球を救済エリアにドロップする場合の総則規定(ゴルフ規則14.3)

2019年2月13日

 

ゴルフ規則14は,その.1で球をマークすること,拾い上げること,ふくことについて,14.2で球をある一点にリプレースすることについて,14.3で救済エリアに球をドロップすることについて規定しています。本来なら,その.1から順序良く検討するのが良いのでしょうが,旧ゴルフ規則から大きく改正されたゴルフ規則14.3 救済エリアに球をドロップすることを先に取り上げます。

 

1 新ゴルフ規則は,旧ゴルフ規則になかった「救済エリア」と「クラブレングス」という2つの用語について巻末に定義しておりますので是非読んでください。今回問題にしたい点のみ要約すると,

 

 ⑴ 救済エリアの定義

  プレーヤーが規則に基づいて救済を受けるときに球をドロップしなければならないエリア。各救済規則はプレーヤーに次の3つの要素に基づく大きさと場所を持つ特定の救済エリアを使用することを要求する:

  ① 基点: 救済エリアの大きさを計測するときの基点。

  この基点が具体的に何処になるかは,ゴルフ規則のあっちこっちに点在しているのです。別の項目「球をドロップする場合の具体的救済エリア」として検討します。

  ② 基点から計測する救済エリアの大きさ: 救済エリアは基点から1クラブレングスか,2クラブレングスのいずれかとなる。

  ③ 救済エリアの場所の制限: 救済エリアの場所は,1または複数の方法で制限されることがある。

   ・5つの定義されたコースエリアだけとなる。(救済エリアの定義,規則2.2参照)

 

   ・基点よりもホールに近づかない。(詳細は救済エリアの定義参照)

   ・救済を受けている状態による障害(特定の規則参照)がなくなる所。

 

 ⑵ クラブレングスの定義

  ① ラウンド中にプレーヤーが持っている14本(またはそれ以下)のクラブのうち,パター以外で最も長いクラブの長さ。

  ② (例えば,そのプレーヤーの持つドライバーの長さが,45インチであれば,クラブレングスは45インチとなる。)

  ③ クラブレングスは,各ホールのそのプレーヤーのティーイングエリアを定めるときや,規則に基づいて救済を受ける場合にそのプレーヤーの救済エリアのサイズを決定するときに使用する。

 

2 救済エリアの定義を検討します

 

 ⑴ もちろん,旧ゴルフ規則にも基点や救済エリアに類する規定はありました。即ち「特定の箇所にできるだけ近い所に球をドロップ(旧ゴルフ規則20-2b.)。」とか,「救済のニヤレストポイントから1クラブレングス以内で,・・・・その球をドロップ(旧ゴルフ規則25-1b.(ⅰ)(a))。」などと規定されておりました。

 

 ⑵ 新ゴルフ規則は,プレーヤーが救済エリアの大きさを計測するとき,何処を基点にするのか規則毎に明確にしました。例えば,規則14.6b, いわゆるストロークアンドディスタンスでは,「直前のストロークが行われた箇所。」とし,規則17.1d⑶ ラテラル救済(レッドペナルティエリアに対してのみ)では,「元の球がそのレッドペナルティエリアの縁を最後に横切ったと推定した地点。」と規定されています。以上の基点から計測する救済エリアのサイズを1クラブレングス,あるいは2クラブレングスと規定しています。

 

 ⑶ 旧ゴルフ規則は,ドロップする範囲と,ドロップした球が止まる範囲が別々に規定され異なっていたのです。すなわち,コース上のドロップ範囲に最初に落ちた箇所から2クラブレングス以上転がっていって止まった場合のみ再ドロップが必要であったのです(旧ゴルフ規則20-2.c.(ⅵ) )。

   新ゴルフ規則は,ドロップ個所の範囲と,ドロップした球が止まらなければならない範囲を完全に一致させました。それを規則本文では,「基点から計測する救済エリアのサイズ:」と表記しております。従って,ドロップした球が止まらなければならない範囲は,旧ゴルフ規則と比べると最大2クラブレングス近く狭くなったといえます。それ故,ドロップ方法もあまり球が転がらないよう,球は膝の高さからすることにしたのです(14.3b⑵ )。

   もう一つドロップ方法について大きな改正があります。旧ゴルフ規則は,ドロップした球がコース上に落ちる前や落ちた後で球が止まる前にいかなる人またはいかなるプレーヤーの携帯品に触れた場合,その球は罰なしに再ドロップしなければならない(旧規則20-2a )。とされていました。

