今回は日本の企業結合会計基準、事業分離会計基準、同適用指針を読んでみたので、感想を以下に記載します。

なお最終改正は2019年1月16日。

 

  度重なる会計基準、適用指針の改正

宝石ブルー改正の理由は、国際的な会計基準とのコンバージェンスを図るためである(つまりIFRSとの整合を図る観点)

  • 2008年改正では「持分プーリング法」が廃止となっている。2008年改正以降も「持分の結合」として考え方は残っている→例えば共同支配企業の形成は「持分の結合」の処理となる
  • 2013年改正では、少数株主持分の名称が「非支配株主持分」へ変更、取得関連費用は取得原価に含めるのではなく発生時費用処理、暫定的な会計処理の確定に関する処理が改正された。

宝石ブルーIFRSは原則主義、日本基準は細則主義と言われるが、企業結合・事業分離会計適用指針はそれが顕著に表れていて、ルールが事細かに書かれている。

適用指針なんかは460項もあるのでカオスだった(←途中で読むの折れた)

おすすめの読み方は、適用指針に仕訳付きの設例が37個あるので、それを理解したあとに、会計基準や適用指針の中身に入っていくと、結果、最短で理解できるのではないかと思った。

 

宝石ブルー基準を読むうえで、今は個別上の話をしているのか、連結上の話をしているのかを常に意識することが重要となる(それを考えていないと混乱する)

 

宝石ブルー基準や適用指針に書かれている内容は基本なので、これは知ってて当たり前前提で、じゃあ実際実務で、どのような論点が登場するのか、を考えられると理想(言うは易し…)

 

  企業結合について

宝石ブルーまずはなんと言っても下記を押さえる必要がある。

「A社がa事業をB社に譲渡し、B社が取得対価として株式購入」

→B社は企業結合会計基準に従い会計処理

→A社は事業分離会計基準に従い会計処理

 

宝石ブルー企業結合の基本的な考え方

→企業結合には「取得」と「持分の結合」という異なる経済的実体を有するものが存在

→「取得」は実質的にはいずれかの企業による新規の投資で同じであることからパーチェス法(取得原価は企業結合日における時価で算定する方法)で処理する

→「持分の結合」はいずれの企業の持分も継続が断たれておらず、いずれの企業も支配を獲得していないため、ある種の非貨幣財同士の交換の会計処理と同様、対応する資産負債を帳簿価額で引き継ぐ処理となる。

 

宝石ブルー共同支配企業の形成

→共同支配企業の形成は「持分の結合」である

→連結上、持分法を適用する。

→適用指針の設例の最後のほうに、フローチャートがあるので、実務で参考になる可能性大である。

 

  事業分離について

宝石ブルー事業分離の基本的な考え方

→分離元企業(例えばA社がa事業をB社に譲渡する場合のA社のこと)の会計処理は2パターンある

移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合:移転損益を認識するとともに、改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものと考える

移転した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合:移転損益を認識しない。

 

  IFRSとのGAAP差

宝石ブルー今までも国際的な会計基準とのコンバージェンスを図るために改正が何度も入っているので、GAAP差はかなり絞られてきているのでは、という印象。

下記、自分が思うGAAP差を重要だと思う順に記載してみます。

  1. のれんを償却する vs 償却しない
  2. のれんの範囲(全部のれん方式、購入のれん方式)
  3. 条件付対価
  4. 特定勘定(IFRSでは現在の義務でなければ負債を認識できない)
  5. 偶発負債

宝石ブルー疑問点

IFRSでは企業結合がIFRS3で規定されているけど、日本基準でいうところの事業分離会計基準は、IFRSだと記載されていないんじゃないかな?どうなんだろう?

 

ではまたふとん1ふとん2

本日は企業結合(IFRS第3号)について。

IFRS第3号PartAの原文を一通り読んだ。

PartB,Cは興味あるところだけさらっと確認した。

 

では早速仕訳から考えてみよう。

 

(設例1)

・A社はB社の株式を100%取得し、B社株主に対し対価として現金80を支払った。

・これまでにA社、B社との間に資本関係はない。

・B社の資産、負債の帳簿価額は、それぞれ50、10

・B社の識別可能な資産、負債の公正価値は、それぞれ70、負債20

虫めがねA社の連結上の仕訳

借方 貸方
識別可能な資産 70 引受負債 20
のれん 30 現金 80

 

(設例2)

・設例1の前提に加え、B社には特有の技術10がある(無形資産の識別可能要件を満たす)。

 なお、当該技術は当企業結合前においてB社資産に計上されていない。

虫めがねA社の連結上の仕訳

借方 貸方
識別可能な資産 70 引受負債 20
技術 10 現金 80
のれん 20 - -

 

(設例3)

・設例1,2の前提に加え、A社はB社買収のため財務DDを実施し、アドバイザリー報酬として現金30を支払った。

虫めがねA社の連結上の仕訳

借方 貸方
識別可能な資産 70 引受負債 20
技術 10 現金 80
のれん 20 - -

 

取得関連費用  30 現金   30

 

(設例4)

・設例1,2,3の前提に加え、1年後にB社が5の利益を達成した場合、A社は追加で10を支払う(=条件付対価、またはアーンアウトという)。

虫めがねA社の連結上の仕訳

借方 貸方
識別可能な資産 70 引受負債 20
技術 10 現金 80
のれん 10 未払金 10

 

