最近、「グローバル・ミニマム課税制度」や「BEPS」という言葉をよく聞くようになった。
インターネットで調べて見たが、具体例を記載している記事があまりなく、全然イメージが湧かず。
・2024年4月1日以降の開始事業年度の法人税から適用となる。
・対象企業は多国籍企業のうち、総収入金額が約1,000億円以上の会社となる。
誤解を恐れずに具体例を1つ挙げたいと思う。
【ケース1】A社が自国で納付(グローバル・ミニマム課税制度なし)
A社は、日本国内にて研究開発活動の結果、特許権を取得することに成功した。
当該特許権によりa製品を製造・販売を開始し、売上高12億円、売上原価2億円、利益10億円の成績をあげ、法人税率30%の3億円を国に納付した。
【ケース2】A社が関連会社B社にライセンス供与(グローバル・ミニマム課税制度なし)
A社は、研究開発活動の結果、特許権を取得することに成功した。
法人税率5%のX国を拠点とする関連会社B社に対し、不当に低い価格(100万円)でライセンス供与し、B社ではライセンスを取得した結果、b製品を製造・販売を開始し、売上高12億円、売上原価2億円、利益10億円の成績をあげ、法人税率5%の0.5億円を日本に納付した。
【ケース3】A社が関連会社B社にライセンス供与(グローバル・ミニマム課税制度あり)
A社(親会社)は、研究開発活動の結果、特許権を取得することに成功した。
法人税率5%のX国を拠点とする関連会社B社に対し、低い価格(100万円)でライセンスし、B社ではライセンスを取得した結果、b製品を製造・販売を開始し、売上高12億円、売上原価2億円、利益10億円の成績をあげ、法人税率5%の5億円をX国に納付した。
X国の法人税率5%は、グローバル・ミニマム課税制度で定められた最低法人税率15%に満たないため、差分の10%(1億円)は、親会社であるA社が日本に納付した。
上記3つのケースをまとめるとこうだ。
【ケース1】A社グループは、法人税3億円を納付し、日本は3億円の税収を得る
【ケース2】A社グループは、法人税0.5億円を納付し、X国は0.5億円の税収を得る
【ケース3】A社グループは、法人税1.5億円を納付し、X国は0.5億円の税収を得る、日本は1.0億円の税収を得る
つまり、グローバル・ミニマム課税が導入されることで、【ケース2】と【ケース3】の10%差に対し新たに課税され、親会社が追加で1億円を納付しなければならなくなる。
なお、当該10%差に対する課税のことを「トップアップ課税」と呼ぶ。
グローバル・ミニマム課税制度の概要
グローバル・ミニマム課税制度は大きく3つあり、その中でも特に中心となるのが「所得合算ルール」(IIR:Income Inclusion Rule)であり、今回題材にした追加の1億円納付(親会社が納付)の部分となる。
詳細は割愛するが、グローバル・ミニマム課税制度の3つとは下記のことである。
- 「所得合算ルール」(IIR:Income Inclusion Rule)
- 「軽課税所得ルール」(UTPR:Undertaxed Profits Rule)
- 「国内ミニマム課税」(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)
なお、グローバル・ミニマム課税制度の申告期限は1年3か月後とのことで、通常の法人税の申告期限が3か月なので、通常よりも1年猶予がある。
BEPSとは何か、BEPSとグローバル・ミニマム課税制度の関係性
「BEPS」とは「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字を取ったものであり、日本語では「税源浸食と利益移転」と訳される。日本語では(ベップス)と呼ばれる。
BEPSの歴史
2015年:経済協力開発機構(OECD)とG20諸国が協力してBEPS行動計画(全てで15)に関する最終報告書が公表された。多国籍企業による租税回避は、国際的な問題である。多国籍企業が本来経済活動を行っている国から意図的に利益を移転し、本来納付されるべき税金の源泉が侵食されてしまう。
2021年:経済協力開発機構(OECD)は、BEPS包摂的枠組メンバー国のうち約130カ国・地域が、国際課税ルールを見直しを行い、多国籍企業が事業を行う場所において公平な税を負担することを確保するための新たな二つの柱について合意し、公表した。
- Pillar 1(第1の柱):新たな課税権と課税所得の配分
- Pillar 2(第2の柱):グローバル課税
つまりBEPSプロジェクトの一環のうち、第2の柱として「グローバル・ミニマム課税制度」があるということになる。
各国の法人税の実効税率
ちなみに法人税の実行税率が15%を下回っている国が気になったので調べて見ました(OECD諸国に限る、2022年)。
9.0%:ハンガリー
10.0:チリ
12.5%:アイルランド
(参考)25.8:アメリカ
(参考)29.7%:日本
(参考)35.0%:コロンビア
以上、なかなか手強そうな内容であった。
当記事ではかなり嚙み砕いているため、適切な理解のためには、適切な文書をご参照いただきたい。
ではまた