分野: 医学

評価: 4

 

2012年に明仁天皇の冠動脈バイパス手術を執刀した著者が、心臓外科医としての矜持を語る。

 

著者は、これまでに7,000例以上もの心臓手術を行い大半を成功させてきた。天皇陛下の手術においては、難しい方法をとりながらも仲間の医師たちと共に最高の結果を出した。患者に寄り添い不要な手術は行わない。手術の成功は、直後ではなく以前と同じ生活ができるようになってから、あるいは死ぬ時にこそ分かるとして、長い目で見て最良の手法をとる。本書では、医師になるまでとその後、天皇陛下の手術や大学病院着任後の奮闘まで、通し続けた信念を記している。

 

人の命を預かるという重責にも関わらず気負いがなく、むしろ攻めの姿勢を感じる。患者を亡くした手術についても率直に言及している点に誠実さが見える。意外に思ったのは、手術が終わった後、あまり疲れないという部分だ。理由は、頭を使わないからだという。脊髄反射で仕事をしており、考えながらではスピードも落ちよい手術ができない。つまり、逆にそのレベルに到達するよう技術を磨く必要があるということだ。外科医に抱くイメージが少し変わった。

 

医師に限らず、自分の仕事にプライドを持ち研鑽を怠らないことがよい成果を生み出すことを教えられた。

 

 

評価
  5:大変面白い、名作
  4:かなり面白い
  3:普通に面白い
  2:あまり面白くない
  1:全然面白くない