取得関連費用  30 現金   30

 

ここからは解説に移る。

(設例1)

・日本基準でも同様の仕訳となる。
・IFRS3.4より、企業は全ての企業結合を、取得法にて会計処理しなければならない。
すなわち、取得した資産・負債を取得日の公正価値で測定しなければならない(IFRS3.18)。
・IFRS3.32より移転された対価(=支払対価)が、取得した資産・負債の正味の金額を超過する場合、「のれん」を認識しなければならない。
・「のれん」は日本基準上は毎期償却されなければならないが、IFRSでは償却が禁止されており、毎期減損テストが要求される。当該GAAP差は、数あるGAAP差の中でも1,2位を争うGAAP差である。
 
(設例2)
・無形資産の識別可能要件がIFRSと日本基準で異なる。両基準で識別可能な無形資産と判定されれば、当仕訳は両基準で同じ。
・IFRS3.B31より分離可能性規準、契約法律規準のうち1つを満たす無形資産があれば、認識しなければならない。
 
(設例3)
・日本基準でも同様の仕訳となる。
・IFRS3.53より企業結合を実行するために取得企業に発生するコストは、サービスが提供された期間の費用として会計処理しなければならない。
 
(設例4)
・IFRSと日本基準で仕訳が異なる。
・IFRS3.39より取得企業は、条件付対価の取得日公正価値を、移転された対価の一部として認識しなければならない、とされている。
なお、仮に1年後にB社が5の利益を達成しなかった場合、公正価値の変動を純損益に認識しなければならない。
借方 貸方
未払金 10 収益 10
・日本基準の場合、条件付対価は企業結合取得日において何ら会計処理しない。支払いが確定したタイミングで認識し、のれんを調整する会計処理となる。
 
以上、仕訳で考えてみた。
 
その他、特に論点になりそうな項目は下記のとおり
  • 「事業」にあたるか否かの判断(「事業」でないならIFRS3企業結合の会計処理ではなくなるため)
  • 識別可能な「無形資産」か否かの判断
  • 取得企業の決定(必ず1社を決定する必要がある)
 
その他、印象に残った点
  • IFRSの企業結合の注記の量がハンパない(のれんの期首期末の調整表とか)
  • 企業結合ごとに全部のれんとするか、購入のれんとするか選択適用できる
  • 企業結合の会計処理は、取得法のみが要求されており、プーリング法及びフレッシュ・スタート法は認められない。その理由として、同じ事実と状況の組み合わせに対して異なる会計処理方法を用いることにより、生成される情報の比較可能性が低下することになり、経済的な意思決定を行るのに有用でなくなってしまう、からである。
 
 
ではまたふとん1ふとん2
 
 

前回、ISSBのIFRS  S1号、S2号を題材にしたが、下記赤字部分がよくイメージ出来なかった。

産業横断的指標カテゴリーに関連する情報の開示

  1. スコープ1、2、3の温室効果ガス(GHG)排出(スコープ2はロケーション基準で開示)
  2. 移行リスク
  3. 物理的リスク
  4. 機会
  5. 資本投下
  6. 内部炭素価格
  7. 報酬

由来を調べてみたら、なんとこれらも TCFDが参考にされていた(というか、ほぼ同じ)。

TCFD強し。比較表を作ってみた。

IFRS S1,S2 TCFD
スコープ1、2、3温室効果ガス(GHG)排出 GHG排出量
移行リスク 移行リスク
物理的リスク 物理的リスク
機械 気候変動の機会
資本投下 資本の配分
内部炭素価格 インターナル・カーボンプライス
報酬 報酬

*IFRS  S1,S2:産業横断的指標カテゴリーに関連する情報の開示

*TCFD    :産業横断的気候変動指標カテゴリ(7つの指標カテゴリ)

 

ね?ほぼ同じでしょ?(笑)

でもでも、やはりこれら7つの指標のイメージがしにくいので、それぞれの具体例を調べてみました。

 

1.GHG排出量

  これはイメージしやすい。温室効果ガス排出量、すなわちスコープ1、2、3の絶対値や、排出強度(原単位)のこと。原単位は要するにGHG排出量の絶対値と売上高等の比率のことと理解した。

2.移行リスク(更に4区分) 

*リスクに晒されている資産や生産量又は販売量を開示

  ・政策・法規制リスク…排出規制強化、開示義務拡大

  ・技術リスク    …既存製品の低炭素技術入れ替え

  ・市場リスク    …原材料コスト上昇、消費者行動の変化

  ・評判リスク    …業種への避難

3.物理的リスク(更に2区分) 

*リスクに晒されている資産や生産量又は販売量を開示

  ・急性リスク … サイクロン、洪水のような異常気象

  ・慢性リスク … 平均気温の上昇、気象パターンの変化、海面上昇

4.気候変動の機会

  低炭素技術(例:EV車)に係る販売台数、収入金額の割合

5.資本の配分

  低炭素製品・サービスへの設備投資額や研究開発投資額の割合

6.インターナル・カーボンプライス

  企業が内部的に使用したGHG排出量1トン当たりの価格

7.報酬

  役員報酬がGHG排出の達成度合いに影響され増減する仕組み

 

ということで、多少はイメージできるようになった。

今度どこかでTCFDを題材に記事書こうかな。

あと、パリ協定もよく理解していないから今度題材にしよう。

 

それではまた。ふとん1