本日の懐かしのホラーは、「怒霊界エニグマ」(1987)。
ルチオ・フルチ監督による、虐められた少女の復讐を描いたサイキック・ホラーです。
大学で体育教師をしているフレッドにデートへ誘われ、幸せの絶頂になっているケティでしたが、このデートは大学のイジメグループが仕組んだ「ドッキリ」でした。
教師を巻き込んでのイタズラである事を悟ったケティは、車から降り、現場から離れようとします。
しかし、イジメグループは車で彼女を追いまわし続けます。
そして、ケティが公道へ出た瞬間、運悪く通りがかった車にぶつかり、昏睡状態の重症を負ってしまいます。生死の境を彷徨うケティは、自分をこんな目に遭わせた連中に復讐を誓うのでした。
大学に、エバと言う美しい転入生がやって来ます。
エバはケティに憑依されており、彼女を憑代として復讐を果たす事にしたのです。
まず手始めに、自分を騙した張本人である体育教師のフレッドが標的にされます。エバと密会する予定のフレッドでしたが、鏡から自分と瓜2つの人物が出て来て、絞殺されてしまいます。現場には遺体が残されているだけであった為、急死扱いにされます。
フレッドの突然の訃報に動揺する女学生達。
病院の集中治療室でケティの主治医をしているロバートに好意をいただいたケティは、エバを利用して彼に接近。恋仲になります。
生まれて初めて相思相愛になった相手が現れたのです。エバを介して、今まで味わった事のない幸せを味わうのでした。
そんな間にも復讐は続き、イジメグループのオニールとグレースが、それぞれ不可解な最期を遂げる事となります。グレースが死亡した現場にエバも居た為、学園側も看過する事ができず、エバの両親に連絡をします。再び神経衰弱が再発したと思った両親は直ぐにエバを迎えに来て、そのまま療養施設へ強制入院させるのでした。
憑代となったエバが居なくなり、復讐劇はとん挫したかに思われましたが、そうは問屋が卸しません。
エバが居なくなったタイミングにロバートと恋仲になったルームメイトのジェニー、イジメグループのリーダー格・キムと恋人が残っています。
継続は不可能と思われた復讐劇が再び動き出すのでした・・・。
グロを売りにしているフルチ監督にしては珍しくグロを全面に出さず、1人の女性の復習譚に焦点を充てた意欲作です。
ビデオソフト完全カタログで、ケティのドアップパッケージがキョーレツだった本作ですが、中々置いているビデオショップが無く、数年間はビデオカタログに掲載されているケティのドアップを眺める日々が続いていました。(;'∀')
実際に本編を観る事が出来たのは、大学生になってからです。
県外の大学に通っていた為、通学途中のレンタルビデオ店でようやく発見しました。レンタル出来た時の嬉しさは、今でも忘れられません。
一番の見所は、イジメグループで最初に犠牲となる女学生がカタツムリに埋もれて窒息死する場面でしょうか。(マグザムさんから発売されたDVDのパッケージが、この女学生のドアップでしたね。)
本物のカタツムリを使用している様なので、観ていて本当に気持ち悪かったですし、殆ど裸の状態の体に無数のカタツムリが這っているのを耐えなければならない女優さんも大変だったと思います。
カタツムリの件は、ジョジョの奇妙な冒険の6部を連想してしまいました。
荒木先生、もしかしたら本作を観て作品に取り入れた可能性がありますね。
全く縁も所縁もないエバがケティに選ばれた理由とか、美術館の石像が動き出すシークエンスとか理屈では解明できない部分が多々ありますが、そこはフルチ作品ですからね。
追及するだけ野暮ってものです。映画の不可解な出来事を楽しんだ者勝ち!って事にしておきましょう。
キングレコードさんからリリースされているBlu-rayに珍しく映像特典が収録されており、そこでは「キャリー」の要素が取り入れられている様な事が言われていました。(冒頭画像で一緒に写っている輸入盤Blu-rayの映像特典は、全く別の内容でした。)
言われてみれば、似ている部分もありますが、似た様な設定・シチュエーションになる事はままあるので、そこは突っ込まない方が良いのかな・・なんて思いました。ただ、キャリーとケティの共通点があるとしたら、2人とも、ごく普通の学生で、年頃の女の子が経験する幸せを味わいたかっただけだと思うのです。それを奪われてしまったから、怒っている。その心象は、察するに余りあります。
幾つになっても、イジメはやってはいけませんね。はい。
本作の主人公エバを演じているララ・ナツィンスキーは、ランベルト・バーヴァ監督作「暗闇の殺意」にも出演しています。メチャクチャ自分好みの美人さんであります。
エバのルームメイト・ジェニー役を演じているウリ・ラインターラーは、後に「サンゲリア2」でも起用されています。ルームメイトの恋人を奪っちゃう図々しさを持ち合わせてはいますが、作品では唯一の「良心」とも言えるキャラクターで、もう1人のヒロインと言っても過言ではありません。
イジメグループのリーダー・キム役の女優さんがイマイチ可愛くなかったのが残念でした。
このテのキャラクターは、大抵学園の女王様的ポジションにいて、ずば抜けて可愛い(もしくは美人)である事が多いからです。一番酷い事をした首謀者ですから、それなりの報いは受けます。
女学生達の部屋にシルベスター・スタローン(「ロッキー3」)やトム・クルーズ(「トップガン」)、デビッド・ボウイのポスターが貼られているのは、当時の流行を反映していてポイント高いですね。
80年代映画好きとしては、ついニンマリしてしまいました。
サントラ盤は、BEAT RECORDSから過去リリースされていました。
オープニングとエンディングに流れた、本編の内容には似つかわしくない爽やかな英語の主題歌も一応収録されています。
同アルバムには、「キャロルは真夜中に殺される」「SFコンクエスト/魔界の制圧」の音源も同時収録されていました。
学生当時、エニグマの音源目当てで購入しましたが、後に大好きになる「キャロルは真夜中に殺される」も収録されていたので、個人的に満足度の高い1枚です。
本作のBlu-rayは、キンレコさんから好評発売中です。
フルチ監督が短い出番ながらもカメオ出演していますので、未見の方は、その辺りにも注目下さい。
