような解釈がなされていた節があります。

 ⑵ 私は旧ゴルフ規則について,以前次のように指摘しました。

   なぜ,ティーインググラウンドにおいては,『O.B.後のストローク』のためにドロップ,プレース(ティーアップ)した場合,一度ティーアップしても,その場所や高さを変えてよいとする慣例ともいうべきものが定着したのか。推測する以外ありませんが,それこそゴルフ規則などというものが整備される以前からそのような慣例があったものと思います。ところがゴルフ規則を整えようと,規則20-4を規定したとき,その慣例に思い至らず更にそれから何十年も経ってしまったものではないでしょうか。

   R&Aの規則委員も気付いている者がいるかもしれませんが,何十年も前からそうなっていたということになると,多くの委員にはこれを論理的に正さないと規則に整合性がなくなるという意識がないのです。それを容認するには,ゴルフ規則より古くからある慣例が優先すると説明する以外ないのですが,この説明は,定義49.規則(Rule or Rules)に違反します。私は,裁定集11-3/3の裁定の回答は,ゴルフ規則の明文に反するもので,定義7.も,規則11-3もその裁定の根拠にはならないもので誤りだと思います。

 

   新ゴルフ規則によって,明文による規定がなされたということは,やはり私の推測は当たっていたと思います。どなたか,明文がないのに勝手な解釈をするというゴルフ規則が最も嫌うことが,なぜ旧ゴルフ規則でまかり通っていたのか,その辺の歴史的事情をご存知の方がおりましたら,ぜひコメントを頂きたいと思います。

 

 ⑶ 新ゴルフ規則は,以上の考えを次のとおり,さらに押し進めております。

   [規則6.2b ⑹ ]は親切にも,空振りやチョロで,球がティーイングエリアにある場合,球はインプレ―ですから,球をあるがままにプレーすることになります。もちろんそうしても良いのですが,球がティーイングエリアに留まっている場合に限り,罰なしに球を拾い上げたり,別の場所にティーアップすることが出来ることにしたのです。こんなことは初心者にしか起こりませんから良いとしましょう。しかし,50ヤード先の木に当たって,球がティーイングエリアに戻った場合(根拠は,規則6.2a )でも同じとなるとあまり頂けません。

 

 ⑷ [規則14.6c ]直前のストロークをパッティンググリーンから行った場合

   この場合もドロップはせず,最初からリプレースをします。直前のストロークが行われた箇所が分からない場合がほとんどと思います。その場合推定してプレースすることになります。

 

 ⑸ 以上のとおり,前のストロークを行った場所から次のストロークを行う場合,通常はドロップをしますが,最初からリプレース・プレースする場合があるということです。ドロップをしてプレーをしてしまうと誤所からのプレーということになります(規則14.7a )。なお,ティーアップもリプレース,プレースの一つです。

 

5 [規則9.3]自然の力が動かした球

 

 ⑴ 規則9.3の本文は,旧ゴルフ規則には明文こそありませんでしたが,新ゴルフ規則も全く同じで何の変わりもありません。

   規則9.3の例外―の規定が,全く新しい考えのもとに考案された規則なのです。

   すなわち,

   「パッティンググリー(上)〈Ball on Putting Green〉の球が,その球をすでに拾い上げて元の箇所にリプレースした後に動いた場合,その球をリプレースしなければならない。」

   ・ 元の箇所が分からない場合は推定します。

   ・ 球が動いた原因(自然の力,例えば風や水)に関係なく同じである。

   旧ゴルフ規則では,その球が一度拾い上げられて,元の箇所にリプレースされたか否かは関係なく,球がプレーヤーや局外者によって動かされた場合は,その球をリプレースしなければならず,一方自然の力,例えば風や水によって球が動かされた場合は,球はあるがままにプレーすることになっていました。

 

   しかしながら,パッティンググリーン上では,球を拾い上げてリプレースした球が動き出すことがしばしばあります。球が自然の力で動き出したのか,ほかに原因があったのか判断するのは困難ですから,その球が拾い上げられて,元の箇所にリプレースされた後に動いた場合に限り,その原因を問わず,全てリプレースしなければならないとしたのです。

   妥当な改正であったと思います。

 

6 以上球をある一点にリプレースする場合の事例について検討いたしました。総則規定(規則14.1,同.2,同.3)だけでは解決できない場合が他にもたくさんありますが,プレー中にしばしば問題となる重要な事例をいくつかゴルフ規則の中から拾い出して検討しました。

以上