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長いこと病床についていた、
父がついに他界した。
 
終わりは思っていたよりもあっけないものだった。
 
予想はしていたものの、
いざその瞬間が来ると、
何をしてよいのか判断できず、
しばらくはもう病床とは呼ばない布団の隅に座っていた。
 
ふと気づくとだいぶ時間が経っている…。
 
 
「そうだ!弟にまず連絡しなくては!!」
 
 
思い立ったのはよかったが、
電話は数ヶ月前から通じなくなっている。
財布には1000円弱。
ここ岡山から広島までは、
普通列車で行ったとしても3000円近く掛かる…。
新幹線なんてもっての他だ。
 
直線距離で約300km。
歩いては時間が掛かりすぎる…。
 
しかし、
早く弟に伝えなくては…。
 
気持ちばかり焦って、
居ても立ってもいられず、
夜の街を当てもなく徘徊した。
 
そんなことをしたからと言って、
そう簡単にお金が工面できるわけがない。
気持ちは焦るが、
体は昼夜にわたる介護で相当疲れていたようだ。
ついに限界が来て、
ファミリーレストランの駐車場に座り込んでしまった。
 
何気なく目に入る1台の自転車…。
 
「あれ!!? 鍵が付いている…?」
 
社会的に許されることではないという意識を抑えつけるのは、
それほど難しい作業ではなかった。
 
なるべく自然体を装い、
ゆっくりと自転車に近づく。
目の端に全神経を集中し、
回りに人気がないことを確認しながら、
スタンドを降ろした…。
 
 
 
ついにやってしまった…。
いままでの生活苦でも、
なんとか踏ん張っていた一線を越えてしまった…。
 

が、
もうやってしまった以上は、
悩む時間が無駄だ。
1秒でも早く弟に伝えるために、
自転車をこぎ出した。
 
 
夢中になってはしり続けた300km。
どれだけ速く自転車を走らせても、
すぐ後ろから付いて来る罪悪感を、
訃報を届ける使命に集中することで、
何度も振り切ろうとした。
 

体力的にはかなり前に限界を超えていたが、

気力で走りきり、
ついに弟の家にたどり着けた。

 
そしたらなんと!!!!!!!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
弟は転居してましたとさ。
 
そこには、
弟が転居したあとのアパートが、
弟が居たときそのままに、
ひっそりと建っていたのだった…。
 
あまりのショックにどうすることもできない。
正に精魂疲れ果てたまま、
遠くに見える赤色灯に向かって、
一歩ずつ進んでいった…。
 
 

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なんじゃこりゃ?

 
2,3日前の日経夕刊の記事より。
この男が広島県警に出頭したときには、
所持金10円だったそうな。
自転車1万円相当の窃盗容疑。
いちお断っておきますが、
9割の脚色がされてます。