《あらすじ》大量に人を殺せる兵器を持った時、人は「それ」をどう扱うのかーーー
12月某日。
かつてオリンピック選手候補だった孤高の天才ランナー・葉子の元に、ある日不審な贈り物が届く。
同時期、他の人間に届いた葉子の受け取ったものと同様の「贈り物」が辻堂駅爆発を起こした。
それは、大量殺人が可能な爆弾の入ったアタッシュケースだったのだ。
どうやら爆弾は不特定多数の人間に送られているらしい。
クリスマスシーズンで浮き足立つ世間をよそに、贈られた「クリスマスプレゼント」が大惨事を巻き起こす。
そして、葉子の元に犯人からの「挑戦状」が届く。「これ以上大惨事を起こしたくなければ、私とゲームしないか。」
不穏な「クリスマスプレゼント」の贈り主は一体誰なのか、そしてその目的とは。
葉子は犯人を止めることができるのかーーー
職場の先輩にオススメだよーと言われて読んだ作品。
角川ホラー文庫ですが、幽霊的な怖さではなく人間心理の怖さですね。
爆弾の受取人たちは、皆日常にほんの少しの不満を持った「普通の」人達でした。
ごく普通の人達が「自由」に人を殺せる力を持った時、こんなにもあっさりと人の不幸を願ってしまうものなのか、と怖くなります。
クリスマスシーズンという設定が、また心憎いですね。変な話、幸せな人とそうでもない人の差がハッキリとする時期ですから。
当方、横浜在住のため作品の舞台となった場所が何となく分かってしまい、フィクションと分かっていても「あの場所で!?」と読みながらいちいち思ってしまいました。
人がたくさん亡くなる描写は読んでいて背筋がゾクゾクします。
主人公の葉子の意思の強さ、潔さ、ヒーローを気取らず真っ直ぐに自分の正義を貫く姿がとてもかっこよかったです。
最後の世間の「クリスマスに対する印象・象徴の変化」が後味悪くて胸に刺さります。