とある日。
その日は仕事で出かけなければならなかった。
ところが結構な雪で車では行けない。
慣れないバスで行った。
そのバスは女子短大を通るので朝のバスは20歳前後の女子大生でほぼ満員だった。
スクールバスか!と思った。
私が乗ったときはほぼ満員でぎゅうぎゅうだった。
すると私の前に座っていた女の子たちがひそひそと話を始めた。
次に私に向かって
「あの~よかったらどうぞ」
と席を譲ってくれたのだ。
確かにその子が座っていたのは老人専用席だったが、満員でしかもほぼ女子大生しかいない車内、別に座っても誰も文句はいうまい。
ただ、50過ぎのおばちゃんはその中においては明らかに「老人」だったのだ。(笑)
自分たちより歳とっている人を立たせているという罪悪感だったのかもしれない。
そして、席を譲るには私はまだ少し若そうな人で
「失礼な!そんな年寄りじゃないわよ!」
と言われるかもしない恐怖(?)もあったと思う。(笑)
でも、私は嬉しかった。
もちろん
「ああ、大丈夫。気にしないで。ありがとうね。」
と笑顔でお断りした。
いい子たちだな~と思った。
若くてかわいらしい子たちだった。
さて、仕事を終え帰りに地下鉄の中、空いていた席に座った。
すると次の駅で杖をついたおばあちゃんとそれより少し若いおばあちゃん二人が乗り込んできた。
杖のおばあちゃんは一人でも歩けるが明らかにヨタヨタして心もとない歩き方だった。
席は空いていなかったが、一番端にいた女の人が杖のおばあちゃんに席を譲った。
私は少し離れていたが、腰をあげようとしたら斜め向かいの席があいてそこに少し若いおばあちゃんは座った。
良かった、良かった。
でも、杖のおばあちゃんの真向かいに座っている三人の男たちよ!
スマホをいじっている場合ではないだろう!
明らかに二十代、三十代だろう!
おばばたちが乗り込んできたとき一番近くにいたのはあななたち!
席譲らんかいっ!
そういう私も結果的に席を譲らなかったのでせめてと思って、杖のヨタヨタおばあちゃん私と同じ駅で降りたので、タクシー乗り場まで介添えを申し出た。
途中、
「タクシー代にお金を崩すから」
というのでコンビニでお買い物。
エレベーターガールも務め無事タクシーに乗り込んだところをお見送りして帰路についた。
やれやれ。
きっと私の母も誰かの世話になっているだろう。
だから私もその分誰かにお世話しようと思う。
「親孝行は自分の親じゃなくて他の誰かの親にするのも親孝行。」
と職場の先輩が言っていた。
そういえば息子は電車内ではガラガラのときしか座らない。
「だって、年寄りとかに席譲るの気恥ずかしい。」
だから最初から座らないんだそうだ。
年頃の男の子はそう思うのかもしれない。
(高校生くらいのとき。)