   ゴルフ規則は,球が地面に落ちる前にそのプレーヤーの体や用具に触れない。と改正しました。落ちた後にプレーヤーの靴に触れてもそれは正しいドロップです(14.3b ⑵,14.3c ⑴)。

 

3 クラブレングスの定義を検討しましょう

 

 ⑴ クラブレングスの定義における要素の第1は,「ラウンド中にプレーヤーが持っている最も長いクラブの長さ」です。

   従って,甲プレーヤーは,最も長いクラブの長さが43インチであり,乙プレーヤーは,最も長いクラブの長さがが47インチであるなら,救済エリアのサイズも甲プレーヤーは43インチ,乙プレーヤーは47インチになるのです。

 

 ⑵ クラブレングスの定義における要素の第2は,「そのプレーヤーのティーイングエリアを定めるときや,そのプレーヤーの救済エリアのサイズを決定するときに使用する。」ものです。間違わないよう確認いたしますが,使用しなければならないのはそのプレーヤーの最も長いクラブの長さ(クラブレングス)であって,そのプレーヤーの最も長いクラブ(通常はドライバーでしょう)を道具として使用しなければならないとしているのではありません。

 

4 実は,最近先輩から救済エリアのサイズを決定するときに,必ずドライバーを使って計測しなければならないようだが,ドライバーをその都度取りに行くのは面倒だと伺ったのです。ゴルフ場のコーヒースタンドでも同じことを聞きました。そんな馬鹿な,と思ったのですが,持っている最も長いクラブで計測しなければならないと書いてあったというのです。私は,調べておきますと返事をしたのです。

  ありました。JGA会報103号から転載したという「特集1 新しいゴルフ規則について」という6頁のイラスト付きで27項目について解説しております。

第24項の全文を以下に引用します。

「規則に基づいてクラブレングスを計測する場合(例えば,救済のニヤレストポイントから1クラブレングス),プレーヤーが持っている最も長いクラブ(パターを除く)で計測しなければなりません。救済処置によって短いクラブで計測することはできません。」

  呆れかえるばかりです。前記救済エリアの定義もクラブレングスの定義も読まないで,想像を逞しくして解説したというほかありません。「最も長いクラブで計測しなければなりません。短いクラブで計測することはできません。」などとゴルフ規則の何処に書いてあるのか。この解説者は,救済エリアとは,範囲を意味し,クラブレングスとは,長さを意味していることを全く理解していないのです。救済エリアを計測する道具のことしか頭にないのです。救済エリアの大きさ,クラブレングスの長さを測る道具なら巻き尺が一番なのは明らかです。

 

5 基点から計測する救済エリアのサイズが1クラブレングスの場合について,ドロップする箇所は,基点からそのプレーヤー固有のクラブレングス以内ならどこでも良いのです。ですから,ウエッジ(仮に40インチとしましょう)で計測しても,そのプレーヤーの固有のクラブレングスが,43インチであるなら40インチの範囲内にドロップすれば正しい箇所にドロップをしたことになります。

  ところが,基点から40インチ以内にドロップしても,ぎりぎりの箇所にドロップした球が転がって,基点から45インチの所にまった場合に問題が生じるのです。新ゴルフ規則は,ドロップする範囲と,ドロップした球が止まらなければならない範囲を完全に一致させました。いずれも基点から計測する救済エリアのサイズ内でなければならないのです。

  従って,上記の場合,甲プレーヤーは,クラブレングスが43インチであるなら,救済エリアのサイズの外になりますから,再ドロップが必要になります。

  乙プレーヤーは,クラブレングスが47インチであるなら,救済エリアのサイズ内ですから,再ドロップはできません。

  以上のように救済エリアの範囲内に止まっているか否か判定する必要がある場合に,40インチのウエッジを持ち出したのでは,救済エリアのサイズ内か,その外側か判定できません。そのような場合,巻き尺を持ち出さなくても,そのプレーヤーが持っている最も長いクラブ(通常ドライバー)で計測することを暗に認めていると解釈できるだけです。つまり,ドライバーで測って良い,測らなければならないという明文は見当たりません。私が見落としているかもしれませんので,もしそのような規則を発見したら是非コメントをください。

 

6 JGA会報103号から転載したという「特集1 新しいゴルフ規則について」その第24項の解説を私なら次のようにします。

「規則に基づいて救済エリアのサイズを計測する場合,プレーヤーが持っている最も長いクラブ(パターを除く)の長さ(クラブレングス)が基準になります。クラブレングスの計測には,そのプレーヤーが持っている最も長いクラブを使用することが出来ます。」                             以上