Richard Barnes Mods! 8

 

 

 

 

この日は、雨模様のどんよりした日で、人通りも少なかった。

 

でも、そこの服を見た途端、ブッ飛んだ。信じられないくらいカラフルで。

こんなキャンディピンクのhip sters が男物だろうか!?って。もう、素晴らしくふらちだった。

hipsters》〈英〉ヒップスター◇股上の浅いズボンやパンツだが、通例ヒップスター・ジーンズを指す。

 

 

当時のメンズといえば、ジャケットにしても、トラウザーズにしても、そのほかのものにしても、

どこの店でも同じようなものしかなかった。色も、黒、暗めの紺、漆黒ってかんじで。

だから、もしちょっとでも目立ちたいと思ったら、黒は黒でも、小さなグレイの不揃いのドットのあるもので充分険っていえた。でも、His Clothes には、風変りで 大胆な色のものだけじゃなくて、いろいろなスタイルや素材のものがどっさりあった。こういう総てのものが小さなスペースに詰め込まれていて、壁のスピーカーからはイ力した音が流れてくる。うるさく付きまとう店員のアドバイスとやらもなしで、気に入ったもの を手にとってみたり試着したりできる。スタッフはみんな、若くて親切で礼儀正しい。 そうオーナーのJohn Stephen 自身のように。彼は誰のことも"Sir"と呼んでいたし、 行き届いた心配りをしていた。 

 

 

 

Carnaby Street には工キサイティングな雰囲気があふれていた。その頃はまだ、それほど知られていなかったけど、うまくいってたし、常連も増えていった。1番混むのは土曜日だったと思う。こういう天気の悪いウィークデイは、やっぱりガラガラだった。僕たち以外の客といえば、いい服を着た背の高い黒人たったひとり。彼はカラーデニムの ヒップスタートラウザーズを買った。こいつは明らかにゲイだった。ゲイっていうのはああいう生地のものを買うもんだな、と思った。その手のものをはく勇気があるのは彼らしかいなかった。

とはいえ、60年代初頭には世論も変ってきて、MODS は Carnabv Street のちょっと軟調でカラフルな服を着るようになった。John Stephenは明快に語った。

 

彼の考えでは、男だって「好きならどんなものだって着ることができて当然ですよ」 ということだ。

 

Carnaby Street から角を曲ってNewburgh Street沿いにVince があった。ここでは54年以来、ゲイやショービジネス業界人向けにケバケバしい服が売られていた。 Vince は、Carnaby Street の草分だった。 John Stephen はしばらくの間、 アシスタントとしてそこで働いたこともあった。その後、たった300ポンドの資金で、 「Beak Streetに自分の店を開いた。話しは進むけど・・・、それから火事にあってス トックを全部ダメにしてしまった。でも何とかやり直して、彼は Carnaby Street の一角 に再び店を持った。なんといってもそこは、家賃が週たったの10ポンドだったから。

 

ブティックのハシリができはじめたところだった。大抵の店は、店員に「ウィンドウに出てたブルーのシャツを見せてもらえないかな、141/2のやつね」なんて言わなくちゃな らない。ところが、Carnaby Streetのブティックでは、服やアクセサリーがドアに引っ掛けられていたり、そこらじゅうに詰め込まれていたりしていた。ショッピングはずっと簡単になったし、 第一、 楽しくなった。