29歳の時に私の大切な友人がいなくなった。


こう書いて、未だにいなくなったという言い方しかできないのだと気づく。

ほかの書き方をするのは、私の中の何かが切実に痛みを発してしまうからできない。


それに世界の認識なんて放っておいて、とりあえず彼は私の前からはいなくなってしまった。



あの時、私は違う世界に来てしまったのだと思った。

今まで私がいた世界とは別の世界に。








彼への喪失感について、私が話したいのは彼だった。





私たちはいつも失ったものについて、共感したり、慰め合ったりしていた。


いつもそう。





私たちが話すことといえば、失ったものについてばかりだったのだ。



そして彼を失うことについて、考えも及ばなかった。




その頃の幸せな私に戻りたい。


彼を失うことを知らない私に。


でも本当は知っているからこそ、決して考えたくなかっただけの私に。


私は一人じゃないって思ってた私に。





私が彼に本当に話したいことは、好きな色と好きな花だった。


いつか言えるかと思っていたから、言わなかったけれど、本当に話したいことはそれだった。



私は失ったものを分かち合える人を失ってしまったから、もう失ったことを失うことができなくなった。



それがわかった。